
『セッション』(2014)は、偉大なミュージシャンになりたい青年と、鬼の様な教師との出会いを描いたヒューマンドラマです。
監督は『ラ・ラ・ランド』(2016)や『ファースト・マン』(2018)など数々の大ヒット作を生んだデイミアン・チャゼル監督。
本作品はデイミアン・チャゼル監督が知られるようになったきっかけになる作品です。
なんとアカデミー賞5部門受賞を筆頭に51個も賞を受賞しています。
なぜここまで評価を得られる作品になったのでしょうか。
本記事では『セッション』(2014)の考察や、ラストシーン、楽曲などをネタバレを交えながら解説していきます。
『セッション』(2014)の作品情報とキャスト作品情報
原題:Whiplash
製作年:2014年
製作国:アメリカ
上映時間:106分
ジャンル:ドラマ
監督とキャスト
監督:デイミアン・チャゼル
代表作:『ラ・ラ・ランド』(2016)『ファースト・マン』(2018)
出演者:マイルズ・テラー/吹替:内田夕夜(アンドリュー・ニーマン)
代表作:『きみといた2日間』(2014)『ダイバージェント』(2014)
出演者:J・K・シモンズ/吹替:壤晴彦(テレンス・フレッチャー)
代表作:『ラ・ラ・ランド』(2016)『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)
出演者:メリッサ・ブノワ/吹替:横山友香(ニコル)
代表作:『パトリオット・デイ』(2016)『ロンゲスト・ライド』(2015)
『セッション』(2014)のあらすじ

ニーマンとフレッチャー© 2014 - Sony Pictures Classics
主人公のニーマンは偉大なジャズドラマーになるために、アメリカで最高峰のシェイファー音楽学院でドラムを練習していた。
彼の学校ではフレッチャーという学内のトップ指導者がいる。
フレッチャーのバンドは各コンテストで優勝し、ニーマンは密かにそのバンドが気になる様になっていた。
しかし、ニーマンは学内では譜めくりをやらされるばかりで、なかなか才能が開花しない。
あるとき、そんなニーマンをフレッチャーは目をつけ、自身のバンドにスカウトする。
フレッチャーは自分の道が開かれたと喜ぶのであったが、バンド練習初日からニーマンはフレッチャーから怒号を浴びせられる。
その日からフレッチャーの壮絶なレッスンが始まるのであった。
『セッション』(2014)の感想と考察

フレッチャーに食らいつくニーマン© 2014 - Sony Pictures Classics
『セッション』(2014)の感想
緊張感を保つ演出
『セッション』(2014)はフレッチャーとニーマンとのやり取りに、より緊張感を持たせるためにさまざまな工夫がされています。
その中でも2つの工夫について解説していきます。
一つは、明暗の構成についてです。
本作品は常に暗い映像で、モヤがかかった様な作品作りがされています。
デート中のシーンですら、蛍光灯が少し切れているかの様な暗さがあり、常に物語に緊張感が漂うのです。
これは、フレッチャーに対する緊張感と、演奏の気を抜けない感じを表すのには非常に良い演出でした。
またもう一つはBGMについてです。
この物語は演奏の曲はあるもののBGMがほぼありません。
BGMの効果は物語に表現したいことをわかりやすく伝えるのに大きな役割をもちますが、本作品では、無音と物音がほとんどを占めています。
デート中では、店内で流れている曲がそのままBGMになっていました。
本作品は、「こういう気持ちで見ろ」ということを鑑賞者に求めてない、むしろ自分たちで考えろという様に投げられているのです。
これもまた、本作品にのめり込むために緊張感を持たせた良い演出でした。
圧倒的演技力
『セッション』(2014)はJ・K・シモンズの演技力がすごいと話題になっていました。
確かに本作品ではJ・K・シモンズは、第87回アカデミー賞助演男優賞を受賞しています。
作中J・K・シモンズの演技は確かにすごいのですが、その中でもラストシーンに注目すべきでしょう。
ラスト9分はフレッチャーとニーマンとの演奏のカットだけで、ほとんどセリフがありません。
しかし、演奏中言葉はないですが、フレッチャーの戸惑い、怒り、興奮、喜びという心の変化が見事に伝わってくるのです。
フレッチャーという役は常に真顔、怒った顔で表情がほぼないですが、その役でここまで感情を伝えられる演技力はそれだけでも見る価値があります。
無駄を完全に無くしたシンプルさ
本作品はフレッチャーとニーマンの師弟関係のみに、スポットを当てて映画を作っています。
それにより無駄な感情が入ることなく物語に入り込むことができるのです。
その徹底的にシンプルにした、映像構成は本作品の評価を上げるにあたって大きな役割をしています。
本記事ではその中でも重要な役割をしている描写について2つ取り上げました。
一つ目はニーマン以外の目線の映像を、一切映さなかったことです。
普通映画を伝えやすくしたいのであれば、フレッチャーの心情を伝えたり、ニーマンの父が子を心配している様子を写すことはできたでしょう。
しかし、本作品ではそうした描写は一切排除されています。
そのため、フレッチャーにプレッシャーをかけられる緊張感をニーマン目線で最後まで堪能することができるのです。
また、フレッチャーの心情を考察する楽しさもまた、味わうことができます。
2つ目は演奏中に観客の顔を一切映さないことです。
そうすることにより、演奏を聞いてどう思うのか、今どういう感情で聞けば良いのかということを鑑賞者に委ねています。
また、その演奏が果たしてよかったのか、悪かったのかまでも全て鑑賞者に託されています。
ラストシーンまでの演奏に関しては、コンテストで入賞していますが、ラスト9分の評価はどこにも明かされていません。
このシーンが本作品でも一番の絶頂の演奏とされていますが、それを良いと確認する方法がないのです。
もしかしたら、二人が白熱した演奏は彼らだけの主観的な出来事で、他から見ればそこまででもないのかもしれません。
音楽は、この様に評価の仕方が難しく、理解しづらいものなのです。
作中、「音楽は競技の点数は個人の好みだろ」とニーマンが言われるシーンがありますが、この音楽そのものを理解する難しさを見事に表現していると思いました。
『セッション』(2014)の考察
セッションのタイトルに込められた意味
この映画の原題は「Whiplash」です。
Whiplashとは、直訳するとむちうち。
ニュアンスとしては鞭打ちともとることができるでしょう。
そして邦題のセッションですが、こちらもなぜか英語です。
セッションは意味としては、ジャズの演奏者が集まって演奏することを言います。
こう考えると、全くタイトルの意味が違い、なおかつ映画の見方もまるで異なってきます。
原題の意味を汲むとフレッチャーのニーマンに対する非道徳的な指導の行いと考えられますが、邦題の意味を汲むと、その二人が音楽で通じ合っているという美的なものと捉えることができるのです。
実際に作品を見ても原題を尊重すべきだと考えます。
やはり作品自体良い音楽を作り上げるというよりは、フレッチャーのサイコ具合に焦点が合っていると感じるためです。
ラストシーンはセッションというよりは殴り合いでした。
もしかしたら邦題は監督の意図を汲めていないのかもしれません。
『セッション』(2014)を通じて学ぶべきことはなにか
本作品で学べることは、指導者を判断して選ばないといけないということでしょう。
フレッチャーがニーマンを指導していますが、具体的な指導は作中ほとんどありませんでした。
フレッチャーは矯正と精神論しか言っていません。
自分が求める演奏でなければ、とにかく怒号と暴力、具体的にどうすれば良いかは教えてくれないのです。
生徒の心をへしおり悔しさをバネに練習させ、技術を伸ばすというやり方。
まさに今時でいうなら、パワハラに近いものです。
実際、ニーマンはそれにくらいついて少しは技術向上したものの、最終的には挫折しています。
挫折に関しては、フレッチャーの執拗な暴言、暴力のせいです。
そこには演奏技術を上げることには関わっていませんでした。
プレイヤーとして優れていても、教えるのが下手な人はいます。
ニーマンはその判断がつかないまま、フレッチャーの指導に従ってしまうのです。
本作品では、指導者であるフレッチャーがニーマンを選びましたが、ニーマンもまた指導者を選ぶべきでした。
『セッション』(2014) は実話?原作や元ネタ・モデルとなった人物はいる?

フレッチャー© 2014 - Sony Pictures Classics
『セッション』(2014)は、監督の学生時代の体験談をもとに描かれています。
高校のときにミュージシャンになろうとジャズドラムを学び、そのときに出会った指導者にトラウマがあり、本作品を作るにいたったそうです。
詳しいモデルは明かされていないですが、作中のフレッチャーが作り出す、あのヒリヒリした空気感がとてもリアルだったのは、監督の体験がきっちり脳裏に残っているのが伺えます。
ちなみに、監督は今でこそ本作品で賞をとっているのでいいでしょうが、そのときの体験を悪夢としているので、あまり良い様に思っていないようです。
『セッション』(2014)の楽曲や挿入歌、主題歌を解説

一人で練習ニーマン© 2014 - Sony Pictures Classics
overture
オープニングとエンドロールで流れた曲。
『ラ・ラ・ランド』(2016)などの楽曲を担当したジャスティン・ハーウィッツが作曲した曲です。
オープニングでは、このアップテンポな曲は、これから何が起きるのだろうというわくわく感と、エンドロールではcaravanの余韻を途切れさせない高揚感をかんじさせます。
ピアノとベースのベースラインが目立つ曲で、ドラムメインの本作品とは主旨が違いますが、ベースが耳に残り本作品を代表する曲のひとつでしょう。
Whiplash
ニーマンが初めてフレッチャーのバンドで演奏した曲。
この曲はハンク・レヴィというジャズトランペット奏者が作った曲です。
入って早々フレッチャーに何度も演奏を繰り返しさせられ、バンドメンバーの前で晒された思い出の曲です。
原題と全く同じ単語で、単語の意味同様、まさにニーマンにとっても鞭打ちのように叩かれた曲でしょう。
caravan
この曲はラストシーンでニーマンがフレッチャーにやり返すために叩いた曲です。
デューク・エリントンというトランペット奏者が作曲しました。
ドラムとトランペットの掛け合いがあり、まさに本作品の締め括りを飾る殴り合いを象徴している曲で、曲に合わせたカメラワークも気持ちが良かったです。
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【ネタバレあり】『セッション』(2014)は衝撃のラスト?最後・結末を解説

ラスト叩くニーマン© 2014 - Sony Pictures Classics
ここでは『セッション』(2014)のラストシーンについて解説していきます。
フレッチャーに誘われたジャズフェスの当日。
フレッチャーは、バンドメンバーに対して「ヘマをすれば、職替えするハメに、スカウトは一度見たやつを忘れない」と言いプレッシャーをかけます。
フレッチャーのバンドの出番がきたとき、ニーマンにフレッチャーは近寄り「告げ口をしたのはお前だな、なめるなよ」というのです。
その後、フレッチャーは観客に曲名を発表します。
それは、ニーマンが知らされていない曲で、楽譜すら持っていませんでした。
これはフレッチャーのニーマンに対する復讐だったのです。
ニーマンは、知らない曲をなんとか演奏しますが、もちろんうまくいかずに散々な演奏になってしまいました。
ステージから逃げ出すニーマン、父が心配し抱きしめますが、その瞬間何かを決意した顔になり、ステージに戻ります。
復讐ができて満足げなフレッチャーは、観客に次やる曲はスローな曲だと発表しました。
その瞬間ニーマンが話を突如遮り、アップテンポなキャラバンを叩き始めます。
アンドリューの気迫に押された他の伴奏者は仕方なく、演奏に加わっていき、最後にはフレッチャーまでのその指揮をする流れになりました。
最初は、イライラしていたフレッチャーでしたが、徐々にニーマンのドラムの演奏に興奮し、喜びの表情を浮かべていくのです。
最後、フレッチャーがバンドに誘ったのが、復讐のためだと分かった瞬間には冷や汗が出ました。
この映画はハッピーな映画ではなく、最後まで救いがありません。
物語全体像を想像してニーマンの今後を考えると、ニーマンとフレッチャーは仲直りしないはずで、ニーマンも絶望しかないでしょう。
しかし、それを抜きに考えれば、ラストシーンは誰がなんといっても本作品の最高潮で素晴らしい描写です。
【賛否両論?】『セッション』(2014)の評価・評判

怒鳴るフレッチャー© 2014 - Sony Pictures Classics
『セッション』(2014)の興行収入は4900万ドルです。
評価も非常によく、アカデミー賞5部門受賞を筆頭に全51個も受賞しています。
もはや名作と言えるでしょう。
今回はレビューサイトの良い評価、悪い評価の声から本作品を分析してみます。
面白い、感動、名作だと絶賛する評価
・狂気すぎて面白い
・ラスト9分が手に汗握った
・こんなに集中した映画ははじめて
「つまらない、怖い、嫌い、最低だった」と酷評する評価
・演奏がヘタクソ
・怖くてトラウマになった
良い評価に関しては、監督の意図する内容を汲み取って映画を見ていたためでしょう。
本作品の魅力は演奏もありますが、圧倒的にフレッチャーという狂気的な男に、振り回された青年の行末を描いていることだと思います。
それを最終的には爆発させてラストで消化するからおもしろいのです。
悪い意見を言っている人に関しては、映画を見る角度の違いの問題だと思いました。
もし、この映画に演奏の技術を求めるのであれば、それは構成としては間違いでしょう。
なぜなら、これはタイトルこそセッションと音楽の用語を使っていますが、描いているものフレッチャーの狂気、そしてニーマンのフレッチャーへの仕返し、そのラストの殴り合いです。
その材料となったのが音楽であり、ジャズであっただけです。
そして、なによりニーマンとフレッチャーこの演奏は、あくまで世界で一番良い演奏ではなく、一人のニーマンという演奏家が、偉大になるための過程ですから、うまかったら話になりません。
また、怖くてトラウマになったという人関しては、「ホラー映画をみて怖いからこれは嫌いな映画」と言っているのと同じで、個人の好き嫌いの問題でしょう。
『セッション』(2014)のまとめ
『セッション』(2014)は一人の指導者によって音楽に熱狂し、狂気に満ちていく一人の青年を描いた映画です。
ラストの9分のフレッチャーとニーマンの演奏は、二人の殴り合いと言っても良いそんな迫力ある圧巻のシーンです。
フレッチャーに関しては理不尽さと、サイコ感があるので、人によっては胸糞悪くなったというふうに感じる方もいるかもしれませんが、その分迫力の演技に飲み込まれることは間違いないでしょう。
手に汗握る緊張感のある映画ですが、内容自体は難しくないのでどんな方が見ても楽しめる作品です。
気になった方はぜひご覧になってみてください。
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https://minority-hero.com/cinema_review/FIRST+MAN/3686/
https://minority-hero.com/cinema_review/LALALAND/765/
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