『さよならくちびる』(2019)は、女性ユニット「ハルレオ」とローディーのシマの関係性や全国ツアーを描いた音楽映画です。
主演の「ハルレオ」には小松菜奈と門脇麦。
シンガーソングライターのあいみょんと秦基博が楽曲提供をしました。
優しいフォークソングが印象的な『さよならくちびる』(2019)について、感想と考察、主題歌・挿入歌の解説をしていきます!
項目 | 評価 | 点数 |
知名度 | ★★★★☆ | 80点 |
配役/キャスト | ★★★★☆ | 80点 |
ストーリー | ★★★★☆ | 70点 |
物語の抑揚 | ★★★★☆ | 70点 |
楽曲 | ★★★★☆ | 85点 |
ドラマ | ★★★★☆ | 70点 |
目次
『さよならくちびる』(2019)の作品情報
製作年 | 2019年 |
原題 | さよならくちびる |
製作国 | 日本 |
上映時間 | 116分 |
ジャンル | ドラマ |
監督 | 塩田明彦 |
脚本 | 塩田明彦 |
主要キャスト | 小松菜奈(レオ)
門脇麦 (ハル) 成田凌 (シマ) |
『さよならくちびる』(2019)の概要
女性ユニット「ハルレオ」は全国ツアーを最後に解散を決めていた。
浜松でのライブ会場。
遅れてやってきたレオは顔に痣をつけていたが、そのままステージへと上がり、アコースティックギターを弾きながらのいつものパフォーマンスをする。
四日市へ向けて出発した車の中でハルは、レオから渡された封筒を開ける。
その中にはブレスレットが入っていた。
7月14日はハルがレオに初めて声をかけた日だったのである。
バイト先のクリーニング工場で「音楽やらない?あたしと」とハルはレオを誘ったのだ。
『さよならくちびる』(2019)のキャスト・登場人物の相関図を紹介
『さよならくちびる』(2019)のキャスト・登場人物(キャラクター)の相関図を紹介していきます。
ハル(久澄春子)/門脇麦
ハルレオで作詞作曲を担当。
バイト先のクリーニング工場でレオに声をかけてハルレオを結成した。
レオに好意を抱いている。
演じたのは、門脇麦。
2011年にTVドラマで女優デビューし、その後も数々の映画やドラマ、舞台にも出演。
本作でヨコハマ映画祭主演女優賞をW主演の小松菜奈と受賞しました。
レオ(西野玲緒)/小松菜奈
バイト先のクリーニング工場でレオに声をかけられて、音楽を始める。
ハルに対して憧れを持つ。
ハルの好意に気づきながらも、シマのことが好きになる。
演じたのは、小松菜奈。
2008年からモデルとして活動し、2014年に女優デビュー。
その後も数々の映画やCMに出演し、本作ではヨコハマ映画祭主演女優賞をW主演の門脇麦と受賞しました。
シマ(志摩一郎)/成田凌
ハルレオのローディー兼マネージャー。
元ホストであり、バンドをやっていた過去を持つ。
ハルに好意を抱いている。
演じたのは、成田凌。
2013年よりモデルとして活動し、2014年に俳優デビュー。
その後、映画やテレビドラマで活躍。
本作で(他の作品と合わせて)TAMA映画賞最優秀新進男優賞、ヨコハマ映画祭助演男優賞、報知映画賞助演男優賞を受賞しました。
『さよならくちびる』(2019)の感想と考察
『さよならくちびる』(2019)の感想
『さよならくちびる』(2019)は、人気ミュージシャンのあいみょんと秦基博が楽曲提供しているだけあって、心地よいフォークソングが印象的でした。
楽曲だけでなく、「ハルレオ」を演じた門脇麦と小松菜奈の歌声も素敵。
特にタイトルにもなっている『さよならくちびる』は、2人のハーモニーが優しく響きます。
インディーズデュオという設定ではありますが、メジャーデビューしたミュージシャンと遜色ありません。
ちなみに門脇麦と小松菜奈は「ハルレオ」としてCDデビューしています。
また、本作の特徴としてはロードムービーであることでしょう。
ハルレオは全国ツアーをするため、シマの運転する車に乗ってライブハウスを回っていきます。
ライブハウスはもちろん、色々な景色が見られるので、一緒に旅をしている気分になるのも見どころ。
本作ではハルレオの音楽とロードムービーとしての魅力も味わってください。
『さよならくちびる』(2019)の考察
ここでは、『さよならくちびる』(2019)のテーマについて考察していきます。
本作は、本音(本当の想い)を言葉に出せない難しさやもどかしさを描いたのではないかと思います。
登場人物がハル、レオ、シマの3人と少ないのは、3人の複雑な関係やそれぞれの思いを強調して見せたかったからなのではないでしょうか。
ハル、レオ、シマはそれぞれが伝えたい本当の気持ちがあるのに伝えられないでいます。
それはなぜでしょうか。
ハル、レオ、シマの関係性、またはハルとレオの関係が崩れてしまうのを恐れたからだと考えられます。
例えば、恋愛で親友と同じ人を好きになったけど、「親友」という関係が壊れてしまうのを恐れて好きな人に告白しない、なんて経験がある人もいるかと思います。
本音を伝えるというのは簡単なようでいて実は難しいもの。
相手を傷つけてしまうかもしれないし、自分が傷ついてしまうかもしれない。
大切な関係が壊れてしまうかもしれない。
そんな恐れや難しさ、もどかしさを本作では伝えたのではないかと思います。
『さよならくちびる』(2019)のタイトルの意味とは?
『さよならくちびる』(2019)は楽曲のタイトルにもなっています。
タイトルの意味のヒントになると思うので、『さよならくちびる』の歌詞を一部抜粋してみます。
さよならくちびる
私は今誰に別れを告げるの
君を見つめながら
さよならくちびる
私は私に今別れを告げるよ
ありがとう さよなら
くちびるは「言葉」に言い換えることができるのではないかと思います。
言葉はくちびるを通して発せられるから(思いを伝える手段でもある)。
本作のストーリー内容を考えると、『さよならくちびる』の意味は「言葉とさよならした」。
つまり、「本当の思いを伝えられない」あるいは「思いを胸にしまった」という意味があると思います。
『さよならくちびる』(2019)の主題歌・挿入歌の解説
主題歌「さよならくちびる」秦基博による映画と同名タイトル
主題歌は秦基博が楽曲提供しました。
タイトルは映画と同名の「さよならくちびる」。
秦基博は「さよならくちびる」という言葉をもとに、ハルレオの声、映画の世界をイメージしながら曲を書いたのだそう。
歌詞を読むと、「さよならくちびる」という言葉が効果的に使われていたり、登場人物の細やかな心情が表現されているように思います。
秦基博のアーティスト性と映画の世界観が見事にマッチしています。
挿入歌「誰にだって訳がある」「たちまち嵐」あいみょんによる楽曲提供
挿入歌はあいみょんが楽曲提供しました。
タイトルは「誰にだって訳がある」「たちまち嵐」の2曲。
あいみょんは「誰にだって訳がある」を楽観的だけど、芯のある楽曲をイメージし、「たちまち嵐」は沢山の感情を背負って心臓を走らせ生きているハルとレオに、少し訳ありの歌を作りたいと思ったのだそう。
秦基博と同様、あいみょんのアーティスト性も映画の世界観が見事にマッチしています。
歌唱は『さよならくちびる』(2019)の主演2人によるユニット「ハルレオ」
歌唱はハル(門脇麦)とレオ(小松菜奈)です。
2人とも素敵な歌声を披露しました。
実際に主演を演じた門脇麦と小松菜奈はギターデュオ「ハルレオ」としてCDデビュー。
CDには
・さよならくちびる
・たちまち嵐
・誰にだって訳がある
・さよならくちびる -劇中歌ver.-
が収録されています。
気になる方は聴いてみてはどうでしょうか。
【なぜ?】『さよならくちびる』(2019)が疑問を解説
『さよならくちびる』(2019)の解説①:「ハルレオ」とはどのように結成し、なぜ解散を決めた?
バイト先のクリーニング工場で「音楽やらない?あたしと」とハルがレオを誘ったことがきっかけでハルレオは結成されました。
ハルレオが解散を決めた決定的な理由は、明確には語られていません。
おそらくハルとレオの不仲によるものではないかと考えられますが、なぜ2人が不仲になってしまったのかという過程は分かりません。
レオの音楽に対する姿勢(音楽をやる意味を見失った姿勢)がハルとしては気にくわず、2人の距離が開いてしまったのではないでしょうか。
また、レオがシマのことを好きだと分かり、ハルに嫉妬も少なからず芽生えてしまって2人に微妙な距離感ができてしまったのも原因なのかもしれません。
『さよならくちびる』(2019)の解説②:誰が誰に思いを寄せている? 相関関係とは?
『さよならくちびる』(2019)の相関関係を簡単に言ってしまえば、三角関係です。
ハルはレオが好き。
つまり、同性愛者です。
レオはそんなハルの好意に気づきながらも、シマのことが好き。
しかし、シマはハルのことが好き。
3人とも一方通行の感情を抱いているのです。
本作ではそんなこじれてしまった関係を繊細に描きました。
『さよならくちびる』(2019)の解説③:歌詞でしか表せないハルの真実とは?
歌詞でしか表せないハルの真実とは、同性愛のことだと思います。
ハルはレオに好意を抱いているようではあるのですが、直接「好き」といった場面はありませんでした。
ハルは自分の思いを言葉では表せず、歌詞にして表現しようとしたのでしょう。
『さよならくちびる』(2019)の解説④:歌声でしか表せないレオの想いとは?
歌声でしか表せないレオの想いとは、ハルに対しての憧れではないでしょうか。
音楽の才能のあるハルに対して応えるため、そして音楽に誘ってくれたハルに感謝するには歌うことしかないとレオは思っていたのだと思います。
もしくは、ハルとの関係は音楽だけの関係と暗に伝えているのかもしれません。
『さよならくちびる』(2019)の解説⑤:隠し続けていたシマの本音とは?
隠し続けていたシマの本音とは、ハルに対する気持ちだと思います。
シマもハルと同様にハルに対して直接「好き」といった場面はありませんでした。
また、シマにはバンドで成功できなかった未練があったのかもしれません。
シマはハルレオの解散を受け入れつつも、ハルレオの成功をずっとサポートしていきたかったという本音もあったのではないでしょうか。
『さよならくちびる』(2019)の解説⑥:「さよならくちびる」はどのようにして誕生した?
「さよならくちびる」はハルが河原のベンチでギターを弾きながら口ずさんで誕生しました。
その後ろで曲を聴いていたレオが「良い曲だよ。続けて」と言います。
なびく風と緑が印象に残る素敵なシーンでした。
『さよならくちびる』(2019)の最後は? ラストシーンや結末を解説
『さよならくちびる』(2019)の結末・ラストシーン
函館のラストライブは大盛況で終わります。
東京に戻ってきたハル、レオ、シマ。
シマが自分の荷物は自分で持って行けと突き放すと、ハルとレオは自分の荷物を持って去りました。
しかし、ハルとレオは再び荷物を持って戻ってきます。
結局、シマは再びハルとレオを乗せて車を走らせるというラストになりました。
『さよならくちびる』(2019)の最後の解釈と考察
『さよならくちびる』(2019)の最後は賛否両論あるのではないかと思います。
なぜなら散々、解散をほのめかせておいて結局解散ということにはならずに終わってしまったからです。
「なんだよ!解散しないのかよ!」とつっこんだ人もきっと多かったでしょう。
しかし、個人的には後味がすっきり(ほっこり)していたので、良かったです。
もしあのまま別れていたら後味悪かったのではないでしょうか。
本作のラストではハル、レオ、シマの切っても切り離せない強い絆が見られました。
『さよならくちびる』(2019)のその後、現在は?
『さよならくちびる』(2019)のその後で気になるのは、ハルレオは本当に解散するのかしないのか。
本作のラストでは解散せずに終わりましたが、どうなのでしょう。
おそらくハルレオ、そしてシマの関係は継続するのではないかと思います。
ハルレオ再結成になるでしょう。
本当に嫌だったらあのままハルとレオは去っていたはず。
失って初めてその大切さに気づくこともあるのではないでしょうか。
短い時間ではありましたが、ハルとレオはそれを悟ったのだと思います。
【レビュー】『さよならくちびる』(2019)の評価・評判
【つまらない?】低評価のレビュー
『さよならくちびる』(2019)の低評価はどのようになっているのでしょうか。
映画のレビューサイトをまとめてみると、
という低評価レビューがありました。
「中身が薄い」「都合良すぎる」というストーリー部分に低評価が多いです。
また、「既視感がある」等のレビューもありました。
ストーリーにもう一工夫あれば作品としてさらに良くなったかもしれません。
【面白い?】高評価のレビュー
『さよならくちびる』(2019)の高評価はどのようになっているのでしょうか。
映画のレビューサイトをまとめてみると、
もっと曲を聴きたい。」
という高評価レビューがありました。
高評価レビューで際立って多かったのが楽曲とハルレオの歌声。
人気ミュージシャンとハルレオの歌声の見事なコラボレーションが成功した結果と言えるでしょう。
日本の映画レビューサイト映画.comの点数は5点満点中3.6という結果になりました。
『さよならくちびる』(2019)の総合評価:繊細なタッチで描く音楽ロードムービー
繊細なタッチと楽曲で魅了した『さよならくちびる』(2019)。
ロードムービーとしても魅力的で一緒に旅をしている気分にもなれます。
ハルレオを演じた門脇麦と小松菜奈の歌声は素敵でした。
ハルレオのライブシーンに注目です!
\独自の調査で徹底比較/