
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)は、ギン、ハナ、ミユキの3人のホームレスが捨てられた赤ちゃんの親を探すアニメーション映画です。
監督は今敏。
本作は毎日映画コンクールアニメーション映画賞、Future Film Festival最優秀作品賞など数々の映画賞を受賞しました。
3人のホームレスと赤ちゃんが巻き起こす痛快ストーリー『東京ゴッドファーザーズ』(2003)について、感想・考察、裏話や海外の反応を解説していきます!
【『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の評価】
項目 | 評価 | 点数 |
知名度 | ★★★★☆ | 70点 |
配役/キャスト | ★★★★☆ | 70点 |
ストーリー | ★★★★☆ | 80点 |
物語の抑揚 | ★★★★☆ | 75点 |
ドラマ | ★★★★☆ | 80点 |
キャラクター | ★★★★☆ | 85点 |
目次
- 1 『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の作品情報
- 2 『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の概要
- 3 『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の感想と考察
- 4 『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の登場人物(キャラクター)・キャストを解説
- 5 【なぜ?】『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の伏線や疑問を解説
- 6 『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の最後は? ラストシーンや結末を解説
- 7 『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の裏話や小ネタ・トリビア
- 8 【レビュー】『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の評価・評判
- 9 『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の総合評価:奇跡が起きる温かなストーリー
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の作品情報
製作年 | 2003年 |
原題 | Tokyo Godfathers |
製作国 | 日本 |
上映時間 | 92分 |
ジャンル | アニメ |
監督 | 今敏 |
脚本 | 今敏/信本敬子 |
主要キャスト | 江守徹(ギン)
梅垣義明(ハナ) 岡本綾(ミユキ) こおろぎさとみ(清子) |
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の概要

ミユキ:ⓒSony Pictures Entertainment (Japan) lnc.
ギン、ハナ、ミユキの3人のホームレスは、新宿の公園でホームレス生活を送っていた。
クリスマスの夜、ゴミ捨て場に捨てられていた赤ちゃんを拾った3人。
赤ちゃんに「清子」と名付けたハナは自分で育てようとしたが、ギンとミユキの反対にあう。
3人は清子の親を探し始めることに。
清子のかごに入っていた駅のコインロッカーの鍵でコインロッカーを開けてみると、かばんが入っており、中には清子の親と思われる写真とスナックの名刺が入っていた。
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の感想と考察

ハナ:ⓒSony Pictures Entertainment (Japan) lnc.
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の感想
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)は、3人のホームレスが赤ちゃんを拾ったことで騒動が起きるストーリー。
『パプリカ』(2006)や『PERFECT BLUE パーフェクトブルー』(1998)など、複雑で解釈の難しい今敏監督の作品の中ではエンターテイメント性が高いですし、「家族」を感じさせるストーリーになっているので、誰でも楽しめるような作品になっています。
その分、今敏監督らしい独特な世界観はあまり見られませんが、かと言ってつまらないというわけではありません。
赤ちゃんの親を探しに行った先々で巻き込まれる騒動がうまいことつながっていくストーリー構成はうまくできていますし、キャラクターも立っています。
文句や愚痴を言いながらも、なんだかんだで仲が良いギン、ハナ、ミユキの3人。
本物の家族のようでもありました。
人間は守りたい人がいると強く生きられるのではないかとこの作品を観て思いました。
今敏監督のアニメ映画『PERFECT BLUE パーフェクト ブルー』(1998)の考察、タイトル・ラストの意味・海外の反応の解説はこちら。
https://minority-hero.com/cinema-review/perfect-blue/13743/
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の考察
なぜ『東京ゴッドファーザーズ』(2003)は面白い映画なのでしょうか。
ストーリー構成がよく出来ている他にも、主人公がホームレス(その中の一人は家出の女子高生)という、意外性があったことも一つの要因であると考えられます。
アニメの主人公と言えば、一般人、まともな生活を送っている人物がほとんどではないでしょうか。
しかし本作は、3人のクセのあるホームレスという、それだけでも興味を惹くような仕掛けになっています。
他の作品にはない、つまり独創性があると言えるのではないでしょうか。
本作が面白いと感じる理由は、風変わりな主人公になっているからだと言えます。
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の登場人物(キャラクター)・キャストを解説

ギン、ハナ、ミユキ:ⓒSony Pictures Entertainment (Japan) lnc.
ここでは、『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の登場人物(キャラクター)・キャストを解説していきます。
ギン/声優:江守徹

ギン:ⓒSony Pictures Entertainment (Japan) lnc.
元競輪選手と言っているが、本当は元自転車屋の店主。
ギャンブルによる借金のためホームレスになったが、娘のことを今でも大切に想っている。
声を担当したのは、俳優・タレントの江守徹。
数々のドラマや映画に出演しています。
ハナ/声優:梅垣義明

ハナ:ⓒSony Pictures Entertainment (Japan) lnc.
人情深い性格のオカマのホームレス。
彼氏と死別したことで生活力を失いホームレスとなってしまう。
ゴミ捨て場に捨てられていた赤ちゃんを拾い、「清子」と名付ける。
声を担当したのは、俳優・コメディアンの梅垣義明です。
ミユキ/声優:岡本綾

ミユキ:ⓒSony Pictures Entertainment (Japan) lnc.
家出している女子高生。
父親と喧嘩して家を飛び出し、ギンとハナとホームレス生活するようになる。
声を担当したのは、元女優の岡本綾。
2007年に事務所を退社し、芸能活動を無期限休養しました。
清子/声優:こおろぎさとみ

清子:ⓒSony Pictures Entertainment (Japan) lnc.
ゴミ捨て場に捨てられていたのを拾われた赤ちゃん。
額のホクロが特徴。
拾った日がクリスマスだったため『きよしこの夜』から「清子」と命名される。
声を担当したのは、声優・ナレーターのこおろぎさとみです。
太田/声優:飯塚昭三
坂道で車の下敷きになっていたところを、ギンたち3人に助けられたヤクザの親分。
お礼としてギンたちをパーティーに招待するが、そこで銃撃事件が発生してしまう。
声を担当したのは、声優・俳優・ナレーターの飯塚昭三です。
【なぜ?】『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の伏線や疑問を解説

ギン、ハナ、ミユキ、清子:ⓒSony Pictures Entertainment (Japan) lnc.
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の舞台は?
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の舞台は、タイトル通り東京・新宿です。
「奇跡の子」とはなんなのか?
クリスマスの日に拾われる、ということでイエス・キリストを連想せさ、「奇跡の子」「祝福された子供」であることを印象づかせたと言えます。
清子がいることで、偶然なことや奇跡的なことが起こっていく。
つまりは「奇跡の子」であるわけです。
そうすることで、偶然性、つまり「ご都合主義をいかに、不自然でなく見せるか」に利用しているのです。
墓場のシーンの意味を考察
前半の方、墓場でおむつと粉ミルク、哺乳瓶を発見するシーンがあります。
墓場にこんなセットでお供え物があるのは、かなりの偶然。
このシーンも清子が「奇跡の子」であることを印象づかせる意図があったのではないでしょうか。
「神に愛されている」とハナのセリフにもありました。
銀チャンは宝くじがあたった?
ギンは年末ジャンボ宝くじに当たっていました。
ホームレスの老人からもらっていた袋に一等の宝くじ(2億円)が入っていたのです。
しかし、ギンがそれに気づいたかどうかまでは描かれていませんでした。
もしかしたら、清子を渡してしまったことで奇跡は起きないのかもしれません。
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)で外国人のスペイン語の意味は?
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)で外国人がスペイン語をしゃべっているシーンがあります。
しかし、字幕が出ていないため、何を話しているのか分からない人も多いのではないでしょうか。
ここではスペイン語の意味を紹介します。
Joder! Haz callar a la niña sino gritar no te mataré
うへっ 子どもに向かってどなったりしなさんな あんたのことを殺しやしないよ
Os tendré poco tiempo como レエネス←?
レエネスと同じで私にはそんなに時間がないんだからね
Primero quitale el abrigo!
まずコートをぬいで
Venga, quítatelo!
ほら、ぬいで!
Venga, vamos! Ayúdame! No?
ほらほら、みんな。私を助けて場面かわって
Cómo se llama la niña?
名前はなんていうんだい?お嬢さん
Bueno, pobre niña, no necesita hablar.
かわいそうなお嬢さん、しゃべらなくていいよ
Aunque no lo parezca el padre de la niña.
お嬢さんの父さんに似てないけどね
Es como un niña grande.
でっかい子どもみたいだ
Es mi padre.
私の父さんだEs tu madre?
あんたの母さんかい?
Seguro que serás tan guapa como tu mamá.
あんたはあんたのお母さんみたいにべっぴんになると思うよ
eres tú?
あんたなのかい?
Cómo haz adelgazado?
こんなにやせてしまって、まあ!
Enseñame!
教えて!Qué pasa con esto?
これとなにがあったんだい?
Qué occurió?
なにがあったっていうんだ?
No pasa nada llora.
泣くようなことはなにもなかったよ
Los mayores también necesitamos llorar alguna vez
たいていの人はたまには泣くさ
Le pasa algo?
(彼・彼女・あなた)に何かあったの?
Será la madre o el padre?
父さんか母さんかい?https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1267303487
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)と『パプリカ』『千年女優』の関連性とは?
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)には『パプリカ』(2006)、『千年女優』(2002)の関連性はないと言ってもいいでしょう。
本作は今敏監督らしい独特な世界観はあまり見られません。
現実と虚構(夢)の世界を織り交ぜる複雑な構成の作品が特徴ですが、本作ではそのような特徴はみられず、現実の世界だけでした。
そのため今敏作品の中では分かりやすいストーリーになっています。
『パプリカ』(2006)の詳しい考察や解説が知りたい方はこちら。
https://minority-hero.com/cinema-review/Paprika/12829/
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の原題・タイトルの意味とは?
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)のタイトルは、1948年のアメリカの西部劇映画である『三人の名付親』(3 Godfathers)から着想を得ています。
つまり、名付親(Godfathers)であるギン、ハナ、ミユキが東京を舞台にしていることからこのタイトルにしたのではないでしょうか。
ちなみ当初は、『東京ゴースト』という「ホームレスと自殺した少女の幽霊が出会う」企画だったそうです。
タイトルが示す通り「東京」を舞台にして、東京の断片が感じられる風景を切り取るという狙いがあったとのことです。
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の最後は? ラストシーンや結末を解説

ハナとギン:ⓒSony Pictures Entertainment (Japan) lnc.
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の結末・ラストシーン
清子は無事、本当の親の元へ届けられ、親は「名付け親になって欲しい」とギンたちに会わせてもらえるよう刑事に頼みました。
ギン、ハナ、ミユキのいる病室に清子を抱いた親と刑事が入ってきます。
刑事はミユキの父であり、2人は思いがけない形で久々の再会を果たしました。
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)のその後は?
ギンとハナはホームレスに戻るでしょう。
おそらく、宝くじには気づかないのではないかと思います(清子が離れてしまったので、奇跡は起きない)。
ミユキは父と再会したことで家に戻るのではないでしょうか。
今まで父を避けてきたわけですが、話すきっかけができたので、和解する。
これが最後の奇跡なのではないかと思います。
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の最後の解釈と考察
最後、ミユキと刑事の父が再開するシーンはうまくハマっていました。
劇的ではないですが、小さな偶然(奇跡)がうまく重なったことで、小さいながらもカタルシスを得ることができます。
清子がミユキたちに起こす最後の奇跡なのだろうなと思います。
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の裏話や小ネタ・トリビア

ギン:ⓒSony Pictures Entertainment (Japan) lnc.
電灯がヒットポイントになっている
ギンが複数の若者に襲われるシーンがあります。
そのシーンの背景にビルの電灯(明かり)があるのですが、その明かりがゲームのダメージカウントのようなヒットポイントになっています。
ギンがダメージを受けると、明かりが消え、回復すると、明かりが点いていくので、ぜひ背景に注目して観てください。
戦争モノとホームレスの二案があった
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)は二つの案があったそうです。
一つは『東京ゴースト』という「ホームレスと自殺した少女の幽霊が出会う」ホームレスをモチーフにしたもの。
もう一つは、「太平洋戦争敗戦後、インドネシアの独立戦争に協力した日本兵がいた」という実話をモチーフにした戦争モノ。
実は戦争モノで企画を進めようとしたそうですが、すでに『ムルデカ』(2001)という映画が企画していた戦争モノの内容と酷似していたため、中止。
代わりにもう一つの案であった『東京ゴースト』に決定したという経緯があります。
着想の元となった作品があった?
『東京ゴースト』として作り始めた頃、着想の元となった作品に出会ったそうです。
その作品というのが、白黒の写真集である『東京X』と風景の写真と短編小説が載った『東京遺跡』という本でした。
この2冊から東京の風景の作り方など、色々なヒントをもらったそうです。
【レビュー】『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の評価・評判

ハナと清子:ⓒSony Pictures Entertainment (Japan) lnc.
【つまらない?】低評価のレビュー
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の低評価レビューはどのようになっているのでしょうか。
映画レビューサイトをまとめてみると、
という低評価レビューがありました。
「ストーリー性がない」「ご都合主義」という低評価なレビューが多かったです。
また、今敏作品らしさが出ていないことに不満を覚える声も。
確かに今敏作品らしい独特な世界観が観られない点は少し残念な部分ではありました。
【面白い?】高評価のレビュー
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の高評価レビューはどのようになっているのでしょうか。
映画レビューサイトをまとめてみると、
証をつかんでいく構成が素晴らしいと感じました」
という高評価レビューがありました。
低評価レビューと矛盾しますが、ストーリーや構成に高い評価があります。
観る人によって感覚が違う作品と言えるのかもしれません。
また、「温かくなる」というレビューも多くありました。
日本の映画レビューサイトの点数は5点満点中3.7という高評価に。
全体的に高評価な結果となりました。
海外の反応
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)は、海外でも高い評価を得ました。
スペインの映画祭、シッチェス国際カタルニヤ映画祭では、最優秀アニメーション映画観客賞を受賞。
イタリアのFuture Film Festivalでは、最優秀作品賞を受賞。
アメリカの映画サイトTaste of Cinemaでは「東京を舞台にした映画16本」で12位にランクインし、アメリカの映画サイトThe Playlistでは「21世紀のアニメ映画ベスト50」(21世紀に入って2016年まで)で47位にランクインしています。
『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の総合評価:奇跡が起きる温かなストーリー

清子:ⓒSony Pictures Entertainment (Japan) lnc.
構成や温かいストーリーが魅力的だった『東京ゴッドファーザーズ』(2003)。
ご都合主義という指摘がありますが、それほど気にならないと思います。
むしろその「奇跡」を楽しむ映画なのではないでしょうか。
今敏作品はトラウマになるという人でも本作なら楽しめるはず。
3人のホームレスと赤ちゃんが起こす奇跡をぜひ楽しんでください。
本作の他にも今敏監督の作品を考察・解説しています。
今敏監督のアニメ映画『千年女優』(2002)の考察や海外の反応や元ネタ・舞台を解説はこちら。
https://minority-hero.com/cinema-review/chiyoko-millennium-actress/14245/