
『アメリカン・スナイパー』(2014)は、イラク戦争で米軍史上最多、160人を射殺した伝説のスナイパー、クリス・カイルを描いた戦争映画です。
監督はクリント・イーストウッド。
本作はアカデミー賞音響編集賞を受賞し、アメリカ映画協会(AFI)が選ぶ2014年のベスト映画トップ10に選ばれました。
重厚な戦争シーンと人間ドラマが織り成す映画『アメリカン・スナイパー』(2014)について、感想・考察、エンディングやラストの意味を解説していきます!
項目 | 評価 | 点数 |
知名度 | ★★★★★ | 90点 |
配役/キャスト | ★★★★☆ | 75点 |
ストーリー | ★★★★☆ | 80点 |
物語の抑揚 | ★★★★☆ | 80点 |
ドラマ | ★★★★☆ | 80点 |
リアリティ | ★★★★★ | 90点 |
目次
『アメリカン・スナイパー』(2014)の作品情報
製作年 | 2014年 |
原題 | American Sniper |
製作国 | アメリカ |
上映時間 | 132分 |
ジャンル | 戦争ドラマ |
監督 | クリント・イーストウッド |
脚本 | ジェイソン・ホール |
原作 | ネイビー・シールズ最強の狙撃手 |
主要キャスト | ブラッドリー・クーパー(クリス・カイル)/ 日本語吹替:桐本琢也
シエナ・ミラー(タヤ・カイル)/ 日本語吹替:渋谷はるか マックス・チャールズ(コルトン・カイル)/ 日本語吹替:宮澤はるな ルーク・グライムス(マーク・リー)/日本語吹替:中川慶一 |
『アメリカン・スナイパー』(2014)の概要

クリス・カイル:ⓒWarner Bros. Entertainment Inc.
アメリカ大使館爆破事件をきっかけに海軍へ志願したクリス・カイルは、過酷な訓練を耐え抜き、米軍特殊部隊ネイビー・シールズに入隊。
タヤと結婚したカイルであったが、すぐにイラク戦争へ派遣される。
戦場でスナイパーとしての才能を発揮し、「伝説(レジェンド)」と呼ばれるようになる一方で、敵からは懸賞金をかけられてしまう。
敵スナイパー「ムスタファ」から命を狙われるカイル。
死と隣り合わせの戦い、仲間の戦死、敵兵士を射殺していく中でカイルの心はやがてPTSDに蝕ばまれていく。
『アメリカン・スナイパー』(2014)の感想と考察

クリス・カイル:ⓒWarner Bros. Entertainment Inc.
『アメリカン・スナイパー』(2014)の感想
『アメリカン・スナイパー』(2014)は、イラク戦争を舞台にした映画なのですが、結局、戦争は悲劇しか生まないということです。
本作の戦闘シーンはてともリアリティがあり、臨場感抜群でした。
戦闘シーンのリアルさも大きな見どころなのですが、本作で注目していただきたいのは、兵士のPTSD(心的外傷後ストレス障害)。
つまり、心の病。
戦地に赴いた兵士たちは当然、死ぬリスクは高いですし、生きていたとしても腕がなくなったり、足がなくなったり、何らかの身体的障害を抱えるだけでなく、心にも悪影響を与えていたのです。
本作の主人公、クリス・カイルもその一人。
カイルは戦争の後遺症ともいえるPTSDに悩まされました。
体が無事でも心が無事ではないし、家族がいれば、家族にも悪影響が出てしまい、PTSDで自殺してしまうこともあるそうです。
改めて戦争は悲劇しか生まないのだということを思い知りました。
『アメリカン・スナイパー』(2014)の考察
『アメリカン・スナイパー』(2014)の戦争の立ち位置について考察していきます。
『アメリカン・スナイパー』(2014)は、賛否両論の大論争を巻き起こし、「好戦的」「160人も殺した男を英雄視している」というリベラル派の意見がある一方で、「愛国的で、戦争を支持する傑作」という保守派の意見があります。
賛否両論があるのは映画としては、とても良いことではありますが、果たして本作は、どちらの立場を描いた映画なのでしょうか。
結論から言うと答えはどちらでもありません。
好戦的でもなく、反戦的でもない中立の立場であると思います。
本作は過酷な戦場で戦う兵士の葛藤と厳しい現実であり、解釈を観る人にゆだねています。
製作国がアメリカですし、アメリカ軍として戦う兵士の視点なので、アメリカ人向けの好戦映画に映ってしまうのは仕方のないことかもしれません。
しかし、あくまで主題は兵士の葛藤と厳しい現実です。
戦闘シーンは戦争の厳しい現実を描くために必要なシーンだったと言えるでしょう。
戦争で心を疲弊させていくカイルを観ると、それが分かるのではないでしょうか。
日本でもジブリ映画『風立ちぬ』(2013)が戦争を賛美しているとの声がありました。
しかし、この映画も本作がクリス・カイルの半生を描いたのと同じように、堀越二郎(正確にはモデルにしている)の半生を描いただけのことであり、決して戦争を賛美しているわけではないと思います。
戦争映画は観る人によってだいぶ印象が変わってしまうジャンルなのかもしれません。
【なぜ?】『アメリカン・スナイパー』(2014)の疑問を解説

カイルとタヤ:ⓒWarner Bros. Entertainment Inc.
クリス・カイルがなぜ戦場へ行ったのかを解説
2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件、いわゆる9.11をきっかけにして起きたイラク戦争により、特殊部隊シールズに入っていたクリス・カイルは4度イラクへ派遣されました。
ちなみにアメリカ同時多発テロ事件は、「自作自演」「航空機がビルに突っ込んだ映像はCGで、実はビル内部から爆発が起きている」といった、様々な陰謀説や都市伝説が囁かれています。
クリス・カイルは伝説の人物?真実は? アメリカでの知名度・反応を解説
クリス・カイルの本名は、クリストファー・スコット・"クリス"・カイルといい、映画と同じく特殊部隊ネイビー・シールズに配属され、4度イラクへ派遣されました。
カイルは、イラク軍およびアルカイダ系武装勢力の戦闘員を160人殺害し、「伝説の狙撃手」「史上最高の狙撃手」と称されますが、敵からは「悪魔」と呼ばれ、懸賞金が懸けられます。
殺害数は160人とされていますが、実は正確な殺害数は公式にはっきりと記録されていないそうです。
ただ、米海軍、国防総省はカイルの記録は米軍歴代トップレコードだと認めているので、「伝説の人物」であることは間違いないでしょう。
亡くなった時は、国中がその死を悼み、アメリカのヒーローとしてその功績を称えられました。
クリス・カイルは精神がおかしい? PTSDとはなにかを解説
クリス・カイルは戦争の影響でPTSDになりました。
PTSDはポストトラウマチックストレスディソーダーの略で、心的外傷後ストレス障害と言います。
強い精神的衝撃を受けることが原因で起こるストレス性障害であり、不眠などの過覚醒症状や体験のフラッシュバックなどが症状として見られます。
ある元軍人はパニックに襲われるようになり、苦しみから逃れるため、酒と薬物に溺れ、自殺未遂や異常行動を繰り返すようになったという例も。
クリスは、体の故障や原因不明の高血圧に悩まされることになりました。
姿を見せない敵「カイザー・ソゼ」とは何者かを解説
劇中で「姿を見せない敵」のことを「カイザー・ソゼ」と言うシーンがありました。
この「カイザー・ソゼ」とは、1995年に公開された映画『ユージュアル・サスペクツ』(1995)に出てくる謎の人物「カイザー・ソゼ」のことです。
映画でもカイザー・ソゼが姿を見せなかったことから、「姿を見せない敵」のことをカイザー・ソゼと呼んだのでしょう。
ちなみに『ユージュアル・サスペクツ』(1995)は大どんでん返しがあると有名な映画ですので、まだ観たことのない方は観てみてはどうでしょうか。
ザルカウィとは誰?正体を解説
ザルカウィとは、傭兵を率いる大物であり、イスラム主義のテロリストとして国際指名手配を受けた男です。
イスラム国家の樹立を掲げる戦闘的なイスラム原理主義組織「タウヒードとジハード集団」を立ち上げました。
2006年、アメリカ軍の爆撃により死亡したことが確認されています。
ムスタファとは誰?正体を解説
ムスタファとは、シリア人の元オリンピック射撃選手のスナイパーです。
1000m先のターゲットの狙撃を得意とし、クリス・カイルの戦友が犠牲になります。
映画ではクリス・カイルと交戦して、射殺されましたが、実際は交戦した事実はなく、正体は解明されていない架空の人物です。
そんなムスタファを主人公にした映画が企画中であるそうです。
『アメリカン・スナイパー』(2014)の内容に嫌悪したエジプトの若手映画監督、エミール・サラマが反戦映画を作ろうと企画したとのこと。
仮タイトルを『イラァキィ・スナイパー(Iraqi Sniper / 訳:イラクの狙撃兵)』とし、本作でもムスタファ役を演じたサミー・シークが、同じ役で出演。
プロデューサーにモハメド・ヘフジ、映画監督のハニ・アブ・アサドをプロデューサーに迎えて製作を進めているようです。
『アメリカン・スナイパー』(2014)の原作や元ネタとは? 映画版との比較

カイルとタヤ:ⓒWarner Bros. Entertainment Inc.
『アメリカン・スナイパー』(2014)の原作と元ネタ
『アメリカン・スナイパー』(2014)の原作は、本作の主人公クリス・カイルが自ら書いた自伝『ネイビー・シールズ最強の狙撃手』という本です。
文庫版は『アメリカン・スナイパー』と改題されており、早川書房より刊行されています。
【比較】『アメリカン・スナイパー』(2014)の原作と映画版の違いは?
『アメリカン・スナイパー』(2014)の原作と映画版では多少違いがあるようです。
まず、凄腕のスナイパーとして登場するムスタファ。
映画では何度もクリス・カイルと交戦して、射殺されましたが、実際に交戦した事実はなく、フィクションです(ムスタファという射撃競技のオリンピック選手であったスナイパーは実在するそうですが)。
原作では、人物の簡単な解説だけでクリス・カイルと対峙しておらず、本作の脚本を担当したジェイソン・ホールは、映画を面白くするための脚色であると認めています。
もう一つはクリス・カイルの年齢。
彼は劇中で30歳と言うシーンがあるのですが、実際は20代です。
クリス・カイルを演じたブラッドリー・クーパーが出演当時39歳だったので、年齢を上げたのかもしれません。
『アメリカン・スナイパー』(2014)の最後は? ラストシーンやエンドロール・結末を解説

クリス・カイル:ⓒWarner Bros. Entertainment Inc.
『アメリカン・スナイパー』(2014)の結末・ラストシーン
除隊して帰国したカイルは、戦争の影響でPTSDに悩まされるようになります。
そんな中、医師の勧めで退役軍人(戦争で傷を負った元軍人)たちと交流を持つように。
ある日、家族にあいさつして出かけた射撃訓練先で、元軍人である同行者の男に射殺されてしまうというラストになりました。
『アメリカン・スナイパー』(2014)のその後、現在は?
クリス・カイルを射殺したのは、PTSDを患うエディー・レイ・ルースという元海兵隊員の男です。
ルースは現場から逃走しましたが、保安官によって逮捕され、2015年に仮釈放なしの終身刑という判決が下されました。
『アメリカン・スナイパー』(2014)のエンドロールの解釈と考察
『アメリカン・スナイパー』(2014)のエンドロールは無音でした。
なぜ、本作は無音のエンドロールとなったのか、考察していきます。
ポジティブな音楽なら好戦的ととられてしまい、ネガティブな音楽なら反戦的ととられてしまうため、あえて何のイメージもない無音にし、考える時間、感じる時間を観客に与えたのではないでしょうか。
「あなたは戦争についてどう考えますか」というクリント・イーストウッド監督の無言のメッセージのように感じます。
もしかしたら、無音のエンドロールがあった、つまり考える時間があったからこそ、賛否両論の大激論になったのではないでしょうか。
この無音のエンドロールからも、クリント・イーストウッド監督が中立の立場で映画を製作したのではないかと考えられます。
【レビュー】『アメリカン・スナイパー』(2014)の評価・評判

カイルと娘:ⓒWarner Bros. Entertainment Inc.
【つまらない?】低評価のレビュー
『アメリカン・スナイパー』(2014)にはどのような低評価レビューがあったのでしょうか。
映画レビューサイトをまとめてみると、
という低評価レビューがありました。
「重い」「映像がキツイ」という低評価が多かったです。
射殺されたり、拷問されたりするシーンがあるので、重かったり、映像的にキツかったりするのかもしれません。
また、「アメリカ側から見た正義」というアメリカを賛美するような内容の低評価も多くありました。
【面白い?】高評価のレビュー
『アメリカン・スナイパー』(2014)にはどのような高評価レビューがあったのでしょうか。
映画レビューサイトをまとめてみると、
という高評価レビューがありました。
戦争について「考えさせられる」というレビューが多かったです。
また、クリント・イーストウッド監督を評価するレビューや臨場感を評価するレビューも多くありました。
確かに、本作は戦争について考えさせられる良いきっかけにもなりますし、緊張感のある戦闘シーンは見応えがありました。
日本の映画レビューサイト映画.comの点数は5点満点中3.9という高評価に。
全体的に高評価な結果となりました。
『アメリカン・スナイパー』(2014)の総合評価:クリント・イーストウッド監督の重厚な戦争映画

クリス・カイル:ⓒWarner Bros. Entertainment Inc.
クリント・イーストウッド監督の重厚な戦争映画だった『アメリカン・スナイパー』(2014)。
戦争について考えるきっかけになりましたし、他にも、「正義とは何か」といったことも考えさせられました。
臨場感のある戦闘シーンも見どころ。
ぜひ本作を観て、戦争について考えてみてはどうでしょうか。
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