『プーと大人になった僕』(2018)は、誰もが知る『くまのプーさん』を原作とした作品です。
クリストファー・ロビンが大人になってからの話を描いた、スピンオフ作品とも言えます。
本作の監督は、スパイアクションからパンデミックまで手掛けるマーク・フォースター。
大人のクリストファー・ロビン役はユアン・マクレガーが務めました。
2019年第91回アカデミー賞で視覚効果賞にノミネートされるほどのぬいぐるみCG技術も要注目。
本記事は、本作の登場人物や吹替キャスト、ラストについてネタバレと考察を交えて解説していきます。
目次
『プーと大人になった僕』(2018)の作品情報とキャスト
作品情報
原題:Christopher Robin
製作年:2018年
製作国:アメリカ
上映時間:104分
ジャンル:アニメ、ファンタジー、ドラマ
監督とキャスト
監督:マーク・フォースター
代表作:『ワールド・ウォーZ』(2013)『007/慰めの報酬』(2008)
出演者:ユアン・マクレガー/吹替:堺雅人(クリストファー・ロビン)
代表作:『スターウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999)『トレインスポッティング』(1996)
出演者:ジム・カミングス/吹替:かぬか光明(プー)
代表作:『シュレック』(2001)『ライオン・キング』(1994)
出演者:ヘイリー・アトウェル/吹替:園崎未恵(イヴリン・ロビン)
代表作:『アントマン』(2015)『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』(2011)
『プーと大人になった僕』(2018)のあらすじ

再会を果たしたクリストファー・ロビンとプー:© 2018 Disney Enterprises Inc. All Rights Reserved.
クリストファーは、100エーカーの森の住人達と仲良し。
毎日毎日、彼はプー達と遊んで暮らしていた。
しかしあるとき、クリストファーは寄宿学校に入るため、彼らに別れを告げることに。
それから幾年もの月日が流れ、クリストファーは立派な青年となっていた。
彼はイヴリンと出会い、娘マデリンを授かって父親となるも、第2次大戦中は兵士として戦地へ。
帰還後は旅行カバン商社に勤め、忙しい日々を送っていた。
あるとき、クリストファーは理不尽な上司に会社の経費削減案の作成を命じられる。
休日返上で働かざるを得なくなった彼には、週末に家族と出かける約束があった。
仕事に追われ、妻や娘との関係がギクシャクしていた中でのこの仕打ち。
結局イヴリン達は2人で出かけ、ひとり打ちひしがれるクリストファー。
そこに突然現れたのは、かつての友であるプーの姿だった。
『プーと大人になった僕』(2018)の登場人物と吹替声優を紹介

100エーカーの森の住人達:© 2018 Disney Enterprises Inc. All Rights Reserved.
『プーと大人になった僕』(2018)の登場人物
ロビン家
・クリストファー・ロビン(吹替:堺雅人)
本作の主人公。
かつて100エーカーの森でプー達と遊んでいたクリストファー・ロビンが、大人になった姿。
妻と娘がおり、家族を守るために日夜仕事に明け暮れる生活を送っている。
・イヴリン・ロビン(吹替:園崎未恵)
クリストファーの妻。
ロンドンで彼と出会い、結婚し娘マデリンを授かる。
家族のためと言って空回りする夫に愛想をつかしつつも、彼が体を壊さないか心配する一面も。
・マデリン・ロビン(吹替:遠藤璃菜)
クリストファーの娘。
父親の言うことに従い勉強を頑張っているが、本心では年相応に遊びたいと思っている。
気丈で賢く、また思いやりのある優しい性格。
100エーカーの森の住人達
・プー(吹替:かぬか光明)
本作のもう1人の主人公。
その姿は、クリストファーが大人になった今も変わらないまま。
相変わらずぼんやりしており、それが大人のクリストファーをイライラさせてしまう。
・ピグレット(吹替:小形満)
子ブタのぬいぐるみの姿をした森の住人。
臆病な性格をしているが、親友のプーはじめ、仲間のためなら勇敢になれる。
好物のどんぐりに目がない。
・ティガー(吹替:玄田哲章)
トラのぬいぐるみの姿をした森の住人。
ばねが入った伸び縮みするしっぽを使ったジャンプが得意。
陽気で好奇心が強く、何にでも首を突っ込むため、トラブルを起こしがち。
・イーヨー(吹替:石塚勇)
ロバのぬいぐるみの姿をした森の住人。
動きが鈍く、何かを悟っているかのようにマイペースでどっしり構えている。
卑屈な性格をしており、悲観的なことを言うことが多い。
・オウル(吹替:上田敏也)
名前の通り、森に住むフクロウ。
100エーカーの森における知恵袋のような存在。
森で一番の長生きだが、間違いやうろ覚えなところがあり、あてにならないこともある。
・ラビット(吹替:龍田直樹)
森に住むウサギ。
畑を手入れするなど真面目で働き者だが、性格は几帳面で頑固。
後述するカンガとはケンカが絶えない。
・カンガ(吹替:片岡富枝)
カンガルーのぬいぐるみの姿をした森の住人。
ルーという子供がおり、しっかり者で面倒見がよい肝っ玉母さん。
ラビットとはケンカが絶えず、ルーのことでのケンカの際は、激怒してものすごい力を見せる。
・ルー(吹替:木村皐誠)
カンガの子で、母親同様ぬいぐるみの姿をしている。
子供らしい無邪気な性格。
迷惑がられてはいるが、ラビットのことは気に入っている。
その他
・ジャイルズ・ウィンズロウ(吹替:坂東尚樹)
クリストファーが働くカバン商社の上司であり、社長を父に持つ支社長。
旅行カバン部門の業績不振の対策として、クリストファーに業務改善策を考えるよう命じる。
期限の短い理不尽な仕事を振る一方、自らはゴルフ三昧のドラ息子。
『プーと大人になった僕』(2018)の吹替声優
本作の吹替声優陣は、過去のアニメ版『くまのプーさん』の声優が担当しています。
プー役及びイーヨー役だけは、今までの吹替声優が亡くなってしまったため、本作から代わりました。
それ以外の全ての役は、今までの吹替声優が声を入れています。
なじみのある声に、思わず懐かしさを覚えるかもしれません。
一方、大人になったクリストファー・ロビンの吹替を担当したのは、俳優の堺雅人。
言わずと知れた実力派俳優である堺。
彼は声の演技も実に上手く、役によくなじんだ演技をしています。
なお、彼は今年2019年に劇場公開されたアニメ映画『プロメア』でも声優を担当しました。
このように、本作は文句なしに実力派揃いの吹替声優陣となっているのです。
【ネタバレあり】ぬいぐるみみたい? 『プーと大人になった僕』(2018)を解説

クリストファー・ロビンとプー達:© 2018 Disney Enterprises Inc. All Rights Reserved.
変わりすぎたクリストファー・ロビン
『プーと大人になった僕』(2018)で最も特徴的なのは、クリストファー・ロビンが大人であること。
大人だというのは、単に成長したという点のみならず、リアリストになっている点です。
久しぶりに会ったプーを見た彼は、はじめは喜ぶ顔を見せます。
しかし、それは一瞬だけで、彼にはプーを相手するだけの余裕がありませんでした。
翌日には役員報告しなければならない仕事、そのせいで上手くいかない家族関係。
今なお昔のように遊んで暮らすプー達の世界に、もはや彼はついていけません。
彼は今やそれだけのものを背負い込んでいたのです。
久しぶりに会ったにもかかわらず、プーに当たり散らすクリストファー。
"現実”である彼が、"ファンタジー”であるプーに取り合わない気持ちは理解できます。
ただ、その姿はなんだか子供に大人げなく怒っているようで、観ていて辛いものがありました。
もともと、プーは森からいなくなった友達を探している真っ最中。
森の中にある扉を開けると、どういうわけか彼の住むロンドンに繋がっていました。
プーの話を聞いたクリストファーは、プーを連れて実家に戻ります。
それから、彼はしぶしぶ森の友達探しを手伝うのです。
かつての友達と出会い、昔を徐々に思い出していくクリストファー。
しかし、無慈悲にも現実は彼を待ってはくれません。
彼は仲間達と再会を果たした後、急いでロンドンに帰ってしまいました。
いろいろあるけれども、今も友達思いだったクリストファー・ロビン。
視聴者はこのときようやく、彼の優しさを感じることができるのです。
そして、クリストファーの姿は、仕事に疲れた現代人に強く刺さるものとなっています。
守るもののために勤勉に働くことは、決して間違った考えではありません。
一方で、結果的に大切なものを顧みなくなっていく人もまた、少なくはないでしょう。
歯車は狂い始め、最終的には身も心も壊れてしまう、悲劇的な結末。
作中のクリストファーは、まさにその一歩手前の状態でした。
そこに現れたプーは、彼を救うための救世主だったのかもしれません。
息苦しい世の中で、少しでも自分らしく生きることの大切さ。
本作は、そのヒントを与えることもテーマとしてあったのではないかと解釈できるのです。
変わらない森の住人達
このように、今までからは想像できないほどに疲弊していたクリストファー。
対して、100エーカーの森の住人達は、子供の頃から何一つ変わっていませんでした。
序盤はクリストファーの苦悩に焦点を当てている本作。
そこを前置きとしてから出てくる懐かしい顔ぶれは、見ている側をホッとさせてくれます。
プーを連れて地元に戻ってきたクリストファーは、森でイーヨーと再会。
けれどもイーヨーは、すっかり現実的でなおかつ疲れ切った彼を友達だと認識しませんでした。
しかもあろうことか、彼を恐怖の存在である"ズオウ”呼ばわりするイーヨー。
両者の間には、あまりにも大きな隔たりが出来上がっていました。
それでも、昔のように振る舞って見せるクリストファー。
少しづつ子供時代を思い出すことで、イーヨーはようやく彼をクリストファーだと認識しました。
それからピグレットやティガー達と合流した彼は、プーにそのことを告げます。
このとき、君は今何をしているんだと聞くプー。
クリストファーが仕事をしていると話すと、プーは一言、
「ぼくは毎日、"何もしない”をしているよ」
と返します。
この言葉はかつて、クリストファーがプーに贈った言葉でした。
子供の頃に交わした約束を、今なお守り続けていたプー。
100エーカーの森は、あの頃のままでした。
親友に贈った言葉が、今になって自分の元へと帰ってきたクリストファー。
せわしなく森を立ち去る彼でしたが、彼の心の中は、少しづつ何かが変わり始めていたのです。
100エーカーの森で過ごした時間は、彼という人間を形成する大きな要因。
彼の芯の部分には、プー達との出会いによって得たことが確かに根付いていました。
ただ、日々の忙しさにまみれて忘れてしまっていただけなのです。
ふと立ち止まり、今までの自分を振り返ること。
本作は、自分の今までが軸となり、これからに繋がっていくことを教えてくるのです。
精巧なVFX技術
ここでは少し技術的な面に触れていきます。
プーをはじめ、本作の登場キャラクターはCGで描かれたものです。
その質感はリアリティ十分で、まるで本物のぬいぐるみと見間違えるかのよう。
昨今の卓越したVFX技術に、思わず感動してしまいました。
実写とCGを織り交ぜた本作は、ある演出効果に成功しています。
それは、"現実”と"ファンタジー”の明確な区別化。
まず、クリストファー・ロビンを実際の俳優が演じることで、彼のリアリストぶりを際立たせます。
そこに対する者として、プー達をCGで動かしているのです。
なおかつ、よりぬいぐるみらしく表現することで、彼らは柔らかさや優しさを帯びます。
まるで、ささくれ立ったクリストファーの心を包み込むかのよう。
さらに、クリストファーは今を生きる人々を象徴する存在として描かれています。
彼の姿が心に突き刺さるのは、このためでしょう。
忙しく生き、自分を見失いかけた全ての人に、知恵と癒しを与えてくれる存在。
くまのプーさんならではの丸みを帯びたフォルムは、彼と観る者の双方に癒しを与えるのです。
作品の意図を狙い通りに表現しきるだけの優れた技術を駆使した、『プーと大人になった僕』(2018)。
本作では、実写とVFXの良さを余すことなく観ることができます。
【ネタバレあり】『プーと大人になった僕』(2018)のエンディング・ラストは?

イヴリンとピグレット、ティガー、イーヨー:© 2018 Disney Enterprises Inc. All Rights Reserved.
"何もしない”をするということ
プーが再三にわたり口にするこのセリフは、『プーと大人になった僕』(2018)におけるキーワードです。
本作のラストは、この言葉の意味を集約した内容となっています。
仕事に戻るため、100エーカーの森を後にするクリストファー。
実は、彼のカバンの中の書類はティガーの手によって入れ替えられていました。
クリストファーが困ってしまうと考えたプー達は、みんなで書類を届けにロンドンに向かいます。
森を抜けようとしたとき、そこに現れたのはクリストファーの娘マデリン。
事情を聞いた彼女は、プー達を連れてロンドン行きの列車に飛び乗ります。
一方、クリストファーは役員会で資料を出そうとするも、カバンに資料はありません。
ジャイルズの問い詰めを受ける彼に追い打ちをかけるように、飛び込んだマデリン失踪の連絡。
知らせを受けた彼は、仕事も放り出して会社を飛び出します。
追いかけてきたイヴリンと合流し、車に乗ってロンドン市内を駆け回るクリストファー。
するといきなり、フロントガラスにティガー達が落ちてきました。
行き先が会社だと分かり戻ると、そこには書類のほとんどを風で飛ばしてしまったマデリンの姿。
仕事も忘れて駆け付けたクリストファーは、その場で娘を抱きしめていました。
>全てを思い出した彼に、迷いはもうありません。
そのとき偶然、彼はマデリンが手に持っていた1枚の書類に目を遣ります。
途端にアイディアがひらめいたクリストファーは、再び改善策を示しに役員たちの元へ。
彼は次の一言とともに、普通の人々が旅行に出かける用のカバン製作を提案します。
「何もしないことは、最高の何かにつながる」
休みをを楽しむという需要を掘り起こす提案に、太鼓判を押す社長。
ジャイルズは逆に休日に仕事もせずゴルフに行っていたことがばれ、激しく非難されました。
その後、クリストファーは妻と娘の3人で、彼の古い友人達に再び会いに行きます。
彼は、大事なことを思い出させてくれたプーに感謝するとともに、いま再びの友情を確認し合いました。
このように結末を迎えた本作は、この後エンドロールへと続きます。
スタッフロールが流れる中、突然映し出されたのは、ビーチで余暇を楽しむ人々の姿。
映っていたのは、クリストファー達や会社の同僚達。
彼らは、あと一歩でクリストファーの手によってクビにさせられるところだった連中でした。
そしてそこには、サングラスをかけてバカンスを満喫するプー達もいました。
“何もしない”を思いきり楽しむ人々。
裏で流れる曲は、タイトルが『Busy Doing Nothing(何もしないは忙しい)』。
本作は、終始"何もしない”ことの大切さを訴えているのです。
ここで言う"何もしない”とは、本当に何もしないことではありません。
やるべきことや、やらなくてはいけないことから、少し目を逸らすことを意味していると考えられます。
仕事から離れて、旅行に行ったり趣味に没頭したりすることもまた、"何もしない”をすることなのです。
誰しもが何かにつきまとわれ、追い回される日々。
しかし、それでは何も生み出せず、先のステージに進めないのです。
行き詰まった時こそ、自分はどうしたいのか、どう在りたいのか問い直すことの重要性。
本作は、そこから見えてくるものの大切さをテーマに込めているのです。
クリストファーにとっての"100エーカーの森"
少年時代、クリストファーはプーに"何もしない”ことの大切さを伝えています。
そして時が経ち、少年が言葉の真意を忘れゆく中、プーは昔のままであり続けていました。
クリストファーにとって、100エーカーの森の住人達は心の拠り所そのもの。
自分を見失った彼が、無意識的に祈った願いが形となったものです。
人間少なからず、今の自分を形作ってきた決定的な何かがあることでしょう。
彼にとってのそれが、100エーカーの森で出会った友達なのです。
意識の有無こそあれ、今まで影響を与え続けている要素が、大切なことでないわけがありません。
今まさにそれを思い出し、新たな一歩を踏み出したクリストファー。
プーと再び友達であることを確認し合った彼は、もう人生の迷子になることはないでしょう。
そして、こうして自覚を得たときから、人生はより面白いものへとなっていくのです。
時代のスピードが速いせいで、つい忘れがちになる"100エーカーの森”。
プー達は、クリストファーだけでなく私達にも気付きの手を差し出してくれているのです。
温かく、優しい気持ちを思い出させてくれる本作。
現代人が忘れがちな大切な感情が、本作にはたくさん詰まっています。
『プーと大人になった僕』(2018)のまとめ

"CHRISTOPHER ROBIN":© 2018 Disney Enterprises Inc. All Rights Reserved.
プー達はいついかなるときも語りかけてくれています。
それは、少しでも楽しく人生を送るためのヒント。
愛らしい見た目の通り、プー達はいつの時代も私たちの味方になってくれるのです。
全ての"クリストファー・ロビン”に観てほしい、『プーと大人になった僕』(2018)。
本作はひたすらに胸を強く打ち、優しさを心の底まで流し込んできます。
プー達の手で心が洗われていく心地良さに、どっぷりと浸かってみてください。
優しさを思い出した時こそ、人は強く、前を向くことができるのです。
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