今やハリウッドで確固たる地位を確立したクリストファー・ノーラン監督の初期作品が『メメント』(2000)です。
『メメント』(2000)は、その難解なつくりと斬新な時間の見せ方で大きな話題を呼びました。
ノーラン監督の『メメント』(2000)以降の作品は「記憶」について言及した作品が多いです。
『メメント』(2000)は「記憶」について探求するノーランの作家性を決定づける大切な作品であり、ノーラン作品を語る上で避けては通れない作品。
難解映画として名高い『メメント』(2000)についてご紹介していきます。
目次
作品情報とキャスト
作品情報
原題:memento
製作年:2000年
製作国:アメリカ
上映時間:113分
ジャンル:サスペンス
監督とキャスト
監督:クリストファー・ノーラン
代表作:『ダークナイト』(2008)、『ダンケルク』(2017)
出演:ガイ・ピアース/吹替:小山力也ほか(レナード・シェルビー)
代表作:『L.A.コンフィデンシャル』(1997)、『タイムマシン』(2002)
出演:キャリー=アン・モス/吹替:塩田朋子ほか(ナタリー)
代表作:『マトリックス』(1999)、『ポンペイ』(2014)
『メメント』(2000)のあらすじ

写真を見せるレナード©Summit Entertainment
記憶が10分しか持たない記憶障害である前向性健忘症のレナードは、記憶障害のきっかけであり妻を殺した犯人ジョン・Gという男を追っている。
10分しか記憶の持たないレニーはポラロイドカメラで撮った写真と自らの体に入れた刺青を手がかりに犯人に迫って行く。
『メメント』(2000)はカラーで描かれるシーンは時間軸が逆に進行していき、モノクロで描かれるシーンは順に進行していく。
映画の序盤でレニーはテディーを殺害するのだが、次のシーンではテディがまた登場する。
カラーのシーンが進むごとに時間は逆行し、テディ殺害に至る経緯が明かされていく。
メメントの意味とは?

テディとレナード© 2001 - IFC Films
メメントという単語は、そもそもどういう意味なのかというとラテン語が語源になっています。
「メメント」という言葉は、ラテン語の「メメント・モリ」という「死を忘るなかれ」という警句から引いており、一般に「覚えとけ」や「忘れるな」という意味を持つ言葉です。
中世のヨーロッパでこの言葉は「今を生きろ」という意味合いで使われていました。
10分しか記憶を維持できないレナードはまさに「今を生きろ」を体現した存在であり、過去にも未来にも生きていません。
その意味でレナードは映画のタイトル通りの存在であります。
『メメント』(2000)は意味不明? 内容を徹底解説!

テディとレナード©Summit Entertainment
『メメント』(2000)は特殊な構造の映画となっており、普通の映画のように時間軸が順に進んでいきません。
正確にいえばカラーのシーンは時間軸が逆に進んでいき、カラーのシーンの間に挿入されるモノクロのシーンは時間軸が順になっています。
映画序盤でレナードが殺害したテディが次のシーンでまた登場するので、違和感を抱くのですが、映画が進んで行くと、この独特な構成も次第に理解できます。
『メメント』(2000)の解説①:前向性健忘
『メメント』(2000)の冒頭のシーンでポラロイドカメラで撮った写真の色が抜けていき、発射された銃弾が銃に戻っていく逆再生のカットがあるのですが、このカットは主人公のレナードの記憶が薄れていくことを暗示しています。
主人公のレナードは前向性健忘症という記憶が10分しか持たない記憶障害。
ここで疑問なのは、主人公が前向性健忘症であるにもかかわらず、自身が前向性健忘症であると認識していることです。
多くの方が疑問に思うでしょうが、前向性健忘症の患者は自身が記憶に難があることを無意識に体で覚えているそうなので、自身が前向性健忘症であることはしっかりと認識しているのです。
そんな前向性健忘症のレナードの描かれ方は決してシリアスにではなくコミカルに描かれています。
『メメント』(2000)では一貫してレナードを滑稽な存在として描かれているのです。
レナードは走っている途中で、なぜ自分が走っているかを忘れてしまうのですが、いまだかつてこんな主人公がいたでしょうか。
安いカートゥンアニメのギャグキャラでもこんな登場人物はいません。
『メメント』(2000)の最終盤で明かされるようにレナードは自分で犯人をでっち上げて、何回も殺人を犯しています。
レナードはクロースアップで見ても滑稽に描かれており、物語最終盤で明かされたようにロングショットで見ても滑稽なのです。
『メメント』(2000)の解説②:刺青・ポラロイド
レナードは犯人のジョン・Gへの手がかりを絶対に紛失しないために、手がかりを刺青にして自分の体に刻んでいます。
文字情報だけでは不十分なのでポラロイドカメラで撮った写真も、犯人を見つけるために活用しています。
写真には説明書きが添えられており、テディの写真には「彼の嘘に騙されるな」と。
このテディの写真の文言が『メメント』(2000)を観る視聴者を惑わすのです。
『メメント』(2000)の解説③:犯人に答えはない
『メメント』(2000)の結末・ラストについては、ネットなどで様々な解釈がなされています。
なかにはレナードは植物人間で『メメント』(2000)で描かれる話はレナードの夢だというとんでもない解釈も。
しかし、『メメント』(2000)は明確な答えがない映画なのです。
それもそのはずで、ノーラン監督はいかようにも解釈できるように、あえて犯人をしっかりと描きませんでした。
その証左として犯人の顔は劇中で一度も出てきません。
テディは物語最終盤で、レナードはすでに犯人を殺害し復讐を終えたと告白する。
『メメント』(2000)のオーディオコメンタリーでノーラン監督は、視聴者がこの告白を信じるのも良し、信じないも良しと語っています。
テディの告白をそのまま信じるのが、最も矛盾がなく理屈の通った『メメント』(2000)の解釈なのですが、多くの視聴者は納得しません。
それはなぜなのか? ノーラン監督は、写真に書かれた「彼の嘘に騙されるな」という文言を劇中でなんども見せられるからだと語っています。
「彼の嘘に騙されるな」という文言を視聴者は何度も見せられることで刷り込みが生まれてしまったのです。
ノーラン監督は意図的に視聴者が何も信じられないように仕向けています。
『メメント』(2000)内容を考察

ノーラン監督とキャスト©Summit Entertainment
『メメント』(2000)はその映画としての斬新な構造ばかりが注目されがちなのですが、記憶と真実について深く言及した作品でもあります。
ノーラン監督は、『メメント』(2000)の後に『ダークナイト』(2008)、「インセプション」(2010)という映画を制作。
『ダークナイト』(2008)も「インセプション」(2010)も『メメント』(2000)と共通する部分が多い映画です。
監督が同じなのだから当たり前といえばそうなのですが、ノーラン監督は自身の映画で記憶と真実について常に言及しています。
「インセプション」(2010)で描かれるのは偽の記憶を植え付ける犯罪集団。
「インセプション」(2010)は物理的に脳内の記憶を改竄していましたが、SFの世界でなく現実の世界でも人の記憶というものは不安定で、思い出を記憶違いすることはよくあります。
友達と昔話をしていて、内容が同じでないことなどよくあることです。
レナードのように記憶障害でなくても、人の記憶というものは不確かなもの。
「インセプション」(2010)は記憶の不確実さを描いた作品でした。
『ダークナイト』(2008)で描かれるジョーカーが自身の顔の傷の話をするのですが、傷の話をするたびに、傷を負った理由が変わっていきます。
ジョーカーの話は全く信用できません、どの理由が真実なのか確かめようもありません。
人が話すことがどこまで本当なのか、『ダークナイト』(2008)はこのことにも言及しています。
『メメント』(2000)は、「インセプション」(2010)と『ダークナイト』(2008)で扱われた記憶と真実について扱った作品といえるでしょう。
レナードの記憶は信用できるのか、テディの告白は真実なのか?
『メメント』(2000)で描かれるすべてのことは信用に足らないのです。
『メメント』(2000)後味の悪いエンディング? ラストを解説!

復讐を果たしたレナードの写真©Summit Entertainment
『メメント』(2000)のエンディング・ラストシーンは時系列でいうと劇中では最初になります。
レナードは、妻を殺した犯人とはなんの関係もないドラッグ・ディーラーを殺し、そしてテディを新たな標的にして映画は終了。
映画のラストシーンから分かるようにレナードは映画の最初から最後まで、自分ででっち上げた犯人を追っていたのです。
劇中では描かれていませんが、レナードはすでに復讐を遂げていたのですが、そのことはもちろん忘れてしまい、延々と新たな犯人を作り上げては追っていたということになります。
ここで生まれる疑問が、なぜレナードはそんなことを繰り返すのか、復讐した事実を受け入れないのかということ。
レナードがもし、復讐した相手の写真をを手元に残し「復讐は完了した」と書き添えたら、彼の存在意義はなくなってしまいます。
レナードの記憶障害は心の病気の可能性も否定できず、外傷でない可能性もあります。
妻をインシュリン注射の過剰摂取で殺してしまったという事実から逃れたいために、サミー・ジェンキンスの話を作り上げました。
自分に都合の悪いことは書き換えてしまうのです。
ここでレナードへの疑念が深まります。
- そもそも復讐すべき相手などいるのか
- 妻を殺した奴などいるのか
レナードの記憶の改竄からもこのように考えてしまいます。
レナードは復讐を完了してしまうことで、封印していた「真実」が記憶の中から掘り起こされるのを恐れて、延々と復讐を繰り返すのです。
『メメント』(2000)の主題

映画冒頭の写真©Summit Entertainment
『メメント』(2000)の主題は記憶の不確実さと人間の逃避行動です。
レナードはテディの告白を信じようとはしませんでした。
人は自分が信じたいものを信じ、信じるために記憶さえもでっちあげてしまいます。
歴史認識の問題などがまさにそうで、自国や自分に都合の良いように記録も記憶もでっちあげています。
「真実はいつも1つ」と某アニメでは語られます。
神の視点に立てばそうですが、人と人の間ではそうではないようです。
真実は自分にとって都合の良いように歪められてしまうとも解釈できるように『メメント』(2000)では描かれています。
『メメント』(2000)のまとめ

手がかりを記録する刺青©Summit Entertainment
『メメント』(2000)は難解映画の代表格としていまなお君臨し続けています。
なぜ『メメント』(2000)は難解映画というカテゴリーにはめ込まれてしまったのか。
それは『メメント』(2000)を真面目に解釈しようとしすぎるからなのではないでしょうか。
過去に体験したことについて深く考えても、それは本当に確かに起こったことなのでしょうか。
確かめようもないことに時間を割くことはありません。
もし、そのことについて深く探求しようとしたらレナードのように記憶の迷宮に迷い込む危険性すらあります。
『メメント』(2000)は記憶の不確実さと恐ろしさを描いた作品です。
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