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日本ではあまり知られていないフランス映画『恐れ慄いて(おそれおののいて)』(2003)。
それもそのはず、日本ではフランス映画祭で上映はされたものの、一般公開にまでは至っていません。
この映画のとても面白い点はベルギー人女性が経験した日本の企業社会、しかも、かなりのブラック企業を描いているという点です。
日本人に受ける「日本は凄い!」的な描き方ではなく、ユーモアを交えながらかなり辛辣に描いています。
外国人が描いた日本というのは、日本人にとってはとても興味深く、考えさせられることが多いものです。
まして日本を描いた外国映画となると両手で数えるくらいしかないのではないでしょうか。
今回はそういった意味で貴重な映画『恐れ慄いて』(2003)の概要、感想、考察等を書いていきます。
項目 | 評価 | 点数 |
知名度 | ★☆☆☆ | 20点 |
配役/キャスト | ★★★★☆ | 80点 |
ストーリー | ★★★☆☆ | 60点 |
物語の抑揚 | ★★☆☆☆ | 40点 |
希少価値 | ★★★★★ | 100点 |
ブラックユーモア | ★★★★★ | 100点 |
目次
『恐れ慄いて』(2003)の作品情報
製作年 | 2003年 |
原題 | Stupeur et Tremblements |
製作国 | フランス、日本 |
上映時間 | 107分 |
ジャンル | ドラマ |
監督 | アラン・コルノー |
脚本 | アラン・コルノー |
原作 | アメリー・ノートン |
主要キャスト | シルヴィー・テステュー(アメリ―) 辻かおり(森吹雪) 諏訪太朗(斎藤) |
『恐れ慄いて』(2003)の概要

日本企業で奮闘するアメリ― ©StudioCanal
幼少期を日本で過ごしたベルギー人のアメリ―は、その後も日本への憧れを抱いていた。
大学卒業後アメリ―は再び日本に住むことを決意し、日本の商社に就職する。
語学能力を買われて採用されたものの、仕事内容は簡単な事務やお茶くみばかり。
それでも日本の企業文化に慣れようと努力するが、意地悪な上司達はアメリ―への嫌がらせをエスカレートさせていく。
日本企業独特のヒエラルキーや陰湿ないじめにアメリ―の精神は摩耗し、日本の企業社会に幻滅するのだった。
『恐れ慄いて』(2003)の感想と考察

アメリ―と吹雪 ©StudioCanal
『恐れ慄いて』(2003))の感想
まず『恐れ慄いて』(2003)を観た人は、ここに描かれている弓元株式会社というのはひどすぎる!と思うでしょう。
斎藤部長もオモチ副社長も気に入らないことがあると怒鳴り散らす。
巨漢のオモチ部長にいたっては、アメリ―の腕をつかんで社内を引き釣り回す。
男性上司は部下の女性に平気でお茶くみをさせ、下の者には不条理な要求を突きつける。
人材を適切に使っておらず、異様に無駄が多い。
悪質ないじめが蔓延っても多くの人は見て見ぬふり。
ちょっと誇張しすぎと思う場面もあるけれど、どれも日本企業の「あるある」ではないでしょうか。
最近になってようやく「ブラック企業」とか「社畜」という言葉が出回るようになりましたが、この映画の舞台である1990年、またそれ以前はこのような会社はまかり通っていた筈です。
人によっては『恐れ慄いて』(2003)は日本を侮辱している映画だ、と思うかもしれません。
しかし日本人としては慣れすぎて見えなくなってしまっている、もしくは見て見ぬふりをしたい日本の異常な企業文化を率直に且つ辛辣に描いている点で、この映画はとても希少価値が高いといえます。
ただ、少し残念に思ったのは映画の舞台がほぼ会社内に限られていること。
初めに京都の石庭と半ばに渋谷の街が出てきますが、映画の殆どが会社内で起きたことに割かれています。
よって見ていて少し息が詰まるというか、もう少し舞台に広がりがあっても良いのではないか、と思いました。
映画全般の問題だと思いますが、時間が限られているため、全てを詰め込むのは難しいのはわかります。
しかし、例えばアメリ―の私生活、会社以外ではどう過ごしていたか、なども描いてたら更に面白かったかもしれません。
アメリ―が会社外の日本の生活を謳歌していたなら、日本の見方ももっとバランスが取れていたかも。
いずれにせよ、もし興味があれば原作となった小説を読むのが良さそうですね。
『恐れ慄いて』(2003)の考察

オモチ副社長 ©StudioCanal
『恐れ慄いて』(2003)で描かれる日本企業にはリアリティーがあります。
その理由の一つとして、日本人のキャストが一般にはあまり知られていない個性派俳優ということが挙げられます。
アメリ―役を演じるシルヴィー・テステュー以外、映画の出演者は全員日本人(もしくはそう見える人)です。
その中でもアメリ―の直属の上司、森吹雪を演じるのが、辻かおり。
辻は大学卒業後、単身渡仏し、ヨーロッパを拠点にモデルと活動をしていました。
パリコレで数々の有名ブランドのモデルを務めた後、『恐れ慄いて』(2003)の監督、アラン・コルノーに見出され映画デビューを果たします。
その後も俳優活動を続け、2012年には自身の10年のパリ生活を描いた『パリジェンヌとタクシーの法則』を出版しています。
美しく完璧に装いつつ、鬼のような形相でアメリ―をいびる冷徹な吹雪を見事に演じました。
吹雪の上司、斎藤部長を演じるのは映画、テレビ、CMなどで活躍する諏訪太朗。
日本の企業によくいそうな、陰気でヒステリー、でも実は気が小さい会社マンをうまく演じています。
スモーレスラーを喚起させるオモチ副社長を演じるのは、バイソン片山。
本業はジャズ・ドラマー、作曲家ですが、その個性を買われて映画やCMにも出演。
体格や声にかなりの迫力がありますが、何をしてもコミカルに見えます。
どの俳優も日本で非常に有名なわけではありませんが、それ故にリアリティーがあり、こんな会社員いるな、と思わせられます。
『畏れ慄いて』(2003)の原作や元ネタとは?
映画『恐れ慄いて』(2003)はベルギー人小説家、アメリ―・ノートンの同名の自伝的小説に基づいています。
ノートンは外交官の父を持ち、幼少期を日本、中国、アメリカ、バングラデシュ、ラオス、ミャンマーと様々な国で過ごしました。
その中でも5歳までを過ごした日本への憧れは強く、成人してから再び日本に住むため、日本の商社に一年間務めます。
その時の強烈な体験を基に書いたのが小説『恐れ慄いて』。
1999年に出版され、名誉あるアカデミー・フランセーズ小説大賞を受賞しました。
小説はフランス語圏でヒットしたのみならず、英訳、日本語訳など様々な言語に訳されています。
ノートンはほぼ毎年新作を発表する多作な作家であり、『恐れ慄いて』の後も日本を題材にした作品を数々出版。
小説を基にしていることもあり、セリフが巧みで、特にアメリ―の独白は文学的です。
アメリ―の日本文化の批判はメタファーなども織り交ぜてありますが、核心をついている鋭いものです。
『畏れ慄いて』(2003)の原題・タイトルの意味とは?

時には頭を下げることも必要? ©StudioCanal
映画『恐れ慄いて(おそれおののいて)』(2003)のタイトルは、日本人が天皇に謁見する際には「恐れ慄いて」物申さなければならない、というアメリ―の見解から来ています。
1年間弓元株式会社で過ごしたアメリ―は会社を離れるとき、別れの挨拶をしに社長室を訪れます。
その際、自分の至らなさを謝罪し、へりくだった態度をとるアメリ―。
その姿はまさに目上の人に対して日本人がとる「恐れ慄いて」いる状態でした。
日本企業で数々の不条理を経験したアメリ―は、最後に幸か不幸か、自然と日本の企業人のように振舞うようになっていたのです。
【なぜ?】『畏れ慄いて』(2003)は日本を批判した作品、侮辱したと言われるのか?

斎藤部長とアメリ― ©StudioCanal
『畏れ慄いて』(2003)の舞台
『恐れ慄いて』(2003)の舞台は主に弓元株式会社内です。
弓元株式会社は架空の会社ですが、原作者のアメリ―が一年間勤務した総合商社をモデルにしています。
大手商社ながら、もしくは大手故なのか、殆どの社員達は規則や上司の言うことには従うものの、自発的に動いたり自分の意見を言ったりはしません。
無駄が多くても決められたことを文句も言わずにコツコツとこなす。
優れた能力や余力があっても自分の決められたこと以外はしない。
同僚がいじめられていても基本無視。
日本のよくある企業の風景だと思いますが、題材にされた商社の人々、特に幹部社員はこのような描写に侮辱されたと感じるかもしれません。
『畏れ慄いて』(2003)の主題!日本企業の問題点を描く
『畏れ慄いて』(2003)の原作者、アメリ―・ノートンは同名の小説に関するインタビューで、この作品は日本で酷評されたといっています。
何も知らないベルギー人が書いたでたらめだ、といった批判もされたといいます。
前述したように、日本人にとっては当たり前になっている会社文化を部外者と思われる西洋人が批判的に描いたことで屈辱を感じた人もいるでしょう。
しかも小説は様々な言語に訳され、世界中で読まれているので、国辱ものだと思う人もいるはずです。
しかしノートンは同時に、描かれた会社がまさに現実通り、という意見も特に日本の一般社員の人々から耳にしたといいます。
実際この小説は邦訳もされており、日本でもかなりの部数が売れました。
ベルギー人が描く日本企業に興味があるのと、アメリ―の熾烈な企業体験に共感するからでしょうか?
『畏れ慄いて』(2003)の最後は? ラストシーンや結末を解説
それでは『畏れ慄いて』(2003)の結末はどうなるのでしょうか?
小さなミスや「空気が読めない」言動が度重なってアメリ―は次第に会社内で居場所を失います。
斎藤部長や直属上司の森吹雪のいびりもひどくなるばかり。
通訳で採用されたのに、語学を全く活かせられない経理の仕事を任せられます。
更には、森が副社長に叱られトイレで泣いている姿を見るという「失態」を犯したため、最も屈辱的な地位に突き落とされるアメリ―。
なんと働いている階の男女トイレを掃除する役を負わされるのです。
あまりの屈辱に精神を病んでも、日本人らしい我慢の精神を貫くため、アメリ―は契約が切れるまで会社を辞めません。
一年の契約が終わり、契約更新しないことを決めたアメリー。
そのことを森に告げると、森は歓喜に満ちた表情をするのでした。
【レビュー】映画『畏れ慄いて』(2003)の評価・評判

アメリ― ©StudioCanal
『恐れ慄いて』(2003)はどのように評価されているのでしょうか?低評価、高評価ともまとめてみたいと思います。
【つまらない?】低評価のレビュー
「保守的な日本企業と外国人の扱い方に心が重くなる」
映画.com:★★★☆☆ 2.0
「原作を読んだが、作者の日本語レベルは初歩の初歩としか思えない。彼女が日本語ができないとしたらデキる女性だったというのは真っ赤な嘘で、本作の内容も誇張しているように感じる。」
Rotten Tomatoes(海外の評価):★★★☆☆ 2.5
日本の低評価レビューの主なものは、映画で描かれている日本企業を見ていてつらい、陰湿ないじめに気分が悪くなる、日本の企業のすべてが弓元株式会社のようだと思いたくない、といったようなものでした。
海外の低評価は登場人物の行動、やりたいことが意味不明、S&Mのようないじめが理解できない、といった日本の企業文化が理解不能、といったところです。
【面白い?】高評価のレビュー
『恐れ慄いて』(2003)の海外の評価は割と高いです。
ロッテン・トマトでは91%の高評価を得ています。
レビューとしては、企業社会を辛辣に、またコミカルに描いているという点がよく挙げられています。
一方日本の評価のサイトでは映画のユーモアを評価する以外にも、日本と西洋の文化の違いを考えるいい機会となった、という意見がいくつか見られました。
『恐れ慄いて』(2003)の総合評価 : 日本企業をコミカルに辛辣に描く
ベルギー人女性から見た日本企業の奇妙な実態を描いた『恐れ慄いて』(2003)。
多少の誇張はあるものの、特に90年代にありがちないびつな日本の企業文化を赤裸々に描いた点で評価できます。
日本と西洋の文化比較という観点からも、また男女の扱いや求められるものが違う、というジェンダーの観点からも学ぶものが多い作品ではないでしょうか?
またフランス人俳優のシルヴィー・テステュー、個性豊かな日本人俳優たちのコミカルかつ迫力の演技も見ものです。
日本では入手しにくい作品ですが、機会があれば是非ご覧になっていただきたい作品です。
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