
『1917 命をかけた伝令』(2019)は、第一次世界大戦を駆け抜ける2人のイギリス兵を描いた全編ワンカット風戦争映画。
監督は『アメリカン・ビューティー』(1999)で作品賞を含む5部門を受賞したサム・メンデス。緊迫感が漂う戦場の様子を臨場感たっぷりの長回し撮影で再現しました。
サム・メンデス監督が祖父の実体験から発想を得て制作をした本作は、見事、第77回ゴールデングローブ賞でドラマ部門の作品賞と監督賞、第92回アカデミー賞では撮影賞、視覚効果賞、録音賞を受賞。
全米では初登場1位となり、約3650万ドルの興収を売り上げ、日本でも土日2日間で動員12万4000人、興収1億8100万円の大ヒットを記録しました。
様々な賞を受賞し、革新的な映像技術で話題を集めた本作『1917 命をかけた伝令』(2019)について、あらすじと感想、評価をネタバレを交えて紹介していきます。
目次
『1917 命をかけた伝令』(2019)の作品情報とキャスト
作品情報
原題:1917
製作年:2019年
製作国:アメリカ、イギリス
上映時間:110分
ジャンル:ドラマ、戦争
監督とキャスト
監督:サム・メンデス
代表作:『アメリカン・ビューティー』(1999)『007 スカイフォール』(2012)
出演者:ジョージ・マッケイ
代表作:『はじまりへの旅』(2016)『マローボーン家の掟』(2017)
出演者:ディーン=チャールズ・チャップマン
代表作:『トレイン・ミッション』(2018)『カセットテープ・ダイアリーズ』(2019)
出演者:アンドリュー・スコット
代表作:『007 スペクター』(2015)『否定と肯定』(2016)
出演者:マーク・ストロング
代表作:『キングスマン』(2014)『シャザム!』(2019)
出演者:コリン・ファース
代表作:『英国王のスピーチ』(2010)『キングスマン』(2014)
出演者:ベネディクト・カンバーバッチ
代表作:『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2014)『ドクター・ストレンジ』(2016)
『1917 命をかけた伝令』(2019)のあらすじ

戦地へ赴くトムとスコフィールド(C)2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
第一次世界大戦下のフランス。
西部戦線では連合国軍とドイツ軍が争いを続け、相手勢力の動向をうかがっていた。
そんな中、若きイギリス兵であるウィリアム・スコフィールドとトム・ブレイクの二人は、ドイツ軍を追いかける連隊へ撤退の指令を伝えるための特別任務を与えられる。
トムの兄・ジョセフも所属している連隊から多くの犠牲者を食い止めるため、生きるか死ぬか分からない戦場を必死に駆け抜ける二人。
しかし、そこには、さまざまな困難が待ち受けていた……。
『1917 命をかけた伝令』(2019)の3つの見どころ

スコフィールドと燃えさかる教会© 2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
『1917 命をかけた伝令』(2019)の見どころ①:ワンカットの撮影方法
本作の見どころは、何と言っても、全編ワンカットで紡ぎだされた圧巻の映像体験と言えるでしょう。
ワンカットの連なりで作られた本作が生み出したのは、圧倒的な緊張感と作品の中に入ったような没入感。
これまでの戦争映画で、観客は「傍観者」の一人として、当時の記録を追っていく感覚を抱いていたかもしれません。
しかし、本作で味わうのは、まさしく一人の兵士として戦争に参加しているような「当事者」感。
フィクションでありながらも、その中にリアルを感じさせる手法には、誰もが共感を抱かずにはいられないでしょう。

『007 スカイフォール』(2012)場面写真© Skyfall2012 Danjaq, LLC, United Artists Corporation, Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.
また、これまでの監督作品同様、「絵画」のように美しい構図は本作でも踏襲されています。
そのため、本作は特殊な撮影技法と映像への細かなこだわりが見事に融合した監督の真骨頂ともいうべき一作なのかもしれません。
特に、中盤における「燃えさかる教会」と「闇の中を疾走する兵士」のシーンには、息をのむほどの美しさと驚嘆があり、まるで「動く絵画」を見ているような衝撃がありました。
『1917 命をかけた伝令』(2019)の見どころ②:アカデミー賞3部門を受賞
本作は今年度のアカデミー賞において、見事、撮影賞、視覚効果賞、録音賞の3部門を受賞。
先ほど述べた「ワンカット」を繋げた特殊な撮影技法もさることながら、違和感なくVFXを溶け込ませた視覚効果、そして、映像を支えるはっきりとした音声が評価されているという点は、間違いなく、注目されるべき事実でしょう。
例えば、作品の中盤、炎上する戦闘機が登場するシーンは、実際の映像にVFXを混ぜ合わせることで作り出された映像。
物語に集中するがあまり、鑑賞時には気にもならないこれらの映像の積み重ねが、本作におけるリアリティを裏打ちしているのは確かでしょう。
また、地続きの映像を全く邪魔することのない自然な音声は、本作の説得力を極限にまで高めている理由の一つといえるのかもしれません。
『1917 命をかけた伝令』(2019)の見どころ③:脇を彩る豪華な俳優陣
そして、本作を語るうえで外せないのが、脇を彩る豪華な俳優陣と言えるでしょう。
出番は決して長いとは言えませんが、英国を代表する3人の名俳優が登場するのは大きな魅力。
『英国王のスピーチ』(2010)で、第83回アカデミー賞主演男優賞を受賞し、人気シリーズ『キングスマン』(2014)で、作品を代表するスパイ・ハリー役を演じたコリン・ファース。
同じく『キングスマン』(2014)で、主人公の味方となる脇役・マーリンを演じ、DCコミックス原作のコメディヒーロー映画『シャザム!』(2019)では、主人公を苦しめる名悪役・シヴァナを演じたマーク・ストロング。
そして、ドラマ『SHERLOCK』(2010-)ではタイトル・ロールの名探偵を演じ、全世界で大ヒットしたMARVEL映画『ドクター・ストレンジ』でヒーローデビューも飾ったベネディクト・カンバーバッチ。
彼らの圧倒的な存在感は、本作における「ありふれた兵士の生きざま」を、より際立たせていたようにも感じました。
『1917 命をかけた伝令』(2019)の感想と考察

橋を渡るスコフィールド© 2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
戦争映画の革命
『1917 命をかけた伝令』(2019)が残した最も大きな功績は、戦争映画にありがちな「敷居の高さ」を下げたことにあるでしょう。
戦争を経験していない多くの世代にとって、「戦争映画」と聞くと、「話が重そう」「難しそう」というマイナスイメージから、鑑賞を避けてしまう人たちもいるかもしれません。
しかし、本作は「体験」という側面が重視されているため、作品に没頭していると、いつの間にか時間が過ぎている感覚を味わうことができます。
また、ワンカット風(もしくは、ワンカット)撮影方式の作品は数あれど、戦争映画で、それを実現したのは本作が初めてでしょう。
構造上、派手な演出が難しいとされていたこの手法で見事に作り上げられた本作は、今後の映画史において、多大な影響を与えると同時に、今後の戦争映画の見せ方を変えていく革新的な一作だったといえます。
人生という名の「伝令」
『1917 命をかけた伝令』(2019)の核心となるテーマ、それは「生きて経験を伝えることの大切さ」だったのではないでしょうか。
物語の導入部で、「撤退の指令を伝えるため」に戦地を進むことになった2人の兵士。
しかし、その目標は本編中盤に起こる「ある出来事」によって、少しずつ、新たな意味合いを持ち始めます。
詳しくは、のちの文章で触れますが、物語の終盤で主人公がとった行動、そこにこそ「生きて経験を伝えることの大切さ」は集約されていたように思います。
また、本作のモデルとなったのは、サム・メンデス監督が幼少期に祖父から聞いた実体験だそう。
そのような製作経緯を考えると、監督の祖父が生きて経験を伝えたからこそ本作は生まれたといえるでしょう。
それを映画として世界中の観客へと伝えたサム・メンデス監督は、本作の主人公たちと同様に、「生きて経験を伝えることの大切さ」を体現した人物といえるのかもしれません。
史実としての正確性

戦地に立つスコフィールド:© 2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
一方で、『1917 命をかけた伝令』(2019)における史実としての正確性には、さまざまな指摘もあります。
Wikipediaでは、本作の歴史的正確性に関して、このような意見がまとめられていました。
このストーリーは戦争の「危険なほど誤解を招く」絵を提供しており、映画内では「トップダウンの人命の尊厳への懸念」を示唆しているのに対し、現実は「イギリスの上層部が何十万人もの若者を死なせるために送り込んだのだから、恐ろしく無関心だった」
「偽りの英雄主義と映画製作の驚異的な偉業」は「『大戦争』の真の殺戮からの逃避」を提供するのに役立ち、現実には1600人の犠牲者が出る可能性があっても、映画で描かれた反応を引起こさせることはなかっただろう
キャシー・テンペルスマン/ニューヨーク・タイムズ紙
「映画が描いているような、一部の大隊が元のドイツの陣地から9マイル先にあり、他の大隊がこの戦線に人員が配置されているかどうかを知らないように見える、ということは全く理解できない。デヴォンシャー連隊による攻撃に関しては、いかなる部隊も適切な砲兵の支援なしには攻撃しなかっただろう」
ジェレミー・バニング(軍史家)
これらの批判が表すように、本作で描かれた出来事と史実の間には大きな溝があることは明白でしょう。
しかし、本作が本当に意図していたのは、実際の戦争を忠実に再現することではなく、観客に身近な体験として知ってもらうことだったのではないでしょうか。
本作を実際の出来事として捉えてしまい、史実と考えてしまうことは危険なことではありますが、どんな形であれ、役者が演技をすることでフィクションになってしまうのが「映画」というもの。
それを理解していれば、本作は厳しい戦争の現実をフィクションという表現によって救済した、あり得たかもしれないもう一つの現実の物語と考えられるのかもしれません。
【ネタバレあり】『1917 命をかけた伝令』(2019) は実話?原作や元ネタはある?

川から陸地へ向かうスコフィールド© 2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co. LLC. All Rights Reserved.
『1917 命をかけた伝令』(2019) の舞台は西部戦線
本作の舞台は、第一次世界大戦下の西部戦線。
戦線とは、争いが起きている際、敵軍との間で軍が武装している地域のことを言い、本作では敵対国のドイツ軍と向き合うイギリス軍兵士の姿が描かれていました。
当時の様子を忠実に描写するため、塹壕をゼロから作り出したり、実際の軍服を可能な限り再現したりと、様々な工夫によって作り出した世界は、まるで観客自身にも兵士になった錯覚を引き起こします。
現代の私たちにとって「第一次世界大戦」は、「歴史上の事実」や「映画で描かれる過去の出来事」という印象が強いかもしれません。
しかし、本作を観終わった後、それらの出来事はより身近な出来事として捉えられることとなるでしょう。
【ネタバレあり】『1917 命をかけた伝令』(2019)の最後は? ラストシーンや結末を解説

戦場を駆け抜けるスコフィールド(C)2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
本作のラストシーンでは、見事、スコフィールドが任務を遂行し、連隊の突撃を間一髪のタイミングで中止することに成功します。
しかし、戦地へ向かう道中、共に駆け抜けた兵士・トムを失ってしまったスコフィールドには、トムの兄・ジョセフに彼の死を伝えなければならないという残酷な使命が待ち構えていました。
ジョセフに事実を伝え、トムへの感謝を伝えたスコフィールド。
それを聞いたジョセフは涙をこらえながら、彼と握手を交わすのでした。
戦地で生死が分からない兵士も多くいた中で、スコフィールドが果たした責任は大きかったはず。
彼が命をかけて伝えたものは「連隊への撤退命令」だけではなく、「戦友が生きた証」だったといえるのかもしれません。
そして、物語はオープニングとそっくりな大木に主人公がもたれかかり、彼が故郷の家族が写る写真を眺めた後、まるで大きな円環が閉じるように幕を下ろします。
【レビュー】『1917 命をかけた伝令』(2019)の評価・評判

闇の中を疾走するスコフィールド(C)2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
本作の評価は、おおむね好評。
8.4/10(262,751人中) IMDb
批評家支持率89%(420人中) Rotten Tomatoes
観客支持率88%(30,458人中) Rotten Tomatoes
4.1/5 (29,650人中) Filmarks
3.9/5 (489人中) 映画.com
4.1/5 (2335人中) Yahoo映画
数あるレビューサイトを見渡しても、全てが8割以上の点数を獲得しているという奇跡的な高評価。
低評価も多少は見受けられますが、とりあえず、観ておいて損はない作品と言えるでしょう。
『1917 命をかけた伝令』(2019)のまとめ

押さえつけられるスコフィールド© Universal Studios
最後まで、お読みいただき、ありがとうございます。
これまでも述べてきたように、本作で描かれたことは、あくまで実話を基にしたフィクションであり、史実からかけ離れた部分があるのも事実です。
しかし、そんな物語の中には、伝えたい想いや思想、登場人物の心情など、紛れもない作り手のリアルがあります。
映画を観終わった後、何を感じるかは人それぞれですが、本作を観ることで得られるものは多いはず。
是非、厳しい現実を生き抜かなければならない、今という時代だからこそ、多くの人に観てほしい傑作でした。
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『彼らは生きていた』(2018)
第一次世界大戦の兵士の様子を描いたドキュメンタリー作品。
当時の映像を着色し、実際の戦争経験者のインタビューを重ね合わせる手法をとっており、現在の観客でさえ実感を持ってしまうほどの衝撃に満ち溢れています。
『ジャーヘッド』(2005)
本作同様、サム・メンデス監督がメガホンをとった戦争映画。
湾岸戦争をモデルにした作品ではあるが、監督が『1917 命をかけた伝令』(2019)以前に手掛けた唯一の戦争映画であり、本作への萌芽となる描写も、いくらか見受けられるとも。
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(字幕版)
同じくワンカット風の手法でアカデミー賞にノミネートされ、見事、第87回アカデミー賞で作品賞を含む4部門を受賞した作品。
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