1971年に公開されて以来、カルト的人気を誇る伝説の映画『時計じかけのオレンジ』(1971)。
公開年には数々のアカデミー賞にノミネートされ、興行成績も良く、世界の様々な国で大ヒットとなりました。
アメリカの人気映画批評サイト、Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)では90%の高評価を得ています。
しかし、容赦ない暴力と露骨な性描写で、映画の舞台となったイギリスを始め、様々な国で30年近く上映禁止となった問題作。
そんな悪名高い名作『時計じかけのオレンジ』(1971)のあらすじと考察、ラストシーンをネタバレありで解説していきます。
目次
『時計じかけのオレンジ』(1971)の作品情報とキャスト
作品情報
原題:A Clockwork Orange
製作年:1971年
製作国:イギリス
上映時間:137分
ジャンル:ドラマ
監督とキャスト
監督:スタンリー・キューブリック
代表作:『2001年宇宙の旅』(1968)『シャイニング』(1980)
出演者:マルコム・マクダウェル(アレックス)
代表作:『if もしも…』(1968)『カリギュラ』(1980)
出演者:パトリック・マギー(被害者の作家)
代表作:『バリー・リンドン』(1975)『テレフォン』(1977)
『時計じかけのオレンジ』(1971)のあらすじ

アレックス・デラージ:©︎Courtesy of Warner Bros. / Park Circus Limited
全体主義的雰囲気漂う近未来のロンドン。
15歳のアレックス・デラージは3人の仲間たちと「ドルーグ」というギャングを組み、夜な夜な暴行、レイプ等の非行に明け暮れていた。
ある夜、猫好き高齢女性宅に侵入したアレックスは誤って女性を殺してしまう。
仲間に裏切られて一人警察に捕まったアレックスは14年の禁固刑になる。
服役して2年後、アレックスは刑期を削減するため、噂に聞いた人格矯正治療「ルドヴィコ治療」の実験台となることを申し出る。
刑務所を訪れた内務大臣に見初められたアレックスはこの治療を受けることとなる。
それは秘密の薬を打たれ、瞼を固定して目を見開いた状態で暴力映像を見続けさせられるという奇妙で残酷な治療だった。
治療が終わったアレックスの身体は暴力に対して強烈な拒否反応を起こすようになる……。
【ネタバレあり】『時計じかけのオレンジ』(1971)を解説

アレックスの両親:©︎Courtesy of Warner Bros. / Park Circus Limited
『時計じかけのオレンジ』(1971)の原作は小説?
『時計じかけのオレンジ』(1971)は、イギリスの小説家、評論家であるアンソニー・バージェスが1962年に発表した同名の小説を原作としています。
原作小説は21章から構成されている作品であり、アメリカ合衆国発売された際に、一部原作者のバージェスの意図が無視され、最終章である第21章が出版ミスで抜け落ちた状態で発売されてしまいました。
21章は、出版社からの指示でバージェスが付け加えた章であり、アレックスが再び暴れ回り、生活に飽きてきたある日のことが描かれます。
内容としては、アレックスが旧友であるピートと再会し、彼には妻がおり、子どもが生まれたという話を聞き、自分も身を固めて暴力から卒業しようと決意するという展開です。
しかし、”暴力は若気の至りだった”ということが結論となるので、この章は削除してしまっても良かったのかもしれません。
元々無かった章を出版社からの指示で加えた挙句、最終的にその章が丸々抜け落ちてしまっていたという、にわかに信じがたい話です。
今も愛される名作! GUでTシャツが作られる
映画ファンに愛され続ける名作である『時計じかけのオレンジ』(1971)は、今も多くの人に身近な存在となっています。
代表的なものが衣料品ブランド「ジーユー(GU)」が『時計じかけのオレンジ』(1971)や『シャイニング』(1980)などをモチーフとして起用したTシャツを発売していることでしょう。
『シャイニング』(1980)も主演のジャック・ニコルソンの顔が印象的なジャケットが映画を観たことがない人にも親しまれています。
そんな作品と肩を並べる名作として、作品を知らない人にとっても”おしゃれ”として浸透していることからも、本作の魅力を窺い知ることができるのです。
【ネタバレあり】『時計じかけのオレンジ』(1971)の感想と考察

コロヴァ・ミルク・バー:©︎Courtesy of Warner Bros. / Park Circus Limited
キッチュなセットデザインと美術
冒頭のコロヴァ・ミルク・バー。
ギャング達が通うこのバーは黒い壁で囲まれ、至るところに白い裸の女性の像が飾られています。
開脚して重なった女性の像はテーブルとして使われ、バーの名物、ドラッグが入った「ミルク・プラス」は女性の乳首から出てきます。
またアレックスと家族が住むアパートは赤やオレンジ、黄色とけばけばしい色の壁紙が貼られ、それとはミスマッチな緑のソファーが置かれていたりします。
アレックスの母親もカラフルなウィッグにミニスカート、赤のロングレザーブーツと「ぶっ飛んだ」格好で登場します。
その他、侵入した高齢女性、猫レディの家は開脚した裸体女性のエロティックな絵で溢れていたり、男性器のオブジェが大切に飾られています。
このようなふざけた、ミスマッチで悪趣味とも取れるセットデザインや美術が全編を通して次々と現れ、観客の視覚を刺激し続けます。
これらのデザインはキューブリック監督とプロダクション・デザイナーのジョン・バリーのアイデアによるものです。
キューブリック監督は撮影ロケーションを綿密に調査し、ロケハンのため何千枚にも及ぶ写真を撮ったそうです。
またプロダクション・デザイナーのジョン・バリーはエリザベス・テイラー主演の『クレオパトラ』(1963)も手がけた敏腕デザイナー。
『時計じかけのオレンジ』(1971)後、その腕を買われて、ジョージ・ルーカス監督の『スター・ウォーズ』(1977)にも起用されます。
バリーは『スター・ウォーズ』(1977)でアカデミー賞最優秀美術賞を獲得しました。
全編に流れるクラシック音楽

アレックスの部屋:©︎Courtesy of Warner Bros. / Park Circus Limited
夜な夜な悪事をはたらくアレックスの意外な趣味がクラシック音楽を聞くこと。
その中でも彼が敬愛しているのがベートーヴェンです。
映画ではベートーヴェンの交響曲第9番二短調を基調にして、その他にもヘンリー・パーセルの『メアリー女王の葬送音楽』やジョアキーノ・ロッシーニの『泥棒かささぎ』序曲、『ウィリアム・テル』序曲などクラシックの名曲が効果的に使われています。
過激な暴力とセックスとクラシック音楽は一見ミスマッチですが、音楽担当のウェンディ・カーロスの編曲の効果もあり、これらクラシック音楽が映画をより斬新にドラマチックに仕立てています。
徹底してふざけた内容
セットデザインのみならず、映画の内容も始めから終わりまで一貫してふざけています。
学校も行かず、夜な夜な意味もなく暴力を繰り広げる少年たち。
女性を性の対象としか見ず、少年たちは欲望のままに暴行します。
描かれているのは全体主義的な社会ですが、秩序はありません。
権力を持っているはずの政府の職員達も滑稽です。
アレックスが服役した刑務所の看守は型通りに動くだけで、無能に見えます。
刑務所の牧師は囚人達には届かない神の言葉を永遠と喋り続けます。
犯罪を軽減する目的で行われる実験的な人格矯正治療では被験者の身体への悪影響や治療後の副作用について考えられていません。
政府の役人は政治の為に人格矯正治療を推し進め、それが失敗すれば被験者のアレックスに媚を売って、何事もなかったかのように振る舞います。
一方反政府勢力のリベラルな人達は、被験者のアレックスを自殺に追いやって政府批判に利用しようとし、政府勢力と同じく、一個人の命を自分達の目的のため利用しようとします。
アレックスはといえば、様々な政治目的に利用され、家族にも見放され、ボロボロになりながらも、悪への衝動を止めることはありません。
救いのない悪に満ちた無秩序な世界がそこには描かれています。
モラルを押し付けず、解釈を強要しない映画
「人格矯正治療は間違っている」、「全体主義的な世界は歪んでいる」、「人間は性善か性悪か」、など様々な論点からこの映画を語ることはできるでしょう。
しかしこの映画はどの問題にも答えを与えず、曖昧さを残したままです。
過激な暴力が描かれていますが、だからといって暴力は悪だ、という主張もせず、また暴力がどこから来るものか、という説明もせず、キャラクターたちや出来事が淡々とありのままに描かれています。
様々な解釈をするりと抜ける軽さがこの映画を魅力あるものにしていると思います。
全てを斜に構えて見て、ブラックジョークで全編を突き通す、製作者のニヒルさが透けて見えます。
【ネタバレあり】『時計じかけのオレンジ』(1971)のラストシーンについて

女の子と:©︎Courtesy of Warner Bros. / Park Circus Limited
『時計じかけのオレンジ』(1971)のラストは、救いの無いように描かれています。
具体的に説明すると、ルドヴィコ療法実施によって更生したアレックスは、暴力性を失い、生ける屍のようになってしまいました。
そんな彼に自殺未遂で低下した政府の支持率の回復のために内務大臣からデモンストレーションを行って欲しいという話が舞い込みます。
これを了承するアレックスは、内務大臣からプレゼントを受け取ることに。
最後はアレックスの暴力性の象徴としても作中で使用されていたクラシック音楽「第九」のなかで、セックスシーンを思い描きながら、邪悪な表情を浮かべるというものです。
これはアレックスに内在していた邪悪な心、暴力性、幼稚な心が蘇ってしまったシーンだといえます。
キューブリック監督は、前述した21章を盛り込む予定は無かったため、このようなラストシーンが完成したのです。
『時計じかけのオレンジ』(1971)の評価

ドルーグ:©︎Courtesy of Warner Bros. / Park Circus Limited
これまでも述べてきた通り、『時計じかけのオレンジ』(1971)は、多くの人から高評価を受ける作品でもあります。
海外映画レビューサイトRotten Tomatoes(ロッテン・トマト)では90%の指示を集めました。
また、日本の映画レビューサイトFilmarksでも5点満点中3.8点と高評価を獲得。
低評価としては、残酷な描写があることや独特の色使いや撮影方法が受け付けないという意見もあるようです。
『時計じかけのオレンジ』(1971)のまとめ

猫レディ © 1971 Warner Bros. Entertainment Inc.
あらゆるタブーを破った『時計じかけのオレンジ』(1971)。
公開当時は批評も分かれ、絶賛する声と、その過激な内容を問題視する意見に分かれました。
イギリスでは公開後に起きた少年の殺人事件が、この映画に影響を受けたものだと判断され、キューブリック監督の所には脅迫状が届くようになります。
またカトリック団体はこの映画はモラルに反しているとし、カトリック教徒に視聴することを禁じました。
家族への影響を恐れた監督は、映画の上映禁止を要請します。
よってイギリスをはじめ、世界中の様々な国でこの映画は最近までお蔵入りとなりました。
そのような問題作ですが、映画は芸術的に秀でており、50年近くの年月を経た後も新鮮に映ります。
セットデザインや美術の巧妙さには唸らずを得ず、衝撃的な内容は映画を見終わった後もいつまでも記憶に残ります。
身の危険を冒してまで、また批判を恐れずにこの映画を製作したキューブリック監督、スタッフの人々に敬意を表さざるをえません。
キューブリック監督のファンであっても、なくても一見の価値ありの作品です。
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