『パプリカ』(2006)は夢に入り込める装置、DCミニをめぐるサイコセラピスト、パプリカの奮闘を描くSFアニメーション映画です。
監督はアニメーション監督である今敏。
本作はポルト国際映画祭Critics' Awardなど数々の映画賞を受賞しました。
夢の中という不思議な世界観を描き出した『パプリカ』(2006)について、感想・考察、原作などを解説していきます!
項目 | 評価 | 点数 |
知名度 | ★★★★★ | 90点 |
配役/キャスト | ★★★★☆ | 80点 |
ストーリー | ★★★★☆ | 80点 |
物語の抑揚 | ★★★★☆ | 85点 |
独特な世界観 | ★★★★★ | 100点 |
イマジネーション | ★★★★★ | 100点 |
目次
『パプリカ』(2006)の作品情報
製作年 | 2006年 |
原題 | パプリカ |
製作国 | 日本 |
上映時間 | 90分 |
ジャンル | アニメ |
監督 | 今敏 |
脚本 | 水上清資/今敏 |
原作 | パプリカ |
主要キャスト | 林原めぐみ(パプリカ/千葉敦子)
江守徹(乾精次郎) 堀勝之祐(島寅太郎) 古谷徹(時田浩作) |
『パプリカ』(2006)の概要
パプリカ(千葉敦子)は、夢を共有する装置DCミニを使って夢の中に入り、サイコセラピストとして活動している。
ある日、財団法人精神医療研究所から、DCミニが盗まれる事件が発生。
所長が何者かによってDCミニで侵入されてしまい、窓から落下して意識を失ってしまう。
千葉敦子と時田浩作が眠っている所長の夢の中を見てみると、派手なパレードが行われていた。
その中の日本人形が研究所で働く氷室の顔と声に変化する。
DCミニを盗んだ犯人は氷室なのか。
敦子、時田、小山内の3人は車で氷室の元へ向かう。
『パプリカ』(2006)の感想と考察
独特な世界観
『パプリカ』(2006)はかなり独特な世界観になっています。
というのも、夢の中に入り込むというのが、物語の根幹であるからです。
この夢の中というのが、言葉で形容しづらいのですが、かなりイマジネーションにあふれていて、不思議な世界。
オープニングから惹きこまれ、今まで観たこともないような映像がどんどん出てきます。
あまりにも不思議な世界なので、一体何が起こっているのか、少々分かりづらい部分はありますが、映像を観るだけでも価値があるでしょう。
現実の世界と夢の世界が合わさる映像は必見!
ぜひ夢の世界を体験してみてください。
サスペンス性も見どころ
『パプリカ』(2006)はサスペンス性も見どころポイントになっています。
夢を共有し、夢の中に入っていける装置DCミニ。
そのDCミニが盗まれたことで、本作は進行していきます。
一体、DCミニを盗んだ犯人は誰なのか、盗んだ目的は何なのか。
それが気になって観てしまうのですが、物語は意外な方向へ転がりだし、黒幕も登場。
ぜひサスペンスな部分にも注目して観てください。
【なぜ?】難解映画『パプリカ』(2006)の疑問を解説
『パプリカ』(2006)はR指定で怖い?
『パプリカ』(2006)はR指定になっています。
R指定になっている理由は、主人公である千葉敦子が全裸になるシーンがあるからだと考えられます。
怖い理由は、日本人形や精神的におかしくなった人が出てくるなど、不気味な点があるからではないでしょうか。
人によるかもしれませんが、それほど怖いとは思いません。
インセプションはパプリカをパクった?
クリストファー・ノーラン監督作品である『インセプション』(2010)は、夢の中に入り込むという点では『パプリカ』(2006)と同じコンセプトになります。
『インセプション』(2010)は『パプリカ』(2006)をパクったのでしょうか。
結論としては、パクりではないでしょう。
クリストファー・ノーランが『インセプション』(2010)の脚本に着手したのは2002年なので、2006年に公開された『パプリカ』(2006)の影響は受けていないと考えられます。
ただ、クリストファー・ノーランは『パプリカ』(2006)にインスピレーションを受けたと公言しているそうです。
バーテンダーの二人組は何者?
劇中で出てくるバーテンダーの二人組は、ネットの中のラジオクラブのバーテンであり、夢の世界の住人だと考えられます。
ちなみにバーテンダーの二人の声優は原作者の筒井康隆と監督の今敏です。
千葉敦子(パプリカ)は二重人格なのか?
千葉敦子は現実世界、パプリカは夢の世界だと考えられます。
二重人格というよりも、分身、一人の千葉敦子と言った方が適切ではないかと思います。
氷室は死んだ?
氷室は死んだのかどうかは正確には分かりません。
重体で意識をなくし、助からないような感じではありましたが。
しかし、治療を受けて寝てはいるので死んではいないと思います。
小山内が理事長と手を組んだ理由を解説
映画では小山内と理事長の関係については、詳しく描かれていません。
2人が手を組んだ理由は理事長の考え(夢の世界の支配)に小山内が賛同したからだと考えられます。
しかし、原作では理事長と小山内には肉体的な関係が。
理事長は若い頃、留学先で同性愛系密教に出会い、傾倒するように。
小山内もその考えに同調して体の関係を持つようになります。
映画では描かれていませんが、小山内と理事長にはそのようなバックグラウンドがあったのです。
『パプリカ』(2006)の原題・タイトルの意味とは?
『パプリカ』は英語で表記すると『Paprika』。
パプリカはカラーピーマンの一種です。
本作で「パプリカ」とは、千葉敦子の夢の中の分身であるのですが、なぜその名前が「パプリカ」なのかは情報がありません。
『パプリカ』(2006)の原作や元ネタとは? 映画版との比較
『パプリカ』(2006)の原作と元ネタ
『パプリカ』(2006)の原作は、SF御三家と言われる筒井康隆が1993年に発表した同名小説です。
小説は映画化だけでなく、1995年に萩原玲二が、2007年に坂井恵理が漫画化。
坂井恵理版は映画の続編を描いたものであり、完全オリジナルストーリーとなっています。
興味がある人は読んでみてはどうでしょうか。
【比較】『パプリカ』(2006)の原作と映画版の違いは?
ここでは『パプリカ』(2006)の原作と映画版の違いを紹介していきます。
・原作で理事長だった島寅太郎は映画で所長になっており、副理事長だった乾精次郎は理事長となっている
・原作で千葉敦子とパプリカの人格は一緒
・原作では千葉敦子と時田浩作は、相思相愛である
・原作では千葉敦子と時田浩作がノーベル賞を受賞し、結婚することが発表される
・原作は性的な描写が多い(千葉敦子は登場人物たちと関係を持つ)
・原作では乾と小山内が恋愛関係に(肉体関係も)ある。
・原作のほうがより現実と夢の世界が分かりづらくなっている
・原作ではグロテスクなシーンがある
・原作では神話に登場する神々が出てきて、古代エジプトのアモン神が重要な役割で出てくる
以上の違いがありました。
原作と映画では大きな違いがあります。
原作はボリュームがあるので、映画では省略、及び、分かりやすくしたのだと考えられます。
映画『パプリカ』(2006)の主題歌や楽曲・サントラを紹介
『パプリカ』(2006)は音楽も独特であり、魅了されます。
楽曲は今敏監督が大ファンだというミュージシャン、平沢進が担当しました。
本作の楽曲を紹介していきます。
1.滴いっぱいの記憶
2.逃げるもの
3.追うもの
4.暗がりの木
5.影
6.回廊の死角
7.予期
8.媒介野
9.Lounge
10.サーカスへようこそ
11.白虎野(パプリカバージョン)
12.パレード(instrumental)
13.パレード
『パプリカ』(2006)の不思議な世界を彩った楽曲、サウンドトラックが発売されているので聴いてみてはどうでしょうか。
『パプリカ』(2006)の最後は? ラストシーンや結末を解説
『パプリカ』(2006)の結末・ラストシーン
『パプリカ』(2006)の最後は、千葉敦子(パプリカ)が巨大化した乾理事長を飲み込み、世界は元に戻ります。
そして、粉川はトラウマを克服。
ネットのラジオクラブのバーに入り、千葉敦子の名字が時田に変わったことを、パプリカからのメッセージで知らされます。
『パプリカ』(2006)の最後の解釈と考察
最後の千葉敦子と乾理事長が巨大化して対峙するシーン、千葉敦子が理事長を飲み込むシーンは最後までイマジネーションあふれる最後であったと思います。
期待を裏切らないラストでした。
また、最後に千葉敦子が時田と結婚したことが分かるのですが、その知らせ方もユニークで良かったです。
【レビュー】『パプリカ』(2006)の評価・評判
【つまらない?】低評価のレビュー
『パプリカ』(2006)にはどのような低評価があるのでしょうか。
映画レビューサイトをまとめてみると、
という低評価レビューがありました。
低評価のレビューは「よく分からない」というのがほとんど。
確かに本作のストーリーや世界観は独特なので、難しいかもしれません。
夢なのか現実なのか、分かりづらい部分はあるかと思います。
【面白い?】高評価のレビュー
『パプリカ』(2006)にはどのような高評価があるのでしょうか。
映画レビューサイトをまとめてみると、
という高評価レビューがありました。
評価されているのは、映像と音楽から作り出される独特な世界観。
ストーリーは難しいかもしれませんが、この独特な世界観を味わってみるだけでも一見の価値はあるかと思います。
日本の映画レビューサイト映画.comの点数は5点満点中3.6という結果に。
独特であるが故に分かりづらさを生んでしまったようです。
しかし、作品としては数々の映画賞を受賞。
アメリカでは興行収入1億円を突破し、大人向けアニメ映画のベスト10において8位にランクインしています。
『パプリカ』(2006)の総合評価:独特な世界観がクセになる!
独特な世界観で魅了した『パプリカ』(2006)。
その不思議な世界にハマってしまいます。
中毒性があり、何度も観てしまうという人も。
難しいという評判はありますが、映像や音楽を体験するだけでもぜひ観ていただきたい作品です。
本作の他にも今敏監督の作品を考察・解説しています。
今敏監督のアニメ映画『PERFECT BLUE パーフェクト ブルー』(1998)の考察、海外の反応の解説はこちら。
https://minority-hero.com/cinema-review/perfect-blue/13743/
今敏監督のアニメ映画『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の考察、舞台・裏話や海外の反応を解説はこちら。
https://minority-hero.com/cinema-review/Tokyo-Godfathers/13754/
今敏監督のアニメ映画『千年女優』(2002)の考察と意味や海外の反応や元ネタ・舞台の解説記事はこちら。
https://minority-hero.com/cinema-review/chiyoko-millennium-actress/14245/
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