
『複製された男』(2013)は、ある日、自分と瓜二つの男の存在を知るというカナダ・スペイン合作のサスペンススリラー映画です。
監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ。
本作はカナダ・スクリーン・アワードで最優秀作品賞・監督賞を受賞しました。
ジェイク・ギレンホールの一人二役の熱演にも注目。
もう一人の自分、象徴的な蜘蛛など解釈が難解な作品『複製された男』(2013)について、感想・考察、疑問、意味不明な内容を解説していきます!
項目 | 評価 | 点数 |
知名度 | ★★★☆☆ | 60点 |
配役/キャスト | ★★★★☆ | 70点 |
ストーリー | ★★★☆☆ | 60点 |
物語の抑揚 | ★★★☆☆ | 60点 |
サスペンス性 | ★★★★☆ | 70点 |
難解度 | ★★★★★ | 100点 |
目次
『複製された男』(2013)の作品情報
製作年 | 2013年 |
原題 | Enemy |
製作国 | カナダ・スペイン |
上映時間 | 90分 |
ジャンル | サスペンス |
監督 | ドゥニ・ヴィルヌーヴ |
脚本 | ハビエル・グヨン |
原作 | 複製された男 |
主要キャスト | ジェイク・ギレンホール(アダム/アンソニー)/ 日本語吹替:高橋広樹
メラニー・ロラン(メアリー)/ 日本語吹替:志田有彩 サラ・ガドン(ヘレン)/ 日本語吹替:小林沙苗 イザベラ・ロッセリーニ(キャロライン)/日本語吹替:西宏子 |
『複製された男』(2013)の概要

アダム:Ⓒエンターテインメント・ワン
大学の歴史講師として働くアダム。
ある日、アダムがDVDを観賞した映画の中に、自分と瓜二つの俳優が出演していることを発見する。
俳優の本名はアンソニー。
もう一人の自分(アンソニーという男)の正体は一体誰なのか。
アンソニーの素性を知ろうとしたアダムは、彼の近辺を調査し、やがて居場所を突き止める。
ホテルの一室で対峙したアダムとアンソニー。
二人は顔、声、体格に加え生年月日、さらには胸にある傷までもが同じであることを知るのだった。
『複製された男』(2013)の感想と考察

アダム:Ⓒエンターテインメント・ワン
『複製された男』(2013)の感想
『複製された男』(2013)は、全体を通して緊張感をはらんだサスペンスタッチで描かれる映画。
自分と瓜二つの男が存在していると知ったアダムの運命はどうなるのか、といったところにミステリー性があり、大きな特徴ではあるのですが、ストーリー(内容)は単純ではありません。
極めて難解と言えるでしょう。
例えば、本作では蜘蛛やブルーベリー、交通事故、アダムとアンソニーの関係(もう一人の自分が存在する意味)など、何かを象徴するかのような出来事が描写されます。
「これは一体何が起きているのか?何を意味しているのか?」とまさに脳力が試される映画。
故に観る人によって様々な解釈があり、様々な考察がされる映画なのではないかと思います。
確かに難しい映画ではあるのですが、視点を変えれば考察することが面白く、他人の意見や考えを聞くことで、さらに楽しめる映画とも言えます。
また、ラストは衝撃的かつ全くの予想外。
一体誰があのラストを予期できるでしょうか。
脳力が試されるラストにも注目です!
『複製された男』(2013)の考察
『複製された男』(2013)の内容の考察は後述するとして、ここでは本作がなぜカナダ・スクリーン・アワードで最優秀作品賞・監督賞を受賞するなど、評価されたのかについて考察していきます。
実は本作は、映画レビューサイトの評価は高くありません。
日本の映画レビューサイト映画.comの点数は3.0、Filmarksの点数は3.3、Yahoo!映画の点数は2.8と決して高くはないのです。
観客がつまらないからといって、その作品が駄作というわけではありません。
例えば本作の監督を務めたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の別作品『メッセージ』(2016)も、映画レビューサイトでは高評価というわけではありませんが、SF作品の傑作と称賛され、多くの映画賞を受賞しています。
本作はそれを象徴する作品と言えるでしょう。
まず感想でも書きましたが、内容が極めて難解。
意味不明な点が観る人にとってつまらなさを感じてしまう点なのではないでしょうか。
しかし、逆に言えばその意味不明な点が発想の素晴らしさであったり、常人には考えつかないような表現方法をしていたりと、そういった点が本作が評価された理由であると言えるでしょう。
本作は万人向けではありませんが、芸術的な映画を好む人にとっては面白いのではないかと思います。
『複製された男』(2013)の疑問、意味不明な内容を解説

アダムとアンソニー:Ⓒエンターテインメント・ワン
『複製された男』(2013)の内容解説①:ヘレンとメアリーは何者?そもそも彼女たちは実在する??
『複製された男』(2013)には、ヘレンとメアリーという2人の女性が登場します。
ちなみにヘレンはアンソニーの妻であり、メアリーはアダムの恋人。
そもそも彼女たちは実在するのでしょうか。
ヘレンとメアリーは実在すると言えるでしょう。
ヘレンは妊娠している妻として、メアリーは恋人(浮気相手)として描かれていました。
また別の見方をすれば(別の説をとれば)、メアリーが存在していないという解釈をすることもできます。
メアリーは男の浮気願望を具現化(表現)しただけの女性であると。
つまり、妄想の世界(無意識の中)にある女性で現実世界に実在していない説も考えられます。
『複製された男』(2013)の内容解説②:アダムとアンソニーはドッペルゲンガー?二重人格なのか??
アダムとアンソニーはドッペルゲンガーなのか、二重人格なのか。
まずはアダムとアンソニーの特徴を解説していきます。
アダムの特徴を解説
・大学の歴史講師
・外出もしないし映画も観ない単調な毎日を繰り返している
・メアリーという恋人がいる
・質素なマンションに住んでいる
・愛車はボロ車
・真面目な性格
アンソニーの特徴を解説
・売れない映画俳優
・妊娠6ヵ月のヘレンという妻がいる
・高級マンションに住んでいる
・スズキのバイクに乗っている
・秘密クラブの会員
・強気な性格
アダムとアンソニーの特徴を見ると、2人の性格が正反対であることが分かります。
しかし、2人は顔、声、体格に加え生年月日、さらには胸にある傷までもが同じ。
2人を見分けるポイントとして結婚指輪があり、アンソニーは結婚指輪をはめていて、外すと結婚指輪の痕があります。
では、アダムとアンソニーはドッペルゲンガーなのか、二重人格なのか。
アダムとアンソニーは二重人格であると言えます。
アダムとアンソニーは女性から「抑圧されている」「支配されている」という意識を持っており、そのような意識を二重人格を用いて表現したと考えられます。
映画の冒頭で母親から気ままな暮らしと将来を不安視されていたアダム。
おそらくその頃は売れない役者をやっていた、または大学講師をやり始めた(既婚で大学講師が気ままな暮らしで将来が不安とは思えないから)と推察でき、アンソニーという人格は昔のアダムだったのではないでしょうか。
ヘレンという妻がいながら、メアリーという浮気相手と密会する二重生活を送っていたと考えられます。
しかし、アダムとアンソニーがドッペルゲンガー(クローン・複製された男)だという説も捨てきれません。
なぜならドッペルゲンガー(クローン・複製された男)だったと考えたほうが一番しっくりくるというか、ストーリーとしては一番矛盾なく観られるからです。
実は映画ではカットされていますが、小説では2人が初めて会ったときに出生時間を明かす場面があり、アンソニーはアダムよりも30分早く生まれていたことを知り、「私がオリジナルであなたが複製である」と主張。
原作の英語版では『The Double』のタイトルで出版され、「ドッペルゲンガー」の英訳は「double」。
さらに2人の会話には「クローン人間」という言葉も出てきます。
『複製された男』(2013)の内容解説③:複製された男の時系列とは?物語をそのまま観ていいのか?
『複製された男』(2013)の時系列を簡単に見ていきましょう。
①:歴史講師をしているアダムがアンソニーという瓜二つの自分を発見する
②:アダムがアンソニーの調査を開始
③:アダムとアンソニーが出会う
④:アダムとアンソニーが入れ替わる
⑤:アンソニーとメアリーの乗った車が交通事故を起こす
『複製された男』(2013)の時系列を簡単に整理するとこのようになります。
物語をそのまま観て特に問題はないのではないかと思います。
『複製された男』(2013)の内容解説④:交通事故で何が起きた?
『複製された男』(2013)では、アンソニーとメアリーが乗った車がハイウェイで交通事故に遭うシーンがあります。
この交通事故は何を意味するのでしょうか。
注目すべき点は、割れたフロントガラスが蜘蛛の巣に見えること。
アンソニーがメアリーと交通事故に遭っている時、アダムとヘレンは愛し合っていたのです。
つまり、交通事故=車が壊れた(アンソニーとメアリーが消えた)=浮気が終わった=妻だけを愛する=妻という存在に縛られる
ことを意味しているのではないでしょうか。
別人格が起こした事故なので、実際に起きているとは思えないのですが、翌朝、ラジオでハイウェイでの交通事故のニュースが流れてくるのです。
となると、実際に起きた事故と考えられます。
アンソニーが起こした事故だと断定はできませんが、実際に起きた事故だとするとドッペルゲンガー説(クローン説)がやはり矛盾ないような気も……。
もし同一人物の二重人格なら、アンソニーが消えた時点でアダムも消えてしまうはず。
そう考えると、メアリーは妄想の世界(無意識の中)にある女性で、アンソニーもアダムの無意識の中の人物であると言えます。
『複製された男』(2013)の内容解説⑤:物語に登場するブルーベリーが意味するもの
物語に登場するブルーベリーは母親への愛憎の象徴と言えるでしょう。
アダムは母親から「食べなさい。体にいいわ」とブルーベリーを勧めてきた時や、アンソニーの家の冷蔵庫をのぞいた時、アダムはうんざりした表情をしますが、一方でアンソニーはブルーベリーの買い置きを指示するくらいブルーベリーを好んでいます。
つまり、アダムは母親の支配(コントロール)を疎ましく思っていることが分かります。
それは、冒頭の母親の留守電を聞いたアダムの表情からも明白。
母親を愛している一方で、母親の支配(コントロール)から逃れたいという願望がアンソニーに投影されているのではないでしょうか。
『複製された男』(2013)の内容解説⑥:ラストシーンに登場した大きい蜘蛛の正体は?
物語の端々に登場する蜘蛛の正体や意味とは?
『複製された男』(2013)では、物語の端々に蜘蛛が登場します。
この蜘蛛とは一体何を意味するのでしょうか。
ユングやフロイトの心理学で、蜘蛛は、 “陰湿な女性“の象徴。
心理学的には、「縛り傷つける女性」「束縛する母親」を表します。
蜘蛛が象徴する母親は、「嫉妬深くて、こどもを束縛する母」。
本作に登場する蜘蛛は、「縛り傷つける女性」「束縛する母親」を意味しており、「縛り傷つける女性」はヘレンを、「束縛する母親」はアダムの母を象徴していると考えられます。
足の長い蜘蛛は「束縛する母親」を、足の短い蜘蛛は「縛り傷つける女性」を表現しているのではないでしょうか。
ラストで妻のヘレンが蜘蛛に変わっていたのはなぜ?
ラストでアダムが「僕は出かけるよ」というセリフのあと、ヘレンが蜘蛛に変わっていました。
声はありませんでしたが、もしかしたらヘレンは、「どこに行くの?」「誰と行くの?」「何しに行くの?」なんて聞いていたのかもしれません。
つまり、それは“自由の利かない妻との結婚生活“であり、縛り付けられていること(縛り傷つける女性)を意味します。
アダムが支配と束縛を悟った瞬間を表現するために、蜘蛛に変えたのではないかと思います。
『複製された男』(2013)の内容解説⑦:主人公は病気だった?精神異常者だった可能性
主人公は解離性同一性障害という病気だったという可能性もあります。
解離性同一性障害とは、いわゆる多重人格であり、通常ある人格が覚醒しているとき別人格は意識下で眠っているが、人格同士がそれぞれの人格と向き合っているかのように対話することもあるのだそう。
アダムとアンソニーが対峙したシーンは、解離性同一性障害者が見る世界を表現していたと考えられます。
『複製された男』(2013)の内容解説⑧:ラストシーン・最後の鏡に映っていたのはアダム?アンソニー?
ラストシーンで最後の鏡に映っていたのはアダムだと考えられます。
アンソニーは交通事故で消えてしまいました。
また、2人が統合された新たな人格(3人目の人格)が生まれたという見方もできます。
というのも、アダムはアンソニーが所持していた秘密クラブの鍵を手に入れたことで、新たな浮気願望が生まれたと言えるからです。
アダムの中にアンソニーの側面が出てきた新たな人格と見ることができるのではないでしょうか。
ただし、これは二重人格説をとる場合に限りますが。
『複製された男』(2013)の内容解説⑨:本作が伝えたいこととは何なのか?主題とは?
『複製された男』(2013)が伝えたいこと(主題)は「支配(コントロール)」「束縛」であると考えられます。
冒頭でアダムが支配について講義していますが、本作の内容と無関係であるとは思えません。
本作の内容を具体的に言い表しているシーンであったと言えるでしょう。
私たち人間は生きていればなんらかの支配を受けます。
それは、親であったり、仕事であったり、住まいや欲望、お金……。
本作の主人公は男なので、「性欲」「浮気願望」「結婚」「母親」「妻」からの支配が描かれていました。
人間は多かれ少なかれ何かしらに縛り付けられて生きているのです。
『複製された男』(2013)の原題・タイトルの意味とは?

アダム:Ⓒエンターテインメント・ワン
『複製された男』(2013)の原題・タイトルは『Enemy』。
『Enemy』には「敵」という意味があります。
ちなみに英語圏でのキャッチコピーは 「You can't escape Yourself!」
この「敵」とは何を指し、何を意味するのでしょうか。
英語圏でのキャッチコピー「You can't escape Yourself!」にもあるように「敵」は、自分自身であると考えられます。
己の欲望の支配に負けてしまうのか、それともうまくコントロールして打ち勝つことができるのか。
最大の敵は自分自身であるのです。
『複製された男』(2013)の原作や元ネタとは? 映画版との比較

アダムとヘレン:Ⓒエンターテインメント・ワン
『複製された男』(2013)の原作と元ネタ
『複製された男』(2013)の原作は、ポルトガルのノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの小説『複製された男』(原題はThe Double)です。
ジョゼ・サラマーゴは、1998年にポルトガル語世界初のノーベル文学賞を受賞した作家。
原作の日本語翻訳版は2012年に彩流社より刊行されています。
【比較】『複製された男』(2013)の原作と映画版の違いは?
『複製された男』(2013)の原作と映画版の違いを比較していきます。
・大学で歴史講師をしているアダムだが、原作では中学教員である
・原作では、ヘレンは妊婦ではない
・映画で何度も登場する蜘蛛は、原作では登場せず、映画のオリジナル
・原作の舞台は、国が特定されない人口500万人の巨大都市だが、映画ではカナダ最大の都市トロントになっている
・映画に登場する秘密クラブは、原作には出てこない
本作で象徴的だった蜘蛛が原作では登場しないのは意外でした。
『複製された男』(2013)の最後は? ラストシーンや結末を解説

アダムとメアリー:Ⓒエンターテインメント・ワン
『複製された男』(2013)の結末・ラストシーン
『複製された男』(2013)の結末でアンソニーとメアリーは走行中の車の中で口論となり、ハイウェイで交通事故に遭って消えてしまいます。
一方、アダムはアンソニーの自宅で秘密クラブの鍵を発見。
アダムはヘレンに今夜の予定を尋ね、自分は出かけることを告げます。
しかし、ヘレンの返事はありません。
アダムがヘレンを探しに別の部屋に行くと、そこには巨大な蜘蛛がいるというラストになりました。
『複製された男』(2013)の最後の解釈と考察
『複製された男』(2013)の最後は衝撃的で尚且つ全くの予想外でした。
考察でもふれましたが、もしかしたらヘレンは、「どこに行くの?」「誰と行くの?」「何しに行くの?」なんて聞いていたのかもしれません。
そんな束縛する女を蜘蛛として表現したのではないでしょうか。
最後のアダムの溜息も印象的。
夫を支配(コントロール)しようとする妻に嫌気が差したのだと思います。
結婚生活にはある程度の自由と無関心さが必要ということなのかもしれません。
【レビュー】『複製された男』(2013)の評価・評判

アダムとヘレン:Ⓒエンターテインメント・ワン
【つまらない?】低評価のレビュー
『複製された男』(2013)の低評価はどのようになっているのでしょうか。
映画のレビューサイトをまとめてみると、
という低評価レビューがありました。
「意味不明」「難しい」「途中で飽きた」というレビューが多いです。
確かに本作は難解であり、全体を通して盛り上がりに欠ける点もあるので、つまらなく感じ、途中で飽きてしまうのでしょう。
低評価が多いことからも万人向けではないことが分かります。
【面白い?】高評価のレビュー
『複製された男』(2013)の高評価はどのようになっているのでしょうか。
映画のレビューサイトをまとめてみると、
という高評価レビューがありました。
難解な内容を楽しめる人は高評価になっているようです。
人によっては、謎が解けるまで、自分が納得いくまで何回も観たというレビューも。
本作はストーリーを楽しむというよりも、謎解きや考察を楽しむ映画と言えるでしょう。
日本の映画レビューサイト映画.comの点数は5点満点中3.0という評価になりました。
『複製された男』(2013)の総合評価:難解さを楽しむ映画

アダムとアンソニー:Ⓒエンターテインメント・ワン
瓜二つの自分、蜘蛛の意味など非常に難解だった『複製された男』(2013)。
謎が謎を呼び、考えれば考えるほど訳が分からなくなってきます。
しかし、正解の解釈など存在しませんし、どの説をとったとしても間違いではありません。
強いて言うならば、自分の考えた解釈が正解。
観る人によって様々な解釈があって当然です。
ぜひ何回も観直して、考察しながら楽しみ、多くの人の意見と比べてみてはどうでしょうか。
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