
全てのストーリーがパソコンのPC画面(モニター)内だけで行われる『search/サーチ』(2018)。
本作品はアニーシュ・チャガンティ監督のデビュー作ではあるものの、その奇抜な設定としっかりと作り込まれた構成で話題を呼びました。
作中にはたくさんの伏線があり、鑑賞者も推理をしながら楽しめる映画で何度も見たくなる作品です。
本記事では『search/サーチ』(2018)の考察と伏線・結末の解説していきます。
【『search/サーチ』(2018)の評価】
項目 | 評価 | 点数 |
知名度 | ★★★☆☆ | 75点 |
配役/キャスト | ★★★★☆ | 90点 |
ストーリー | ★★★★☆ | 85点 |
物語の抑揚 | ★★★★★ | 95点 |
サスペンス | ★★★★★ | 95点 |
お父さんの娘愛 | ★★★★★ | 100点 |
目次
- 1 『search/サーチ』(2018)の作品情報
- 2 『search/サーチ』(2018)概要
- 3 『search/サーチ』(2018)の見どころを解説
- 4 『search/サーチ』(2018)の原作や元ネタとは?
- 5 『search/サーチ』(2018)の感想と考察
- 6 【なぜ?】『search/サーチ』(2018)の疑問を解説
- 7 『search/サーチ』(2018)の伏線を解説
- 8 『search/サーチ』(2018)の最後は? ラストシーンや結末を解説
- 9 【レビュー】『search/サーチ』(2018)の評価・評判
- 10 『search/サーチ』(2018)の総合評価:PC画面だけで完結する異例のミステリー映画
『search/サーチ』(2018)の作品情報
製作年 | 2018年 |
原題 | Searching |
製作国 | アメリカ |
上映時間 | 102分 |
ジャンル | サスペンス |
監督 | アニーシュ・チャガンティ |
脚本 | アニーシュ・チャガンティ
セブ・オハニアン |
主要キャスト | ジョン・チョー(デビッド・キム )/日本語吹替:浪川大輔
デブラ・メッシング(ローズマリー・ヴィック刑事)/日本語吹替:岡田恵 ミシェル・ラー(マーゴット・キム)/日本語吹替:内山茉莉 ジョセフ・リー(ピーター・キム - ジョセフ・リー)/日本語吹替:寸石和弘 |
『search/サーチ』(2018)概要

デビット© All photos are copyrighted and may be used by press only for the purpose of news or editorial coverage of Sundance Institute pro
妻をなくした主人公のデビットは、年頃の娘マーゴットとPC画面(モニター)だけのやりとりの生活を送っていた。
PC画面(モニター)だけとはいえデビットは、マーゴットのことはよく知っているつもりでいる。
ある日デビットが朝起きると、マーゴットからの不在着信が残っていた。
連絡しても全く応答しないので、時間がたち心配になりデビットは警察に連絡する。
警察からの指示でマーゴットの友達を探り、身辺調査をSNSなどを使用して探っていくデビット。
しかし、マーゴットを調べるにつれて、自分の知らない娘の姿が明らかになっていく。
『search/サーチ』(2018)の見どころを解説

ヴィック刑事© All photos are copyrighted and may be used by press only for the purpose of news or editorial coverage of Sundance Institute pro
鑑賞者も推理が楽しめる数々の伏線
『search/サーチ』(2018)の見どころは数々の伏線にあります。
事件とは直接的には関係ないけど、単語などから連想することでその後の結末がわかったりする仕掛けがしてあるのです。
例えば画面上に出てくるニュースの記事が結末のヒントになっていたり、デビットが撮る写真の中に手がかりが隠れています。
これはあくまでデビットが見つけ出すための手がかりではなく、私たち鑑賞者にむけた手がかりです。
ですから結末がわかった後でも、もう一度見返すことで新たな発見をすることができます。
パソコン上で不自然にアップされるシーンがあったりするのでわかりやすい伏線もありますが、それとは別にTwitterのハッシュタグなど全く気づきにくい伏線もあるので、全画面集中して見るとより作品を楽しめるでしょう。
『search/サーチ』(2018)の原作や元ネタとは?

デビットの弟とデビット© All photos are copyrighted and may be used by press only for the purpose of news or editorial coverage of Sundance Institute pro
『search/サーチ』(2018)の原作と元ネタ
『search/サーチ』(2018)の原作や元となるネタはありません。
完全に映画のみで作られたオリジナルの作品です。
監督兼脚本家のアニーシュ・チャガンティと脚本家のアダム・シドマンの2人が、ストーリー構成を考えています。
アニーシュ・チャガンティは27歳のときに製作していて、映画専門学校に行っていたものの、劇場映画はこの映画がデビュー作となるそうです。
今後の活躍に期待できます。
『search/サーチ』(2018)の感想と考察

母が死んでからの写真© All photos are copyrighted and may be used by press only for the purpose of news or editorial coverage of Sundance Institute pro
『search/サーチ』(2018)の感想
これから『search/サーチ』(2018)の感想を書いていきます。
冒頭デビットはマーゴットの試験結果を励ますために「お前を誇るよ」とメッセージを送り、その後「ママもそう思うはずだ」というメッセージを送ろうとしますが、送信せずに消してしまいます。
しかし事件が終わり、娘がママの話をして欲しいと分かり「ママもそう思うはずだ」と送信するのです。
皮肉にも娘ひどい目に遭わせた事件が、家族の絆を強くしました。
作中、娘を心配しデビットの一生懸命な姿を見ていたからこそ、デビットの愛がマーゴットに伝わらなかったのが少し寂しかったのですが、ラストこの文章を送られてきたあとマーゴットはデビットとの写真をデスクトップに貼るのです。
デビットの全ての苦労が報われたとても良い終わり方でした。
以上『search/サーチ』(2018)の感想でした。
『search/サーチ』(2018)の考察
『search/サーチ』(2018)が革新的である理由、前編PC画面(モニター)である理由
『search/サーチ』(2018)は作品の全てが、パソコンのPC画面(モニター)の中だけで描かれています。
100分近くあるこの映像が全てモニターのみで描かれるので、退屈になりそうですが、FaceTimeやニュース映像などを使うことで、モニターという静的な表現をうまく動的な表現に変換しているのです。
また、カーソルの動きやキーボードのタイピングの消したりする動作によって、その人が今何を考えていたのかという心の部分まで読み取ることができます。
この表現は革新的ではあるものの、物語をモニターで行う理由もちゃんとありました。
それは、家族の絆を表現するためです。
妻が死んでからマーゴットとデビットの間には溝がありました。
それはPCだけでのやり取りで、全てが完結しているという表現からも明らかです。
しかし、物語の終盤では「また今晩な」という初めてメッセージのやり取りではない、外の出来事が描かれました。
つまり、これは家族の関係が事件を通して、修復されたことを意味します。
全編を通してPC画面(モニター)を活用することで、家族の絆を関節的に表現していたのです。
【なぜ?】『search/サーチ』(2018)の疑問を解説

マーゴットのライブ配信© All photos are copyrighted and may be used by press only for the purpose of news or editorial coverage of Sundance Institute pro
娘はなぜ疾走してしまったのか?なぜ殺されなかったのかを解説
ヴィックの刑事の息子は2500万ドルを返すために、マーゴットをつけて湖まできますが、マーゴットはマリファナをやっていました。
ハイになっていたこともあり、ヴィック刑事の息子を見るなり逃げてしまったのです。
その結果、崖から落ちてしまいました。
崖はかなり深く音もしなかったので死んだこととして、マーゴットの安否は確認していません。
また、今回息子はあくまで殺すことが目的ではなく、マーゴットに2500万ドルを返すために近づいただけです。
『search/サーチ』(2018)の真犯人は誰?正体を解説
真犯人は今回の事件の主任を担当したローズマリー・ヴィックでした。
カートフがマーゴットを殺したと言ったので、マーゴットは死亡したことになっていましたが、違和感があったデビットは警察に電話します。
そこでヴィック刑事が今回の事件を、自ら志願して主任になったということを初めて知るのです。
偽の事情聴取の情報を与えられていたとわかったデビットは、別の警察に協力を求めヴィック刑事を捕まえることができました。
ヴィック刑事の犯行の動機は息子にあります。
マーゴットが好きだった息子はマーゴットに近いた際、偶然崖から落としてしまったのです。
息子の犯行を隠すために、事件の主任を立候補して、カートフが殺したように演出していました。
マーゴットが逃亡したように偽造の免許証なども作ったのは、全てヴィック刑事のしたことです。
真犯人の正体、ローズマリー・ヴィックは『ローズマリーの赤ちゃん』にインスパイアされているのかを解説
真犯人のローズマリー・ヴィックですが、2つの作品からインスパイアされて付けられた名前です。
一つは『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)という映画から、悪魔の子ども産んだローズマリーという人物がインスパイアされています。
もう一つは『ザ・シールド』から汚職警官のヴィック・マッキーからインスパイアされていました。
つまり悪魔の子供産んだ汚職警官の母親という人物が、ローズマリー・ヴィックという名前から連想できます。
『search/サーチ』(2018)の伏線を解説

デビットと話すマーゴットの友人© All photos are copyrighted and may be used by press only for the purpose of news or editorial coverage of Sundance Institute pro
本作の結末に繋がる伏線部分をそれぞれ解説していきます。
『search/サーチ』(2018)の伏線①:映画の冒頭に登場したCatfisht「キャットフィッシュ」の意味を解説
冒頭でTwitterの急上昇のハッシュタグでCatfishという言葉があります。
このCatfish要約すると「ナマズ」という意味で、マーゴットが通っていた高校のマスコットも実はナマズです。
これは本作では重要な要素ではありませんが、監督からのメッセージでしょう。
Catfishはネットスラングの言葉で、SNSなどで他の人のフリをしてアカウントを作っている人のことを指します。
今回マーゴットが行方不明になった原因はヴィック刑事の息子です。
息子は他の人になりすましアカウントを作ってマーゴットに近づきました。
『search/サーチ』(2018)の伏線②:デビッドの娘マーゴットの秘密と真相に迫る父
今回娘の誘拐事件に大きく原因にはなっていませんが、マーゴットには薬をやっていたという秘密がありました。
これはデビットの弟が吸っていたものを、使ってしまったのが原因です。
今回、二転三転する要素として、デビットがマーゴットのパソコンを調べることで発覚します。
『search/サーチ』(2018)の伏線③:9日間森をさまよった男が生還した意味を解説
実は冒頭で何気なくデビットが見ていたニュースサイトにも、今回の結末のヒントが隠されています。
冒頭でデビットが見ていたニュースで「9日間、森をさまよった男が生還した」という記事のニュースがありました。
これは実はマーゴットが崖から落ちたが、生存しているという意味が含まれていたのです。
『search/サーチ』(2018)の伏線④:会話にポケモンが登場するのはなぜなのか解説
ポケモンのキャラクターにも今回の謎のヒントが隠されています。
ヴィックの息子が好きなポケモンですが「カクレオン」と言っているのです。
カクレオンとはカメレオンのように、他のものに擬態する能力があるポケモン。
今回マーゴットと絡んでいたアカウントはカクレオンのように擬態していた姿だったという暗示になっていました。
『search/サーチ』(2018)の伏線⑤:弟のピーターはマーゴットにマリファナを渡していた
作品の中でピーターがマーゴットにマリファナを渡していたことがわかりました。
実はピーターがマリファナを吸っているという伏線も登場しています。
デビットとピーターが電話をしているときのシーンで、ピーターは料理をしていますが、そのときに机の上に葉っぱが瓶につめてありました。
そのときはデビットに薬だと疑われ、違うと言っていましたが、あの葉っぱが本物だったということがわかります。
『search/サーチ』(2018)の伏線⑥:カートフの目線に注目
動画に向かってマーゴットを殺したこと自白するカートフですが、目線をみるとカートフが真犯人ではないと気づけます。
カートフが「車とスーツケースを捨てた」と言ったときに、カートフは目線を落としているのです。
これはヴィック刑事に脅されて、原稿を読んでいるということが予想できるシーンになります。
『search/サーチ』(2018)の伏線⑦:捜査している警察官ローズマリー・ヴィックの怪しい行動を解説
ヴィック刑事が真犯人だと怪しいシーンが実は作中いくつも出てきました。
それぞれのシーンについて解説します。
25ドルを募金詐欺で盗んだ息子を擁護
マーゴットを調べたことで、別の顔を知り落ち込んだデビットを慰めるシーンで、ヴィック刑事が息子の犯罪を庇うという事実がありました。
これはヴィック刑事が息子のためなら警察官であろうと、犯罪を庇うという何よりの証拠になっています。
なぜか事件現場が湖だと知っている
マーゴットが湖に行ったとわかりデビットが向かった際に、ヴィック刑事に報告します。
しかし、デビットが一言も湖にいると言っていないのに、ヴィック刑事は「湖にいるのね」と言ったのです。
これはヴィック刑事がマーゴットの居場所を実は知っていたという伏線でした。
不自然に湖の西側を捜索させない
ボランティアに捜索の指示をする際に、すでに湖の西側は警察で捜査しているといっていました。
しかしこれはマーゴットを見つけさせないための、ヴィック刑事の作戦だったのです。
映画中ではカットされただけだと思っていましたが、警察が湖の西側を捜査したシーンなんてどこにもありませんでした。
Facebookのプロフィール
デビットが調べたときに出てきたヴィック刑事のプロフィールですが
「A mother's love for her child is like nothing else in the world」と母親の子供への愛情は深いというニュアンスの言葉が表示されます。
これは息子を庇うためならなんだってするという意志の現れでもあるでしょう。
『search/サーチ』(2018)の伏線⑨:fish_n_chips(フィッシュアンドチップス)の意味・正体を解説
ヴィック刑事の息子がアカウントにしていたこの単語ですが、これも実はCatfishのようにナマズに繋がる言葉でした。
フィッシュアンドチップスの魚は基本的にタラなどの白身魚を使われますが、アメリカの一部地域ではナマズが使用されます。
つまりここでもナマズを連想させる言葉が入っていたのです。
『search/サーチ』(2018)の最後は? ラストシーンや結末を解説

勤務中のデビット© All photos are copyrighted and may be used by press only for the purpose of news or editorial coverage of Sundance Institute pro
『search/サーチ』(2018)の結末・ラストシーン
『search/サーチ』(2018)のラストシーンを解説します。
マーゴットの誘拐したのは、マーゴットの事件の主任を務めていた警官のヴィック刑事でした。
マーゴットに好意があったヴィック刑事の息子によってマーゴットは崖から落ちてしまい、息子を庇ったヴィック刑事が隠蔽したのです。
事実が分かりデビッドはその崖からマーゴットを見つけ引き上げます。
水がない環境なので死んだと思われたマーゴットですが、奇跡的に2日前に嵐が来て雨が降ったので無事生きていました。
『search/サーチ』(2018)の最後の解釈と考察
今回の事件が難航した理由は、ヴィック刑事が息子を庇ったことが理由でしたが、ヴィック刑事が犯人だと気付けるシーンが物語の中盤にありました。
それはマーゴットを調べるにつれ自分の知らない人物みたいだと感じ、落ち込んだデビットを励ますために言った内容です。
ヴィック刑事の息子が自分の親が警察だと言い、偽の募金を募ったときにヴィック刑事は庇ったとデビットに話しました。
この話があったことでデビットもヴィック刑事が真犯人だと気づけたはずです。
リスクのある話をなぜわざわざデビットにしたのかは謎ですが、おそらくこれは自分を信用させるために行ってしまった言葉でしょう。
なぜならこの話をする直前にヴィック刑事は架空の人物に調査したという、初めての嘘をデビットにつくのです。
ヴィック刑事にとってはデビットにヒントを与えてしまった訳ですから誤算だったでしょう。
『search/サーチ』(2018)のその後、現在は?
デビットは事件の前は亡くなった母のことをマーゴットと話しませんでしたが、この事件があったことで娘と母の話もするようになるでしょう。
今まであった微妙な距離感も、今回の事件があったことで縮まると思います。
マーゴット自身も音楽大学に受かり、大好きだったピアノを続けることでしょう。
今回事件の犯人ではなかったものの、薬をすすめた弟とは疎遠になり、デビットの厳しい性格からするともう二度とデビットがあわせないと思います。
【レビュー】『search/サーチ』(2018)の評価・評判

疲れ切っているデビット© All photos are copyrighted and may be used by press only for the purpose of news or editorial coverage of Sundance Institute pro
【つまらない?】低評価のレビュー
映像だけで進む特徴的な演出に対して、退屈さを感じる人がいたようです。
また、娘がいなくなったというストーリーに犯人が分かってしまい、途中からおもしろ味がなくなった人もいました。
しかし個人的には、パソコンの中だけで繰り広げられるという退屈になるリスクが高い演出で、よくここまでハラハラドキドキ感を出せたとむしろ評価すべきだと感じます。
内容も犯人がわかるドキドキ感だけではなく、娘の新たな事実がわかるなどラストに行くまでに小さなスリルがたくさんあり、退屈することはありませんでした。
【面白い?】高評価のレビュー
パソコンの中だけで完結する映画という演出に注目している方が、高評価をしているようです。
また、何回も展開が変わっていく演出に関して、緊張があり飽きずに楽しめたという方が高評価をつけていました。
実際にストーリーも深く練られているので、もしこれがパソコンの中だけではない演出だとしても、十分おもしろいです。
『search/サーチ』(2018)の総合評価:PC画面だけで完結する異例のミステリー映画

弟を監視するデビット© All photos are copyrighted and may be used by press only for the purpose of news or editorial coverage of Sundance Institute pro
PC画面(モニター)だけで最初から最後までストーリーが進んでいく『search/サーチ』(2018)。
斬新な演出ですが企画だけではなく、構成やストーリーも十分に練られていて、最後は予想もしない展開です。
内容はミステリーですが、衝撃のラストまでに緊張感のあるシーンが何回もあるので、退屈せずに楽しむことができます。
ラストもハッピーエンドなのでただのミステリーではなく、心があたたかくなる家族愛も楽しめる作品です。
気になった方は、ぜひご覧になってみてください。