
『マイレージ、マイライフ』(2009)は、リストラ請負人として全米を飛び回る男が、人との関わりを経て人生を見つめ直すヒューマンドラマです。
監督は『フロントランナー』(2018)や『JUNO/ジュノ』(2007)など数々の映画を生んだジェイソン・ライトマン監督。
本作品はゴールデングローブ賞をはじめ、45個もの賞を受賞している名作です。
どうして、これほどまでに評価される作品となったのでしょうか。
本記事では、『マイレージ、マイライフ』(2009)の考察や感想、結末をネタバレを交えながら解説していきます。
目次
『マイレージ、マイライフ』(2009)の作品情報とキャスト
作品情報
原題:Up in the Air
製作年:2009年
製作国:アメリカ
上映時間:109分
ジャンル:ドラマ
監督とキャスト
監督:ジェイソン・ライトマン
代表作:『フロントランナー』(2018)『JUNO/ジュノ』(2007)
出演者:ジョージ・クルーニー/吹替:小山力也(ライアン・ビンガム)
代表作:『オーシャンズ11』(2002)『ゼロ・グラビティ』(2013)
出演者:アナ・ケンドリック/吹替:嶋村侑(ナタリー・キーナー)
代表作:『ピッチ・パーフェクト』(2012)『イントゥ・ザ・ウッズ』(2014)
出演者:ヴェラ・ファーミガ/吹替:深見梨加(アレックス・ゴーラン)
代表作:『フロントランナー』(2018)『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)
『マイレージ、マイライフ』(2009)のあらすじ

ライアン© WireImage.com - Image courtesy
リストラ請負人として全米を飛びまわり働く主人公のライアン。
ライアンの出張回数は年間で322日にも及ぶ。
そんなライアンの楽しみは出張でマイルを貯めることであり、密かに史上で7人目の1000万マイル貯めることを夢にしていた。
しかし、ある日新人のナタリーの提案により、リストラ請負人をテレワークで行うという提案がされ出張ができない危機が訪れる。
猛反対するライアンは上司を説得するために、ナタリーに自分を解雇してみるように言うが、ナタリーはライアンを解雇することができず、テレワークでは限界があると気づく。
上司は次の出張はナタリーを連れて、仕事を教えてこいと言うがナタリーはライアンとは真逆の性格。
しかしライアンはナタリーと働き、意見をぶつけ合うなかで徐々に変化が訪れるのであった。
『マイレージ、マイライフ』(2009)の感想と考察

ライアンとナタリー© WireImage.com - Image courtesy
『マイレージ、マイライフ』(2009)の感想
吹き替えと字幕
『マイレージ、マイライフ』(2009)は字幕と吹き替えの両方があります。
どちらで見るかによって、印象がかなり変わってきました。
ライアンを演じるジョージ・クルーニーは表情の変化が少なく、情報量がほぼありません。
そのため字幕で見るとライアンがなにを考えているかわからない、物静かで趣がある作品だと感じます。
一方吹き替えでは、少し声優の感情表現が入ってくるため、声色により少し落ち着きがないような、間抜けな印象を受けるのです。
私としては字幕の表現の方が、鑑賞者に訴える表現が最大限されているため、無駄な要素を一切排除して映画の考察を楽しめます。
セリフの言い回しも字幕と吹き替えでかなり違うので、両方とも観てみるのもおすすめです。
現代社会の会社の問題が詰め込んである
『マイレージ、マイライフ』(2009)は孤独の哲学を描いている映画ですが、それ以外にも会社に入った新人と先輩のあるあるも描いています。
先輩であるライアンは、新人のナタリーの企画に酷く反対しますが、ライアンはおそらく出張がなくなるかもしれない変化を恐れていただけです。
一方ナタリーは新人で仕事を始めたばかりで、色々なことを改革したがっています。
しかしそこには、現実をみてないからこその理想を描いているだけの甘さがあるのです。
これは、どの会社でもあるのではないでしょうか。
新人は期待ともに理想ばかり求めて自分で変化させたがる、しかし先輩は変化を嫌いそれはできないと突っぱねるのみ、そこには先輩の私欲も含まれています。
どちらが正しいとは言い切れませんが、こうしたサラリーマンならではの問題点も描いて、非常に共感しやすかったです。
『マイレージ、マイライフ』(2009)の考察
主人公はどう行動するのが正解だった?
ライアンはラストシーンでアレックスに家族がいることがわかり、育てていたナタリーも辞めてしまい意気消沈します。
孤独を貫いていたライアンがせっかく一歩前に踏み出したのに、それは裏切られてしまうのです。
ではライアンはどのような選択をしていれば、幸せな人生がおくれたのでしょうか。
おそらくライアンはあのまま失敗の経験をしていて、よかったでしょう。
ライアンにとって最終的に、自分がもともとの唱えていた「人生の荷物を降ろし身軽に生きる」という哲学に戻っている描写があります。
大半の人はライアンが可哀相で切ないと思うかもしれないですが、孤独の立場からするとアレックスとの経験を得て、その哲学は間違いない、より強固なものだったと再確認できたという見方もできるでしょう。
思えば映画が始まった頃のライアンが一番生き生きしていました。
『マイレージ、マイライフ』(2009)は実話?
『マイレージ、マイライフ』(2009)は実話ではありません。
ウォルター・カーンが執筆した同名の小説が元になっていて、脚本はシェルドン・ターナーが執筆しています。
また、本作品で出てくるリストラ請負人という職業は実際にアメリカにある職業です。
しかし、この職業ですが感想をみていると「この仕事の想像ができないため、感情移入しにくかった」という人もいるようです。
もしかしたら本作品は、リストラ請負人の仕事を紐解くことで、より深く映画を楽しめるかもしれません。
アメリカでは、従業員を解雇するのに特に理由もなく解雇することができます。
もちろんそれに対して、裁判などを起こすことは可能です。
逆に日本では不当解雇ができないため、会社都合で簡単に解雇ができないようになっています。
日本にもリストラ請負人は人事コンサルティングという名目で存在するのですが、こうしたことからも一般に知れ渡っていません。
2019年頃から、退職代行という退職を代わりに行うというサービスがありますが、本作品で出てくるリストラ請負人とは別の立場です。
このような背景も含めて鑑賞すると、より映画を楽しむことができるでしょう。
『マイレージ、マイライフ』(2009)はなにを伝えたかった?
「マイレージ、マイライフ」(2009)は主題としてなにを伝えたかったのでしょうか。
ラストシーンでは、ライアンはアレックスに振られ、空港の電光掲示板の前で立ち尽くしていました。
本作品からは、孤独が良いという訴えと、家族や恋人など重荷を背負った方が良いという両方の訴えがあります。
そして最後まで正解は明かされません。
このことから私が考えたのは「正解がないことが正解」ということです。
そもそも人生は主観で楽しむものなので、人によってどのスタイルが正解かは違います。
そして、本作品の登場人物も全員、今の自分に不満もあるし、満足もしていて間違ったことを全員行っていました。
この正解はどこにもなく、ラストシーンのライアンはきっと孤独になったものの、これからもどうすれば良かったのが考え続けるでしょう。
そしてそれが人生というものだと本作品を通じて考えました。
【ネタバレあり】『マイレージ、マイライフ』(2009)の最後は?ラストシーンや結末を解説

ライアンとアレックス© WireImage.com - Image courtesy
『マイレージ、マイライフ』(2009)のラストシーンについて解説していきます。
結婚を渋っていた、妹の旦那に結婚するように説得したライアンは心の変化があり、自身の講演を行っている途中で、アレックスの自宅に向かいます。
しかし、そこで見たのはアレックスには、子供もいて旦那もいる家庭があるということでした。
アレックスにとってライアンは単なる息抜きでしたが、ライアンはその一線を踏み込んでしまったのです。
ライアンはその帰りの飛行機で、夢だった1000万マイルを達成します。
夢にまでみた機長との会話ですが、そこには思い描いていたような喜びはありませんでした。
ライアンは会社に戻り、妹夫婦にマイルを譲り世界1週旅行をプレゼントします。
そのとき上司がはいってきて、ナタリーがリストラした社員が橋で自殺したことを伝えました。
ナタリーはそのショックで仕事を辞めてサンフランシスコに戻り、テレワークはなくなります。
出張ができるはずですが、ライアンは浮かない表情をしていました。
サンフランシスコで面接を受けるナタリーは、ライアンが面接官に紹介状を書いたことを知り、無事採用されました。
失業者たちは自分が辛かったときには、周りに家族などの人がいたので、なんとかなったとコメントします。
ライアンは空港の掲示板の前に立ち、スーツケースを手放しました。
ラストシーンに向けライアンが一歩ずつ踏み出そうとしますが、うまくいきませんでした。
失業者たちは困ったときには周りに家族がいたというシーンの対比として、ライアンが空港でひとり立ち尽くすシーンがありました。
ライアンの哲学は「スーツケースに入りきらない、人生の持ち物は背負わない」です。
最後ライアンがスーツケースを離したのは、これまであった出来事も含め、全ての荷物をおろし、振り出しに戻ったことを意味するのではないでしょうか。
その後、ライアンの語りが入りますが「家族を大事にする人が見る星の中に、一番輝く星には僕がいる」と前向きな文章です。
全体のストーリーをみて、ラストの展開があると不幸な終わりかたかもしれませんが、ライアンの中では気持ちに整理がついたハッピーエンドなんだと思いました。
【レビュー】『マイレージ、マイライフ』(2009)の評価・評判

ライアンと荷物を積めるナタリー© WireImage.com - Image courtesy
『マイレージ、マイライフ』(2009)の興行収入は1.668億ドルです。
ゴールデングローブ賞など含め全45個以上の受賞歴があります。
そんな本作品を、今回はレビューサイトの低評価のレビューと高評価のレビュー、両方から分析しました。
つまらない?低評価のレビュー
・大人な映画で難しかった。
・ライアンの行動が急すぎて、感情移入できなかった。
・なにかを伝えたいようで、なにも伝わらなかった。
映画の構成がわかりやすく伝えるというより、表情が変わらないジョージ・クルーニーの感情を読み取りながら、考えて観るような作品なので、そこに難しさを感じる人がいたみたいです。
そのためラストシーンに繋がる場面で、ライアンがアレックスに会うのに感情移入できないという意見もありました。
また、本作品は映画内で答えを出すというより、この映画を観てどういう答えを見つけるかというのを鑑賞者に委ねています。
それに対して、考察がうまくできなかった人もいるようです。
本作品は、安易にそれぞれの登場人物の感情を鑑賞者に押し付けるのではなく、考えさせるという楽しみを残しています。
そしてそれが本作品の楽しみなのではないでしょうか。
面白い?高評価のレビュー
・自分にとっての幸せをもう一度考えさせてくれる良い映画。
・ジョージ・クルーニーがかっこよかった。
・渋くて静かな映画だった、映画をじっくり楽しめる。
本作品はライアンのような孤独が良いのか、それとも人との関わりを持ち家族作った方が良いのかという疑問を、鑑賞者に投げかけるような作品です。
これは人によって答えは違います。
また、本作品でも明確な答えは出さずどちらの良さ、悪さをバランスよく描いています。
そこに「自分ならどうすれば幸せなのだろうか」ということを考えるきっかけを、得られたという人が多くいました。
『マイレージ、マイライフ』(2009)のまとめ

ライアンとアレックス© WireImage.com - Image courtesy
『マイレージ、マイライフ』(2009)はジョージ・クルーニーの渋い演技によって、自分の人生の幸せをもう一度見直せるような映画です。
完全に答えを鑑賞者に委ねているので、考察が苦手な方や頭を空っぽにしてみたい方にとっては少し難しいかもしれません。
本作品には、自由だけどたまに虚しくなる孤独と、縛られるものは増えるが人と寄り添い生きていくのと対比が描かれています。
いま孤独で辛い人、孤独ではないけれど自由がなくなりモヤモヤしている人と、両方の方におすすめです。
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