イラン人アーティスト、マルジャン・サトラピの同名の自伝的漫画『ペルセポリス』(2000-2003)を原作にした長編アニメ。
公開年の2007年にはカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞し、翌年のアカデミー賞では外国語映画賞にフランス代表作品として出品され、また長編アニメ映画賞にノミネートされました。
フランス、また世界中で高く評価された『ペルセポリス』(2007)、その作品の魅力を解説していきます。
目次
『ペルセポリス』(2007)の作品情報とキャスト
作品情報
原題:Persepolis
製作年:2007年
製作国:フランス
上映時間:95分
ジャンル:アニメ、ドラマ
監督とキャスト
監督:マルジャン・サトラピ
代表作:『チキンとプラム 〜あるバイオリン弾き、最後の夢〜 』(2011)『ハッピーボイス・キラー』(2014)
監督: ヴァンサン・パロノー
代表作:『チキンとプラム 〜あるバイオリン弾き、最後の夢〜 』(2011)
出演者:キアラ・マストロヤンニ(マルジ)
代表作:『私の好きな季節』(1993)『プレタポルテ 』(1994)
出演者:カトリーヌ・ドヌーヴ(マルジの母)
代表作:『シェルブールの雨傘』(1963)『昼顔』(1967)
『ペルセポリス』(2007)のあらすじ

マルジの少女時代 ©IMDb
1978年テヘラン。
豊かで進歩的な家に生まれた9歳のマルジは伸び伸びと暮らしていた。
しかし同年に勃発したイラン革命により、イスラム共和国が樹立。
イスラム原理主義による新政権は社会のイスラム化を押し進め、風紀を厳しく取り締まるようになる。
マルクス主義を掲げ、革命に参加した人々の多くは新政府によって迫害され始める。
その中には敬愛していた伯父のアヌーシュもいた。
傷心したマルジは学校でも社会でも次々に問題行動を起こし、娘の将来を危惧したマルジの両親はマルジをウィーンに留学させる。
ウィーンの生活は刺激的だったが、マルジはそこで異文化とアイデンティティーの問題に苦しむこととなる…。
【ネタバレあり】『ペルセポリス』(2007)の原作・元ネタを解説!

マルジャン・サトラピ ©IMDb
原作・元ネタは自伝的漫画
映画『ペルセポリス』(2007)はマルジャン・サトラピによる同名の自伝的漫画を基にしています。
漫画は2000年から2003年にかけて、フランスで4巻にわたり出版されました。
第2巻は2002年のアングレーム国際漫画祭で最優秀脚本賞を受賞しています。
2003-2004年にはアメリカで翻訳版が2巻にわたり出版されました。
日本語版は2005年に出版されています。
漫画は乱暴な言葉使いや暴力も含んでおり、そのため2013年、アメリカ・シカゴ区はシカゴ内の学校から『ペルセポリス』の漫画を撤去するように要請しました。
この事件は教育者や、人権団体、サトラピによる抗議活動を引き起こし、作品は更に注目を浴びることとなります。
サトラピの後の作品『刺繍』(2003)も2003年アングレーム国際映画祭の最優秀作品賞にノミネートされ、2005年にはサトラピの『鶏のプラム煮』(2004)がこの名誉高き賞を受賞しました。
原作者がアニメの監督も務める
サトラピはフランスのアニメーター、ヴァンサン・パロノーと共同監督、共同脚本で2007年アニメ『ペルセポリス』(2007)を完成させました。
サトラピ自身が監督を務めたため、アニメは原作の漫画に忠実で、原作の大胆な構図やシンプルで愛らしいキャラクターがそのまま活かされています。
黒のベタ塗りの背景が多めの漫画に沿って、アニメも全体的に黒が効果的に使われた作風となりました。
サトラピはまた、アニメを白黒にすることで、肌の色、人種や民族の違いなどを縮小し、キャラクターをどこの国の人、というよりも人間として観られる効果を狙ったそうです。
他にもイランの歴史を遡る場面では影絵が使われたりと、斬新なアイデアと手作り感満載の温かみのある作品となりました。
豪華な声優陣
オリジナルのフランス語版、マルジの声はフランス、イタリアで活躍するキアラ・マストロヤンニ、マルジの母親の声はマストロヤンニの実の母であるフランスの名優、カトリーヌ・ドヌーヴが担当したことで話題になりました。
また英語版ではマルジの祖母をアメリカの名優、ジーナ・ローランズ。
さらにマルジの父をショーン・ペン、そして伯父のアヌーシュをミュージシャンのイギー・ポップが演じるなど、その豪華なキャストでも注目を浴びました。
波乱万丈のサトラピの半生を赤裸々に描く
『ペルセポリス』(2007)はサトラピのイランでの幼少期とヨーロッパでの少女時代を描いたものです。
サトラピはイラン北部の都市、ラシュトで生まれ、首都テヘランで育ちました。
両親とも政治活動を行っており、イラン最後の王朝に対する反対行動に関わっていました。
しかし、新しいイスラム共和国のイスラム原理主義に幻滅。
同じく政治活動をしていた親戚や友人たちも次々と新政権に逮捕され処刑されてしまいます。
敬愛する伯父のアヌーシュを処刑で失ったマルジャンは、新政権のもと禁じられていたヘビーメタルを聴いたり、アメカジのファッションに身を包んだり、さらには学校の先生にも口答えするなど、次々に問題行動を起こします。
そんな中1980年イラン・イラク戦争が勃発。
身の危険を案じたの両親は戦中の1983年、サトラピをウィーンのフランス学校に留学させます。
そこでオーストリア人の友達はできるのですが、居候していた修道院で修道女と喧嘩したり、人々の差別に苦しんだりして、居場所がなくなっていきます。
それに加え、初めてできた恋人が実はゲイだったと告白してきたり、次にできた恋人の浮気現場を目撃したりと、失意の底に落ちたサトラピは自暴自棄になり、3か月間路上生活を行います。
路上で肺炎にかかり死にかけたマルジは、とうとうイランの両親の元に戻ることに。
イランでは無気力状態が続き、うつ病を発症。
自殺未遂から一命を取り留めたサトラピは一念発起し、イランの大学でアートを学びます。
そこで出会った青年のレザと恋に落ち、結婚するも、数年後に離婚。
警察の目を逃れて行っていたパーティーも取り締まりを受け、逃げ切れなかった友人の一人を亡くしてしまいます。
イランの社会に希望を見いだせなくなったサトラピは家族をイランに残し、フランスへ旅立つのでした。
サトラピはその後フランスに残り、現在はスウェーデン人の夫と共にパリ在住、本の執筆や映画の製作など精力的に活躍しています。
【ネタバレあり】『ペルセポリス』(2007)とイスラムの関係性について

テヘランの様子 @IMDb
『ペルセポリス』(2007)は、イスラム教国であるイランを舞台にしたという点でも注目できます。
映画が製作されて以降、シリアの内戦、大量のシリア難民の流出、イスラム国の台頭などイスラム教国に関わる様々な出来事が起き、欧米諸国でイスラム教徒差別が高まりました。
また映画の舞台となったイランには核開発疑惑が絶えず、アメリカとの緊迫した関係が連日ニュースで伝えられています。
テロや戦争と結びつけて考えられ易いイスラム、日本人にとっては特に馴染みのない概念だと言えます。
そんな中、マルジがイスラム革命やその後に起きるイラン・イラク戦争に運命を翻弄されるものの、他の世界の少女と変わらず、同じような悩みを抱えながら青春を生きていく姿は、イスラムを身近なものに感じさせてくれます。
また、重いテーマを扱いながらも、ユーモアに溢れた作風はより多くの人々を魅了したと言えます。
【ネタバレあり】『ペルセポリス』(2007)の感想

悩み多きマルジ ©IMDb
故アッバス・キアロスタミ、ジャファール・パナヒ、アスガー・ファルハディなど優れたイラン人映画監督の作品は世界的に高く評価され、日本を含む様々な国で上映されています。
しかし、それでも統制の厳しいイランの実情を知る機会はなかなかありません。
特にイラン革命の描写や現政府を批判的に見た内容を目にすることは珍しいです。
そのなかで、少女の目線から革命を、イランの社会を描いたこの作品は画期的と言えます。
政府の検閲を逃れてアンダーグラウンドでパーティーを楽しむ人たち。
海賊版の洋楽テープを路上で売買する人たち。
義務付けられたヒジャブを密かに外す女性たち。
体制に迎合しない市井の人々の姿が、この作品では活き活きと描かれています。
また、サトラピの個人的な葛藤も作品には赤裸々と描かれています。
差別を逃れるために出身国を偽ったり、ヨーロッパ人を模倣したり、西欧社会に溶け込もうとする苦労。
そうした中で芽生える祖国と出生を誇りに思う心。
度重なる失恋、友人との仲たがい、うつ病、自傷行為。
隠したくなるようなるような過去の傷、コンプレックスなどもこの作品には描かれています。
サトラピの傷つきながら成長する姿に、同じような境遇にある人はもちろん、そうでなくても青春の痛みを経験した人ならだれでも共感できるでしょう。
『ペルセポリス』(2007)のまとめ

奮闘するマルジ @IMDb
イラン人少女の青春を率直にユーモラスに描いた『ペルセポリス』(2007)。
特に多文化、多様性の尊重が謳われる今日において、この作品を見て学ぶことや感じることは多いのではないでしょうか。
青春真っ只中の少年、少女に、また青春を懐かしく思う世代の大人にも是非見ていただきたい作品です。
『ペルセポリス』(2007)の他にもアニメ映画のおすすめ作品を一覧で紹介しています。
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