2008年に公開されたクリント・イーストウッド監督の集大成とも言える傑作が本作『グラン・トリノ』(2008)です。
『アメリカン・スナイパー』(2014)や『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)など数々のヒット作や名作を世に送り出してきたイーストウッド監督。
本作は、イーストウッド監督の過去作を未見の方でも十分に楽しめますが、過去作を観てから本作を見るとより味わいが増します。
実話ではないものの、本作『グラン・トリノ』(2008)はイーストウッド自身の過去が投影されているので、本作を鑑賞する前に、イーストウッドの代表作を鑑賞しておくと一層楽しめることでしょう。
それでは、『グラン・トリノ』(2008)の評価と感想をネタバレと感想を交えて紹介していきます。
目次
『グラン・トリノ』(2008)の作品情報とキャスト
作品情報
原題:Gran Torino
製作年:2008
製作国:アメリカ
上映時間:117分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督とキャスト
監督:クリント・イーストウッド
代表作:『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)『許されざる者』(1992)
出演:クリント・イーストウッド/吹替:滝田裕介(ウォルト・コワルスキー)
代表作:『ダーティハリー』(1971)『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』(1966)
出演:ビー・ヴァン
『グラン・トリノ』(2008)のあらすじ

コワルスキーとタオ(C)2009 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
朝鮮戦争で従軍した経験を持つコワルスキー は妻を亡くし、寂しく一人で暮らしていた。
コワルスキーの子供たちは成人し、子供を持ち自立した生活をしている。
コワルスキーは彼の孫たちがゲームや携帯に興じていることや、近所にアジア人が住んでいることが気にくわない。
彼の趣味といえば、自宅の芝生を手入れしたり、自らの愛車であるグラン・トリノを修理することだ。
そんな生活を送るなか、自宅付近でアジア人の少年がいじめらているのを発見する。
コワルスキーはショットガンを構え、加害者らを追い払う。
いじめらていた少年はモン族のタオという少年だった。
このことをきっかけにコワルスキーとタオのチグハグな交流が始まる……。
『グラン・トリノ』(2008)の3つの見どころ

タオの家族とコワルスキー(C)2009 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
見どころ①:イーストウッドの渋い演技
これまでの俳優としてキャリアの中で、様々な役柄を演じてきたクリント・イーストウッド。
本作では公開当時、俳優業は引退すると公言していました。
後にこのことは撤回するのですが、イーストウッドの円熟味ある芝居に注目です。
見どころ②:アメリカと移民の問題
本作のイーストウッドはポーランド系アメリカ人のコワルスキーを演じています。
コワルースキーが関わっていくモン族の少年との交流からアメリカという国がどのような経緯を辿ってきたかがわかります。
見どころ③:感動のラスト
保守的で堅物な典型的な白人男性であるコワルスキーがモン族の少年に対して、次第に心を開いていきます。
ラストでは毛嫌いしていたアジア人に対して、予想外の行動を起こします。
【ネタバレあり】『グラン・トリノ』(2008)の感想と考察

銃を構えるコワルスキー(C)2009 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
イーストウッドの渋さと魅力
本作でイーストウッドが演じるコワルスキーのキャラクター像は『ダーティハリー』(1971)のハリー・キャラハンが老人になった姿を描いているように思います。
象徴的なシーンとして『グラン・トリノ』(2008)の冒頭の妻の葬式で、コワルスキーが「ジーザス・クライスト」とつぶやくシーン。
これはダーティハリーで主人公のハリー・キャラハンが最初に発するセリフと全く同じで、主人公の性格を表す言葉です。
本作のコワルスキーもまたハリー・キャラハン同様に、無口で頑固な男というキャラクターとなっています。
これだけに留まらず、コワルスキーは過去にイーストウッドが演じてきたキャラクターたちからも性格の一部を引用。
何よりもイーストウッド自身の特徴もコワルスキーに投影されています。
イーストウッド自身の特徴を投影した部分として代表的なものを挙げると、コワルスキーは過去に朝鮮戦争に従軍しており、この設定はイーストウッド自身の経歴と同じです。
イースドウッドは朝鮮戦争へは参戦直前に事故にあい戦線へは赴かなかったのですが、自分が行っていたかもしれない戦争について一家言あります。
コワルスキーは、もしイーストウッドが朝鮮戦争に行っていたら。
そんな思いを込めたキャラクターになっており、この思いの中にはイーストウッドの贖罪が垣間見れます。
イーストウッドが演じてきたキャラクターたちは、西部のガンマンや刑事であり、悪を打ち倒すというイメージがあります。
このような過去に演じてきた役柄が持つ苦悩や葛藤の歴史もコワルスキーに投影させているのでしょう。
移民社会アメリカの歴史を映す
『グラン・トリノ』(2008)ではクリント・イーストウッドはポーランド系のアメリカ人を演じています。
ではなぜ、ポーランド系なのか。
それは本作のタイトルにもなっているグラン・トリノのようなアメリカ車を作っていたのが、コワルスキーのようなヨーロッパからの移民たちだったからです。
朝鮮戦争の後、アメリカは自動車の生産国として、大量に自動車が生産されていました。
そこで必要となったのが黒人奴隷の子孫やヨーロッパからの移民たちでした。
ヨーロッパからの移民たちは自分の国の言葉も読めないような人々でしたが、アメリカに来て自動車産業にはいれば、賃金を得ることはでき、言語も会社で習えます。
当時の自動車産業は右肩上がりで、雇用も定年までは安泰でした。
コワルスキーはアメリカの自動車産業が絶頂の古きよく時代を謳歌していたのです。
しかし、時は流れ、日本の安価な自動車がアメリカでも売れ始めると、アメリカの自動車産業は衰退していきます。
この影響を受け、コワルスキーの住む自動車生産のメッカでもあるデトロイトから工場は撤退し、多くの人が失業しました。
産業が無くなった都市からは人がどんどんと出ていき、逆に非白人の低所得層が流入していきます。
このような状況の中でもコワルスキーは土地を移ることはありません。
それはコワルスキーに、アメリカを作ったのは自分だという自負とアメリカを守るのは自分だという自負があるからです。
自分自身も移民の子孫であるのに、別の土地から入って来たアジア人の移民を認めないというのは甚だ傲慢だと思うかもしれません。
これは2019年現在のアメリカでも実際に起きていることです。
コワルスキーを通してイーストウッドは現在の分断されたアメリカの姿を予見していたのかもしれません。
しかし、そんなコワルースキーも最後にアジア系移民のタオに心を開きます。
号泣必至のラスト、モン族の少年との絆と継承を描く!
本作ではコワルスキーとモン族の少年のタオとの交流が描かれいています。
一見相入れないであろう白人の老人とアジア系の若者のやりとりが厳しくも微笑ましく描かれています。
そもそもモン族とは、ベトナム戦争時にアメリカが軍事的に利用したラオスの山岳民族です。
では彼らがなぜアメリカにいるのかといえば、ベトナム戦争でアメリカが撤退した後、ラオスは北軍に占領されモン族は迫害されました。
そこでモン族はアメリカに逃げ込んで来たのです。
言い換えれば、モン族は朝鮮戦争から始まる米ソの代理戦争の被害者であるわけです。
コワルスキーはそんなモン族にたいして、朝鮮戦争で殺害したアジア人の影がちらつき、罪の意識があります。
そこで毛嫌いしているモン族の少年タオに対して自らの贖罪感情から、男とし教育をするのです。
彼に対する教育とは古き良きアメリカを受け継ぐことでした。
芝生の刈り方を教えたり、不良の相手仕方など。
ある意味、古臭いとも考えられる伝統的な生き方を丁寧に継承していくのです。
物語の最後でコワルスキーは自らの命をかけてタオとその家族を守ります。
そして彼の死後、財産はコワルスキーーの家族ではなく、タオに相続されます。
アメリカの精神を象徴するグラン・トリノとともに。
このラストには頰を濡らすことでしょう。
『グラン・トリノ』(2008)の主題

ディレクションするイーストウッド(C)2009 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
『グラン・トリノ』(2008)主題はアメリカの精神の後継と、人種や民族の壁を打ち壊すというものです。
人口増加を続けていくと、白人と有色人種の人口比は逆転するといわれています。
建国者としての白人が少数派になるのはもはや時間の問題です。
時代にいつまでも意固地に多人種や他民族を認めないという姿勢は、当然通用しないでしょう。
本作は、アメリカの抱える問題に対して一助を与える作品であるといえます。
おわりに
2019年現在でも、意欲的に映画を作り続けているイーストウッド監督ですが、『グラン・トリノ』(2008)は彼のキャリア終盤の中で集大成の作品だといえます。
もしかしたら「キャリア中盤」かもしれませんが。
これまでのイーストウッド作品の要素がたくさん詰まっているのが本作『グラン・トリノ』(2008)です。
イーストウッドの過去作を鑑賞し、イーストウッドという人物を知ること。
移民とアメリカの歴史について知ることで、本作の持つ意味を一層理解することができます。
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