近未来、人類とエイリアンとの死闘を描いた『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)。
ただのSFアクションではなく、タイムループの要素を盛り込んだ画期的なSF作品です。
実戦経験ゼロの将校が、何度も死んでは前日に戻るの繰り返し。
繰り返しの中で、男は屈強な兵士に育ち、正体不明のエイリアンに立ち向かっていく物語。
へっぽこ三枚目役からタフな男前兵士まで見事に演じきったトム・クルーズにも注目です。
本記事は、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)をタイトルに込められた意味や物語のラスト、続編についてネタバレを交えて解説していきます。
目次
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)の作品情報とキャスト
作品情報
原題:Edge of Tomorrow
製作年:2014年
製作国:アメリカ
上映時間:113分
ジャンル:アクション、SF
監督とキャスト
監督:ダグ・リーマン
代表作:『Mr.&Mrs.スミス』(2005)『ボーン・アイデンティティー』(2002)
出演者:トム・クルーズ/吹替:森川智之(ウィリアム)
代表作:『ミッション・インポッシブル』(1996)『レインマン』(1988)
出演者:エミリー・ブラント/吹替:東條加那子(リタ)
代表作:『クワイエット・プレイス』(2018)『ボーダーライン』(2015)
出演者:ビル・パクストン/吹替:大塚芳忠(ファレウ曹長)
代表作:『ナイトクローラー』(2014)『アポロ13』(1995)
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)のあらすじ

二等兵として基地に送られたウィリアム:(C)2014 Warner Bros. Entertainment Inc.
近未来、人類はギタイと呼ばれるエイリアンの侵略を受けていた。
ギタイの一方的な攻撃に、劣勢を強いられていた統合防衛軍。
しかし、リタ・ブラタスキの活躍によって、人類側にようやく勝利がもたらされた頃のこと。
ウィリアム・ケイジ少佐は戦地の取材を依頼されるもこれを拒否。
彼は命令違反で二等兵に降格させられ、兵士として最前線に送られることに。
実戦経験のほとんどないウィリアムは、あっさりと戦死。
死んだはずのウィリアムだったが、彼は悪夢にうなされ目を覚ます。
彼の目の前に広がっていたのは、昨日小隊に入れられる前と同じ光景だった。
【ネタバレあり】『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)の原作は漫画?ラノベ?

屈強な女兵士リタ・ヴラタスキ:(C)2014 Warner Bros. Entertainment Inc.
原作は日本のラノベ!
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)は、原作を基に映画化された作品です。
その原作は、なんと日本のライトノベル(以下、ラノベとします)。
同名の原作ラノベは、桜坂洋が2004年に書いたもの。
小説ではなくラノベと称するのは、原作が集英社スーパーダッシュ文庫から刊行されているため。
この文庫レーベル自体がラノベを取り扱っているからです。
ラノベについての厳密な定義はありません。
ただし、一般的にはオタクのティーンエイジャーを中心読者層とした内容のものを指します。
また、表紙や挿絵にマンガチックなイラストを用いていることも特徴の1つ。
原作はいわゆるタイムループもので、この点もオタク中高生が興味をひかれやすい題材だといえます。
小説やマンガ作品が映画化される話は少なくありません。
しかし、ラノベというジャンルからの、しかもハリウッド映画化というケースは非常に珍しいものでした。
オタク層を中心とするラノベ文化が取り上げられる奇跡。
とはいえ、原作のクオリティをもってすれば、この映画化はなるべくしてなったものだといえます。
漫画化もされている!
本作は日本のラノベを原作とした映画作品だと解説しました。
その他に、実は本作はこの映画化に併せてコミカライズもされているのです。
漫画版も同じく2014年に、集英社の週刊ヤングジャンプに掲載されました。
作画を担当したのは、『DEATH NOTE』や『ヒカルの碁』、『バクマン。』で有名な小畑健。
単行本は全2巻が刊行されています。
描き方による細かな違いはあるものの、原作を最初から最後まで描いた内容です。
このように、映画化から漫画化まで、広範囲にメディアミックス展開された原作ラノベ。
扱う題材の親和性もありつつも、やはり原作ストーリーの秀逸さによるものです。
そして、タイムループという題材は現在、数多くのラノベ作品にみられます。
ラノベに限らず、数々のエンターテインメント作品でも扱われる手法の1つ。
昨今の文芸トレンドに計り知れない影響を与えたことは言うまでもありません。
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)原作との違いを解説
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)は原作と異なる部分が幾つかあります。
まず、登場人物名が洋画バージョンで改められている点。
原作の主人公はキリヤといいますが、本作ではウィリアムになっています。
加えて、キャラクターの設定も変更されている点です。
原作がラノベなのもあり、リタはツンデレキャラでしたが、映画ではムキムキの叩き上げ女ソルジャー。
リタとタイムループの事実を共有するカーター博士も、原作には登場しません。
シャスタというドジっ娘整備兵に代わり、オタク科学者として作り上げられています。
また、本作から萌え要素が排されているのも、大きな変更の1つです。
それ以上に劇的に変更が加えられたのは、ラストの結末が異なっている点。
ラストについては、後の項目で詳述します。
このように、原作及び漫画版とは大きく異なる本作。
それぞれで違った楽しみ方ができるという意味では、たいへん素晴らしいコンテンツだといえます。
興味を持たれた方は、原作や漫画版にも是非触れてみてください。
【ネタバレあり】『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)の意味は?

戦場で戦うウィリアム:(C)2014 Warner Bros. Entertainment Inc.
タイトルを単純に直訳すると、「あなたに必要なのは”Kill”だ」となります。
言い換えて訳せば、「あなたは”Kill”しさえすればよい」という意味。
あえて”Kill”をそのままにしたのには、当然理由があります。
”Kill”という単語には複数の意味があり、本作のタイトルにおいても複数の意味を重ねているのです。
ここでは特に、本作における”Kill”と”You”の意味について、感想を含めた形で解説していきます。
オール・ユー・ニード・イズ・キルの意味:ギタイを”Kill”しさえすればよい
”Kill”の意味として真っ先に思い浮かぶのは、「殺す」という意味でしょう。
この「殺す」という意味が、本作のタイトルに込められた”Kill”の1つです。
本項目では、「あなたは殺しさえすればよい」という解釈で、本作をみていきます。
まず、ここで言う"You”はウィリアムのことを指していると考えるのが自然です。
ではウィリアムが殺すべきものといったら、ギタイのことで間違いありません。
ギタイは人類を絶滅の危機に瀕するまでに追い込んでいる"悪”の存在。
けれども将校でしかもスポークスマンだったウィリアムは、デスクが戦場の"お偉方”。
彼は死線の最先端にいる統合防衛軍を報道するために、ロンドンにやってきました。
しかし、統合防衛軍の大本営にとって、報道などどうでもよいこと。
刃向かったウィリアムは降格処分とともに、一般兵たちの中に押し込まれます。
彼には実践経験がないどころか、現場を避けるために事務方にいました。
血を見るだけでもふらつく姿は、あまりにも情けないもの。
とはいえ戦場に放り込まれた以上、もはや己の命は己で守らなければなりません。
ですが、予想通り彼は物語序盤であっさりとギタイに殺されます。
幸い、殺される瞬間にギタイの血を浴びたおかげでタイムループしたウィリアム。
けれども、彼にとってはここからが地獄。
体験したことを周りに話しても、頭のおかしい奴といって聞く耳を持ってもらえません。
そして何度も戦場で死に、再び同じ場所に戻されるのです。
ただ、ウィリアムもバカではありません。
彼は今までの体験の記憶を基に、試行錯誤しながら行動パターンを作り上げていきます。
そんな中、かつてウィリアム同様タイムループを経験していたリタと遭遇。
次のループで彼はリタと接触し、何度もループしながら戦い方を学んでいくのです。
気が付けば、ウィリアムはすでに立派な兵士でした。
こうしてギタイと戦えるようになった彼は、多くのギタイを倒していきます。
彼がなすべきはギタイを殺し続け、その核であるギタイをせん滅すること。
もう1つ、彼は兵士となるために、かつての己を捨て去らねばなりませんでした。
それは幾多のタイムループで兵士となる過程で失われていきます。
かつての自分を"殺し”、兵士としてギタイを"殺す”こと。
タイトルの「殺す」という意味での”Kill”は、この点を指したものだといえるのです。
はじめは情けなくも、次第にたくしまくなっていくウィリアム。
ループを繰り返すシーンは、作中何回も描かれています。
何度も立ち向かい、強くなっていく姿とひたむきな姿勢は、見ていて思わず力が入るほど。
そして、なんとかループを抜け出してほしいと思わずにはいられなくなってしまいます。
オール・ユー・ニード・イズ・キルの意味:自ら”Kill”し続けさえすればよい
”Kill”のもう1つの意味についてみていきます。
幸い、今までの記憶を引き継いできたウィリアム。
彼の知識はリタやカーター博士と共有され、次々と異なるアプローチを試していきます。
どんなに歩幅が小さくても、確実に一歩を進めていくウィリアムたち。
この積み重ねを経て、人類はようやく2度目の勝利を勝ち獲るのです。
本来、タイムループの能力はギタイに備えられたものでした。
ギタイたちもまた、試行錯誤を重ねて得た経験を糧に、人類を滅ぼす手立てを考えていたのです。
その能力を持った「ギタイ・アルファ」の血を浴びたことで、偶然にも能力を手に入れたウィリアム。
ギタイと同じことを行うことが、勝利のための唯一の方法だったのです。
タイムループ能力なくして、ギタイに勝つ可能性はほぼゼロ。
これらを言い換えればつまり、ウィリアムが死に続けることで、勝利への活路が開けるということ。
死に続けることが真に必要な行動なのです。
“kill”という単語には、その他に「死なせる」という意味もあります。
"You”、すなわちウィリアムに求められるものは、自らを死なせること。
本作のタイトルは、"あなたは死にさえすればよい”とも解釈することができるのです。
ここでいう死は、決して悲観的な意味ではありません。
むしろ、人類が先に進むための希望として、とらえられているのです。
オール・ユー・ニード・イズ・キルの意味:誰にとっての"You”なのか
今までは、”Kill”という単語をどうとらえるかに焦点を当ててきました。
ここでは少し視点を変えて、誰がタイトルの言葉を発しているかに注目していきます。
今までのとらえ方は、人類の勝利のためにウィリアムの能力が求められるというものでした。
つまり、人類の総意としてウィリアムに宛てられたメッセージだといえます。
しかし、本作ではそれ以外の意味も込められているのです。
おびただしい数で押し寄せるギタイには、指揮系統を司る個体がいました。
「ギタイ・オメガ」と呼ばれるその個体は、遠く離れた場所で息をひそめています。
これを叩くため、ウィリアムとリタは戦場を離れ、ヘリコプター入手を画策。
ヘリを手に入れるまではうまくいきますが、どうしてもそこでリタが死んでしまうのです。
何度試しても、その結果はくつがえりませんでした。
と同時に、ウィリアムはリタと共に行動するうち、次第に彼女にひかれていきます。
幾度となく行われてきたタイムループの中で、彼は彼女のプライベートな部分を知るようになりました。
けれども、どうしても乗り越えられない、リタを救えないという現実。
最終的に、ウィリアムは単独で行動し、ギタイ・オメガの本当の居場所を突きとめます。
ギタイの壊滅ももちろんですが、なによりリタを守るため。
この観点からいけば、タイトルは「リタ、君は生きるため、俺を殺してくれればいいんだ」と訳せます。
"You”はリタを指し、発しているのはもちろんウィリアム。
以上の通り、本作のタイトルは誰が誰に対して言ったものかで、複数の意訳が可能です。
この言葉遊びに初めて気づいたときは大変驚かされました。
遊び心たっぷりの、本作らしいタイトルだといえます。
【ネタバレあり】『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)のラスト【続編に期待】

リタに会いに来たウィリアム:(C)2014 Warner Bros. Entertainment Inc.
本作のラストに関する部分は、原作に関する項目で少しだけ触れました。
この項目はいよいよ、ラストについての解説です。
加えて、続編製作の企画が進行している点についても、紹介していきます。
原作と異なるラストを解説
本作のラストは原作と大きく異なります。
それは、ウィリアムがギタイ・オメガを撃退し、リタ含む人類を勝利に導いたこと。
対して原作では、キリヤがリタと決闘し、リタの死を乗り越えて戦いに身を投じていくという結末。
この結末から、タイトルには「あなた(キリヤ)は私(リタ)を殺してでも前へ進め」という意味が見えます。
しかし、映画版のラストは原作通りのラストシーンを描きませんでした。
脚本変更の裏側には、原作部分が映画として通用するかどうかの判断があったと考えられます。
結果、ウィリアムが将校として、今までのようにリタに会いにいくラストになった本作。
この結末は、ウィリアムとリタに救いの要素を与えています。
何百回とタイムループしてきた両者には報われてほしいと思うのも無理からぬこと。
そんな期待の声を予想するかのように、本作は報われるラストを選びました。
物語中盤で見られる、ウィリアムのリタへの想い、少しずつ心を開くリタの描写は丁寧な出来ばえ。
死以上の苦難を乗り越えた両者に、よりドラマ展開を持たせた演出は見る者の心を的確に射抜くのです。
そう考えれば、タイトルの"You”は、複数形の"あなたたち”という意味にもとれます。
"あなたたち”とは、言うまでもなくウィリアムとリタ。
だいぶ意訳ですが、「あなたたちがなすべきは、ギタイを殺して生き抜くことだ」という読み方も可能です。
ラストを変更し、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)を"2人の物語”にしたことは、予想以上の効果をあげたといえます。
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)の続編は企画進行中!
全世界累計興行収入3億7000万ドルの大ヒットとなった『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)。
本作については、ダグ・リーマン監督はじめ、役者陣もかねてより続編製作に意欲的でした。
続編企画は2016年時点で一旦立ち上がっています。
しかし、計画は進まず、この時点で続編製作は立ち消えになったと思われていました。
それから3年後、2019年3月、続編製作の計画がついに再始動したと報じられたのです。
再びダグが監督、トム・クルーズとエミリー・ブラントは新脚本家の脚本次第で続投を決めるとのこと。
今回の企画は、既に脚本を練り上げるプロセスに入っており、続編製作決定は確実とみられます。
なお、2016年の企画時点でダグは続編の内容を
「本作の前日譚となる」
と語っていました。
はたして、今回の企画でも前日譚が続編となるのか、今から大変楽しみです。
また、トムやエミリーは別作品の撮影でスケジュールがパンパンの状況。
今年中にクランクインできれば、近年中に公開されることとなるでしょう。
近いうちに、再びウィリアム達の姿を見ることができるのか、期待に胸踊ります。
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)のまとめ

ウィリアムとリタ:(C)2014 Warner Bros. Entertainment Inc.
日本のオタクカルチャーが"COOL JAPAN”と言われるようになったのも今は昔。
この文化は国内外において、今なお大きな存在感を見せ続けています。
新作映画でも良く見られる過去作品へのリスペクトは、この文化に対するアンサーの1つ。
2004年刊行のラノベが10年越しにハリウッド大作となるだなんて、誰が予想できたことでしょうか。
こうした現象は、現在進行形で加速の一途をたどり続けています。
かつての名作に魅せられてきた世界中のクリエイターたち。
彼らがありったけの愛をぶち込んだ作品は、今や珍しいものではありません。
その先駆けともなった『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)は、日本人としての誇りを感じながら観ることをおすすめします。
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