
『母なる証明』(2009)は殺人の容疑がかけられてしまった息子の無実の罪を晴らそうとする、母親の無償の愛を描いた韓国のサスペンス映画です。
監督は『パラサイト 半地下の家族』(2019)で世界的に注目を集めることになるポン・ジュノ監督。
本作は青龍賞(韓国の映画賞)で最優秀作品賞を受賞しました。
カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に正式出品され、国際的にも高い評価を得た『母なる証明』(2009)について、あらすじと感想、作品の魅力をネタバレを交えて紹介していきます!
目次
『母なる証明』(2009)の作品情報
作品情報
原題:마더
公開年:2009年
製作国:韓国
上映時間:129分
ジャンル:サスペンス
監督とキャスト
監督:ポン・ジュノ
代表作:『パラサイト 半地下の家族』(2019)『殺人の追憶』(2003)
出演者:キム・ヘジャ/吹替: 谷育子(母)
代表作:『晩秋 』(1981)『母なる証明』(2009)
出演者:ウォンビン/吹替:杉山大(トジュン)
代表作:『ブラザーフッド』(2004)『アジョシ』(2010)
『母なる証明』(2009)のあらすじ

連行されるトジュンを見送る母:ⓒCJ ENTERTAINMENT AND MERCHANDISING
息子のトジュンと母は2人で暮らしていた。
トジュンには悪友のジンテがおり、ひき逃げされそうになったベンツを追いかけて、サイドミラーを壊したり、ゴルフ場で運転手を襲ったりしていた。
そんな悪の友人に連れまわされるトジュンを心配する母。
ある日、スナックで飲んでいたトジュンは、追い出されるようにして店を出る。
その帰り道、少女をナンパしようとしたトジュンであったが、少女に逃げられてしまう。
翌日、少女は死体となって発見され、トジュンは殺人事件の容疑者として逮捕されてしまうのだった……。
『母なる証明』(2009)の感想と考察

母:ⓒCJ ENTERTAINMENT AND MERCHANDISING
母親の極限の愛を描く
『母なる証明』(2009)は殺人容疑をかけられた息子の無実を信じ、疑いを晴らそうと1人で闘う母親を描いた作品です。
とにかく、母親の無償の愛って偉大だと強く感じます。
警察はもちろん、弁護士さえもまともに事件と向き合ってくれない。
被害者の遺族からは息子が犯人だと決めつけられて、あいさつもさせてもらえない。
そんな孤立無援といってもいい状況の中、母は息子のために事件の真相を追っていくわけですが……。
特に終盤にある衝撃的な展開は、母の極限の愛がとても色濃く映ったシーンであったと思います。
母の強さや息子に対する信念を感じつつ、狂気さえも感じる場面でした。
ポン・ジュノ監督は「母親がどこまで息子のために暴走できるか?」ということが作品の核だったとインタビューに答えています。
母親とは何か。
その問いが隠された作品になっています。
怒涛のラスト30分
ラスト30分が『母なる証明』(2009)で一番心が揺さぶられるシーンといっても過言ではないでしょう。
衝撃の展開、どんでん返しが待ち受けています。
全く予期していなかった展開で、ゾワゾワッとした感覚が全身を貫きます。
伏線の回収も見事でポン・ジュノ監督の脚本の上手さを改めて感じました。
また、カメラワークも絶妙でポン・ジュノ監督にしかできない視点の上手さも感じます。
『パラサイト 半地下の家族』(2019)、『殺人の追憶』(2003)でも脚本の巧みさが光っていましたが、本作でもポン・ジュノ監督の見事なストーリーテリングにハマってください!
【ネタバレあり】『母なる証明』(2009)のタイトルの意味を解説

母:ⓒCJ ENTERTAINMENT AND MERCHANDISING
『母なる証明』(2009)のタイトルには、どのような意味が隠されているのでしょうか。
『母なる証明』(2009)の英題は『Mother』。
つまり、母とはどうあるべきか、母とは何か、という問いを込めたタイトルになっているように思います。
母なる証明=無償の愛
と言い換えることもできるのではないでしょうか。
また、主人公の母には名前が出てきません。
それは、トジュンの母という限定した見方よりも、この世に生まれた人なら必ずいる母という存在、母親像として見て欲しかったからなのかもしれません。
【ネタバレあり】『母なる証明』(2009)は実話?

母とトジュン:ⓒCJ ENTERTAINMENT AND MERCHANDISING
『母なる証明』(2009)が実話だと確認はできません。
「今回こそは、女性や母親をしっかりと描きたいと思ったんです」とポン・ジュノ監督はインタビューで答えているので、オリジナル作品でしょう。
ちなみに幻冬舎からノベライズ版が発行されています。
興味がある方は読んでみてはどうでしょうか。
『母なる証明』(2009)の伏線と疑問を解説

母とトジュン:ⓒCJ ENTERTAINMENT AND MERCHANDISING
ダンスシーンで始まるのはなぜ?
『母なる証明』(2009)はかなり異質なオープニングで幕を開けます。
そのオープニングとはキム・ヘジャ演じる母が、切ない音楽に合わせて、だだっ広い野原で虚ろな表情、時に泣きそうになりながら訳の分からないダンスをするシーン。
最初に観た時は「なんだこれ?」とその異質なオープニングに惹きつけられました。
どこかゾクゾクとした奇妙な感覚です。
なぜ、ポン・ジュノ監督はこのようなダンスシーンで始めたのでしょうか。
彼はインタビューでこのように語っています。
映画のオープニングというのは、監督と観客の間で交わされる“約束”。
今回の場合は突然、母親が出てきていきなり踊り出しますよね。キム・ヘジャさんの表情にも狂気がにじみ出てて。
この映画がこの女性のように、常軌を逸していくかもしれないということを、観客に宣戦布告してみたかったんです
なんという発想なのでしょう!
確かに常軌を逸した作品だとオープニングで感じました。
常識にとらわれない奇抜な発想を持つポン・ジュノ監督。
こういった点も鬼才と言われる所以なのでしょう。
犯人はいったいだれ?
『母なる証明』(2009)は息子の無実を証明しようと、真犯人を探していく作品でもあります。
実はその犯人がどんでん返し。
トジュンの他に犯人がいると思って観ていたのですが、実はトジュンこそが殺人事件の犯人でした。
つまり、母は息子の無実を信じて行動していたわけですが、息子は殺人を犯していた張本人だったということです。
トジュンはバカにされて(バカにされると異常反応を起こす)、故意ではありませんが、少女を殺してしまったのでした。
息子が知的障害を抱えたのは農薬が原因?
知的障害を抱えてしまった原因については、映画の中で明確にはされていません。
5歳の時に飲ませた農薬が原因とも考えられるし、生まれつき知的障害を抱えていたということも考えられます。
ちなみに農薬が原因で認知障害、行動障害、神経発達障害の原因となる証拠が出たという研究発表があります。
農薬に使われているものは低量では安全性に問題はないとされているが、大人には全くコリンエステラーゼの失活が検出できない程度の濃度で晒された場合でも、発達中の子供、特に胎児への影響は覿面であることが複数の研究によって検証された。この影響には新生児の異常な原始反射、未就学児童の精神・運動発達障害、小学校児童に対する視覚記憶、作業記憶、認識処理速度、言語理解、知覚推理及びIQの減衰が含まれる。妊婦が農薬に晒されると、胎児へのリスクはさらに跳ね上がり、注意欠陥・多動性障害 (ADHD)や自閉症スペクトラム症候群(ASD)の原因となる。
Guardianより
上記の研究発表から見ると、トジュンの症状と一致しています。
母親の胎内にいた時に農薬の影響を受けたのか、5歳の時に飲ませた農薬に影響を受けたのかは分かりませんが、農薬が原因という可能性は大きいのではないでしょうか。
トジュンの母が涙した理由とは?
トジュンが犯人なのですが、殺人事件は思わぬ形で、ジョンパルという青年による犯罪になってしまいました。
トジュンの母はジョンパルに面会に行き、そこで号泣と言っていいほど泣いてしまうのです。
なぜトジュンの母は泣いてしまったのでしょうか。
トジュンの母はジョンパルに「あなた、両親はいるの?」「お母さんはいないの?」と聞き、ジャンパルが首を振ると泣き出してしまいます。
トジュンの母はジョンパルが冤罪だと分かっているので、「誰もこの子を守ってくれる人がいない」「冤罪を晴らそうとこの子のために闘ってくれる人がいない」と不憫に思い、泣いたのだと思います。
また、誰も守ってくれる人がいない子に罪を押し付けてしまった罪悪感に、自責の念もあったのではないでしょうか。
トジュンの母としても、息子が何よりも大切ですから警察に真実を伝えて牢屋に入れる気はないでしょう。
トジュンの母の涙には、計り知れない重圧があったことがうかがえます。
【ネタバレあり】『母なる証明』(2009)の最後は? ラストシーンや結末を解説

トジュン:ⓒCJ ENTERTAINMENT AND MERCHANDISING
『母なる証明』(2009)の最後は、悪い記憶や病気の元になる心のしこりを消してくれるツボに、トジュンの母が自ら針を打って踊るというラスト。
夕陽に照らされ、バスの中で派手に踊る姿が印象的でした。
このダンスシーンはトジュンの犯行の真実を知り、自分も殺人を犯してしまった後にもあります(オープニングのダンスシーンに繋がっている)。
トジュンの母にとって踊るという行為は、嫌な記憶を消し去る一種の自己催眠のようなものであり、精神を安定させる行為なのかもしれません。
いずれにせよ、トジュンの母にとって一連の事件が記憶から抹消したい悪夢のような出来事であったことは間違いないでしょう。
【レビュー】『母なる証明』(2009)の評価・評判

トジュン:ⓒCJ ENTERTAINMENT AND MERCHANDISING
つまらない? 低評価のレビュー
『母なる証明』(2009)にはどのような低評価があるのでしょうか。
低評価のレビューを見てみると、
・後味が悪く、好きにはなれません
・ちょっと重たかった
という低評価レビューがありました。
後味が悪いということで低評価をつける人が多いようです。
確かに後味が良くはないですが、力のあるストーリーから来るこの後味の悪さこそ、本作の魅力であると思います。
面白い? 高評価のレビュー
『母なる証明』(2009)にはどのような高評価があるのでしょうか。
高評価のレビューを見てみると、
・脚本がとにかく面白い
・純粋にサスペンスとしての完成度が著しく高い
という高評価がありました。
やはりポン・ジュノ監督の脚本(構成力)は評価が高いです。
他にもカメラワークや人間の内面の描き方についても絶賛されていました。
改めてポン・ジュノ監督の才能を感じる一本になっていると思います。
内容は明るいものではないし、ハッピーエンドではないのですが、そんなことは気にならないくらいの圧倒的パワーを感じさせる力作。
日本のレビューサイトの点数が5点満点中3.8という高評価には納得です。
『母なる証明』(2009)のまとめ

母:ⓒCJ ENTERTAINMENT AND MERCHANDISING
巧みなストーリーテリングで母の極限の愛を描いた『母なる証明』(2009)。
母親役のキム・ヘジャの時に狂気すら感じる演技力、トジュン役のウォンビンの純粋さ、時に不気味さもを感じさせる器用な演技力も素晴らしかったです。
この親子の演技力がなければ、これほど重厚感のある作品にはなっていなかったでしょう。
『パラサイト 半地下の家族』(2019)でポン・ジュノ監督を知ったという方も多いと思うので、ぜひ本作も観てください!
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